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第十二話「闇に潜む一族」・1

現在の十二属性戦士は照火、爪牙、細砂、輝光、雷人、葬羅、楓、時音、雫、残雪、菫の十一人。残り一人です。

 十二属性戦士は今の時点で合計十一人。残りは闇属性戦士の一人のみ。その一人を見つけるため、ひとまずメンバーは闇の都へ向かった。

 闇の都には殆ど木々が茂っておらず、どれも枯れていた。そしてその暗雲が広がりどよよんと重たい空気を漂わせ一筋の光も届かぬこの場所には、炎の都が近場にあるせいかコルタルン火山群並の火山地帯とそれに負けず劣らずの量の死烏が飛んでいた。

 葬羅は枯れた植物を悲しそうな顔をしながら進んでいた。植物と対話する能力を持つ彼女にとってその植物の姿はあまりにも辛いものなのだろう。

 そして、ずっと歩きづめだった彼らに幸福をもたらすかのように人が住んでいそうな家を見つけた。

さっそくトントンとドアを叩くが返事がない。誰もいないのだろうか? そう思い、照火がドアを開けた。そこにはテーブルとイスが置いてあり、暖炉に火が灯っている状態だった。それを確認した照火はボソリと言った。


「う~ん、どうやら人はいないみたいだな…」


 その言葉に爪牙はふと疑問を感じたがあまり気にしなかった。

 ひとまず中に入り、暖炉のかがり火で温まることにした。日の届かぬ闇の都は冬でもないのにすごく風が冷たいのだ。火山地帯があるとしてもその火山は大抵が活動を休止している。

 その時、椅子に座っている老人が目に入った時音が訊いた。


「あの~すいません…」


「…」


――返事がない!? まさか死んでる!?



 時音は心の中でショックを受け固まってしまった。すると、今度は細砂が時音にお構いなしに話そうとしていた話の続きを話した。


「……私達十二属性戦士を探してるんですけど…」


 その言葉に反応したのか、細く閉ざされた老人の目がカッと見開かれた。


「そなた……今、何と言った!?」


 老人がオロオロした様子で訊いた。


「えっ、十二属性戦士ですけど…」


 細砂は何かマズいことでも言ったのかと急に小さな声になって言った。すると、納得したかのように何度も頷きながら老人が椅子から立ち上がった。


「そうか…ついにこの日が来たか…。待っていたぞ、そなた達がここに来るその時を…」


 老人が言った。その話を聴いて疑問を抱いた楓が彼に訊いた。


「あなたは一体誰なんですか?」


 単刀直入の質問に微笑みながら老人は答えた。


「わしの名前は『(あらし) 爪夜(そうや)』…。嵐一族の四代目後継者じゃ!」


「な、何だって!?」


「どうかしたの?」


 驚きの声をあげる雷人に雫がその驚き様を不思議に思い尋ねる。すると、信じられないという風に黒縁メガネを上にあげながら雷人のいつもの説明が始まった。


「お前知らないのか? 嵐一族と言えば古より昔から伝わる四帝族の一つだぞ? 嵐一族は代々、家系が一族を養い子を育てるというそれは有名な一族なんだぞ? かつて初代は仲間のために全力を尽くし、その配下である側近の危機が訪れれば仲間と共に今は亡き小七カ国の王族の一人に果敢に挑んだんだ」


 その説明を聞いてふと思った時音が質問する。


「そういえば、雷人くん。前々から聞こうと思ってたのだけれど、どうして私達は記憶を無くしているのに雷人くんはそんな前の出来事をそれも私達が生まれる前の事を知っているの?」


「うむ、いい質問だ。実はな、私も自分が覚えている訳ではない。このパソコンのファイルの中を漁っていたら見つけたのだ。私が昔書いたと思われるレポートをな」


「レポート?」


 他のメンバーも首を傾げてそのレポートを見つめる。そこには確かに呪文でも陳列しているのかと思うほどびっしりと一言一句はっきりと言葉が並べられていた。


「このパソコンは雷人の?」


「……おそらくな」


「自信ないの?」


 楓が呆れるように言う。それが気に食わなかったのか、雷人はムッとして腕組をして言った。


「私とて記憶を無くしているのだから無理はない。それに、このパソコンは記憶を無くして目覚めた時には既に片手に持っていたのだ。だから私のものかどうかははっきりとは分からない。だが、これからは何か懐かしいものを感じる。それが今もなおこのパソコンを私が使っている理由でもある」


 その言葉には少しばかり説得力があった。懐かしい何か……それは楓にも感じられる時が多々あった。特にそれは雫や時音と一緒にいる時に起きていた。記憶が失われているのがとても恨めしく歯がゆかった。

 雷人はコホンと咳払いを一つして続きを説明する。


「お前は同じく四帝族の一つである霧霊霜一族の末裔なんだから知っているだろう? 何でも噂によれば、私たちが探している闇属性戦士も嵐一族の末裔という話だ」


「でも僕、霧霊霜一族とか言われてもずっと一人だし……育ててくれたのはおじいちゃん一人だけだし」


「おや? そなたはヘルヘイムで育ったのかの? じゃったら霧霊霜一族に会えぬのも無理ないわぃ。何せ、霧霊霜一族並びにわしら嵐一族は下の大陸にいるんじゃからのぅ」


「え? 下?」


 先輩の十二属性戦士である爪夜の言葉に興味深い話をされる伝説の戦士。説明を聴き終えた後、彼らは言葉を失った。この空中都市ヘルヘイムの下には今以上の巨大な大陸が広がり、ここにいる人口の倍はいるということ。そして、古の一族と言われる四帝族の内の二つ、霧霊霜一族と嵐一族が未だ健在……鎧一族が滅びかけ、鳳凰一族は滅んでしまったということ。他にも様々な情報をもらった。


「ふむふむ、霧霊霜一族……噂やこのレポートを読む限りは知っていたが、まさか本当に美少女揃いで一族全員が女の一族だったとは。しかも、肌は水のように潤い色も白く、清らかな瞳となびく青髪が魅力的とはそれは是非ともあってみたいものだ」


「今目の前に実物がいるじゃない」


 脳内で妄想の世界を広げる雷人をジト目で睨みつけながら雫をズズズッと前に出す楓。それに対して雫が「僕は物じゃないよ!」と涙目で訴えた。すると、視線を下に落とした雷人がふと雫を見てあごに手をやりメガネを光らせる。そしてニヤッ!と笑ったかと思うと、何やら荷物の中からすごく怪しげな液体を取り出した。


「パンパカパーン、私の発明品の久しぶりの登場!発明品No.1183『ヘアノバーシ・リキッド』を使おう!」


「ち、ちょっとそれ何するつもり? へ、ヘアーってまさか!?」


 雫が逃げようと思った時には時既に遅しだった。なぜか楓が雷人の不可解な謎行動に手をかしたのだ。


「か、楓ッ!?」


「面白そうだから♪」


 そう笑顔で言う楓の笑みには一つの曇りもなかった。結果、雫は雷人の発明品の餌食となった。


ボワンッ!!



「ゴホゴホッ! ちょっと、雷人! 何よ今の爆発! 雫に何したの? さっきの液体、雫の髪の毛にかけてたみたいだけど……」


「いやなに、霧霊霜一族は美少女揃いの一族。そしてその中で唯一雫は男。何でも霧霊霜一族は男の子供は生まれないと聞く。それが何故なのか理由は分からないが、雫がここにいるということは何かしらそれには秘密があるのだろう。それにも興味はあるが……まずはその外見が如何程の物なのかを確かめたくてな?」


 そう言って再び例の不敵な笑みを浮かべる雷人。


「でも、それでさっきの液体は何なの?」


「まぁ、見ていろ」


 時音の言葉に腕組をして雫の変化を見守る雷人。他のメンバーも少し興味ありげに雫の方に視線を向ける。煙が晴れるとそこには綺麗な青い髪の毛を腰の辺りまで伸ばした雫?がいた。ケホケホと咳き込みながら目尻に涙を貯めるその立ち姿は服装は男といえども顔だけ見るとまさに女の子そのものだった。それを見るや否や男性陣は顔を真っ赤に染め、女性陣も思わず目を逸らしてしまった。

挿絵(By みてみん)


「ち、ちょっと皆? なんでこっち見てくれないの? ねぇってば!!」


 涙目の雫は猫撫で声でそう言う。そして彼は自分をこんな姿にした雷人に抗議を申し立てた。


「もう、雷人のせいだよ? 責任とってよ!」


「うおぅ、責任とはまた意味深な……。しかし、なるほどな。霧霊霜一族が美少女揃いの一族だというのも頷ける。お前の顔を見ればそれは一目瞭然だ。そういえば、以前お前は髪の毛を伸ばしていたのに切ったと言っていたな。夢鏡王国の姫君に……。なぜ切った?この方が女らしくて似合ってるぞ?」


 もったいないと言う風な残念な表情で言う雷人に雫はたまらず叫ぶ。


「僕は男だよ! こう髪の毛が長いと今みたいに女の子に見られてしまうから嫌で髪の毛を切ったんだ! それなのに、またこんなに伸ばして……」


 長くなった青い髪の毛を弄りながら言う雫に、女性陣が取り囲んで揃って言った。


『本当に雫なの!?』


 全員にそう言われて萎縮する雫は恐る恐る「うん」と気の置けない返事をした。


「でも、これでよけいに楓ちゃんに似てきたね」


 細砂の言葉に楓が腕組をして文句を言う。


「そ、そうかしら? 私こんな目してないわよ?」


「そうね。どちらかと言うと、もう少し釣り目かしら?」


「ちょっと菫!」


 真剣な表情で雫を見る菫に、何だか自分を舐めまわすように見られているように感じたのか顔を赤くする楓。すると、それに便乗するかのように時音が人差し指を立てて言った。


「ねぇ、雫くん。お願いがあるんだけど、楓みたいに少し釣り目してくれないかな?」


「え? ……う~ん、出来るかな?」


 自信なさげな表情を浮かべる雫だが、時音に言われた通りやってみる。すると、それを見たメンバー全員が驚愕の表情を浮かべた。瓜二つだった。隣に並ばせると髪の毛の色まで同じだったら分からないくらい一緒だった。


「不気味なほど似てますね」


 葬羅の言葉に雫が少し傷つく。


「うっ、僕は別にお化けじゃないんだけど」


「ちょっとあんたいつまで釣り目やってるのよ! やめてよ、私のマネするの!!」


 そう言って雫をポカポカ殴った楓は拗ねるようにそっぽを向いた。


「何さ、僕は協力してあげただけなのに……それで雷人、これちゃんと戻るの?」


「え、戻すのか? もういいだろ、それで」


 雷人がめんどくさそうにそう言い放つ。その言葉に雫はさらにショックを受けた。しかし、男性陣も雷人のその意見には賛成だった。それほどまでに雫の今の姿は魅力的だったのだ。機会があれば、霧霊霜一族の人間に会ってみたいとも思った。また、その上で以前照火が言っていた様に雫がある意味で羨ましかった。記憶がないとはいえ、現在の霧霊霜一族の後継者は雫なのだから一族の里に帰れば彼は俗に言うハーレム状態なのだから。




 結局、その後、雫の髪の毛はあまりにも楓の姿によく似ているからと当人に鎌鼬で刈り取られてしまった。男性陣は多大なショックを受けていたが雫は感謝していた。楓はというと、自分で切ったくせに少し悲しそうな表情だった。


「……せっかく。ゴホン、えー話を戻そう。それで、嵐一族の末裔もこの場所にいるという話で」


 彼のその説明に爪夜は言った。


「その方の言う通りじゃ…。わしも昔は属性戦士をやっとった。もちろん、夢鏡王国並びにかつての帝国『リーヒュベスト』の為にな。今はそなた達がわしらの代わりに戦う時なのじゃろ? じゃからこそ、先輩としてアドバイスをさせておくれ! しっかり頑張るのじゃぞ? じゃが、そなた達は記憶を失っておるらしいの。暗夜もそうじゃった…」


「暗夜?」


 爪牙がその名前について訊いた。


「わしの孫じゃ…」


「ってことはお爺さんのお孫さんが十二属性戦士なんですか?」


 楓の表情がパァッと明るくなった。無理もない。何せ探す手間が省けたからだ。しかし、そうもうまくは行かないようだ。


「そうじゃ……わしの子供のように立派に育っているといいんじゃが…」


「それって今はいないってことですか?」


 楓が言う前に何故か葬羅が爪夜に訊いた。


「うむ…、今修行とやらでどこかに行っておる。じゃが一つだけ心当たりが…」


「心当たり?」


「この近くにある闇の塔…。そこで近頃爆発音が聞こえるのじゃ…。もしやと思ったのじゃが最近足が悪くての…。もうわしも歳じゃな…。まぁ十二属性戦士をやっとったのも過去の話……無理もないのぅ」


 爪夜は急にネガティブ思考になり始めた。


「そう思いつめないでください…。それに、孫がいるってことはお子さんもいるんですよね?」


 時音が両手を合わせ爪夜を励まそうとした。すると彼はさらに暗い顔になって彼女に言った。


「すまんのぅ…。わしの息子であり、闇夜の父親である刃槍は、暗夜がまだ子供の頃に緊急招集で『冥霊族大戦』に出て亡くなってしまったんじゃ…」


「あっ…ごめんなさい」


「いいんじゃよ…」


 その一言で一気に場は暗い雰囲気になってしまった。その空気を一瞬にして明るく変えたのがどうでもいいような菫の一言だった。


「でも、まぁあれなんじゃない? その人も、爪夜さんや自分の子供の暗夜君とか夢鏡国のために戦ったんだと考えれば、それはすごいことじゃない!!」


 そんな下手なフォローを受け、爪夜は何も言われないよりかは嬉しいと思ったのか少しだけ微笑んだ。時音は彼のその表情を見て先程まで抱いていた罪悪感が拭い去られほっとため息をついた。

 しばらくして、メンバーは爪夜の話を聴いて暗夜を探しに死の森を抜けた先にあるという闇の塔へと向かった。しかし、昔から不吉な噂の絶えない場所だったため、一瞬メンバーは躊躇(ためら)った。だが、後一歩で瑠璃達を助けることが出来る……そう思うと、皆は不思議と勇気が湧きあがってきた。すると、気分が悪いのか輝光が頬を赤らめ体を火照らせながら雷人に抱きついた。


「なんだ――って、あっつ!! 熱か? しかし、どうして急に…」


「ん? そなたよく見たら光の都の人間ではないかぃ…。それはさぞかし辛かったじゃろう」


「爺さん! どういうことだ?」


 雷人がやけに心配そうに爪夜に訊いた。彼のその真剣な様子に、彼は少し微笑みながら雷人に言った。


「ここは闇の都……光の都の人間にはあまりにも辛い場所なんじゃよ?」


「そうだったのか、知らなかった。この私としたことが……すまない、輝光」


 辛そうにしている輝光の顔を見て雷人が申し訳なさそうに言った。すると、彼の声が聞こえたのか、輝光はゆっくりとまぶたを開け一瞬天井を見つめると、近くにいた雷人の方を向き必死に笑みを浮かべて言った。


「ううん…心配しないで、お兄ちゃん…。ごめんね足引っ張っちゃって…」


「そんなことはない…。気にするな! お前はそこでゆっくり休んでいろ! いいな?」


「うん…」


 雷人に言われ、輝光は今の状態で精一杯元気よく頷くと笑顔で彼を見送った。


「安心せい…、この子はわしが必ず守ってやる…さぁ行ってくるのじゃ!」


「ああ…」


 その場に立ちあがった雷人は決意の意思を胸に家を出て行った。すると、メンバーが近くで彼を待っているのか待機していた。


「お前ら…」


「随分と妹思いなのね?」


「私、少し見直しました…雷人さんのこと」


「今までお前らはどんな風に私を見ていたんだ?」


 楓、葬羅の二人に言われた雷人は少しイライラしながらも、こうして暖かく迎え入れてくれる仲間に心の中で嬉しく思っていた。

 こうして、十二属性戦士はようやく闇の塔へと向かった。


――▽▲▽――


 十二属性戦士は爪夜にもらった地図通りに道を進んでいき、闇の塔が見える場所にたどりついた。だが、実際に闇の塔を見てみた彼らはその場所をすごく不気味な場所だと感じた。

 それほどまでに異様な雰囲気を(かも)しだしていたのだ。


「今からあそこに行くの?」


 雫が少しオロオロしながら訊いた。すると、残雪が彼の背中をポンと叩いた。


「そんなに怯えなくても大丈夫ッスよ! 俺達がついてるんスし…」


 残雪の言葉に何故か多少イラッときた雫だったが表向きには彼は素直に頷いた。そして、雷人が光蟲の懐中電灯を手に持ち、先頭に立って歩き始めた。

 一番後ろを照火にし、真ん中付近を楓や雫達にした。案外怖がりなのか、菫や葬羅がキョロキョロと、周囲に気がまいってしまいそうなくらい警戒していた。


「二人とも怖いの?」


 雫にからかわれた二人はお前にだけは言われたくないと言っためつきで彼をキッと睨みつけた。その視線に少し身の危険を感じたのか、雫は少し後ろに下がった。すると、誤って楓の右足を雫のかかとが踏みつけた。


「いたっ! ちょっと、ちゃんと前見て歩きなさい、このバカっ!!」


 楓に大声を出して耳元で叫ばれたため、雫は慌てて耳を塞いだ。


「ふふっ、雫ったら怒られてやんの!!」


「なっ!」


「ちょっと、人の話聞いてるの?」


「ああぁああ、聴いてる聴いてる聴いてるよ!!」


 口元に手を当てて笑う菫に文句を言ってやろうかと思った雫だったが、即座に楓に邪魔をされその上ジト目で見られたため思わず言い訳がましい言葉を述べる。どうやら雫は楓には頭が上がらないようだ。

 その時、それを見ていた爪牙がやれやれと言った風に言った。


「ったく…雫はダメだな~。んなんだから楓達にナメられんだよ!!」


「私はただ雫が私の足を踏んだから注意をしただけで、別にナメてるわけじゃ…」


 楓は途中で口を閉じた。何か後ろから不吉なオーラを感じ取ったからだ。サッと後ろを振り返るとそこには謎の光が一つ灯っていた。さらに、その灯は蒼くメラメラと淡い光を出しながら燃えていた。


「あっ…な……」


 楓は声を出せずただ後ろに後ずさった。すると、先頭を歩いていた雷人に背中が当たり、二人はその場から突然消えた。


「おいッ!!」


 その一部始終を見ていた照火が慌ててその場に急行し足元を照らしだしてみた。すると、そこには大きな穴がポッカリ開いていて、そのず~っと下にポツンと明かりが見えた。そう、雷人の持っている光蟲懐中電灯の明かりだった。


「一応…人数を確認しとくか…。え~っと、輝光は爪夜の爺さんのところにいるから現在十人で、楓と雷人がいなくて八人か…」


 人数確認を終え、今名前を口にした二人以外にどこかに消えてしまった行方不明者などがいないことを確かめ終えると、穴に落ちないようにしながらその穴を覗き込んだ。すると、穴の下から雷人と楓の声が聞こえてきた。


「お~い、照火! 何でもいいから引っ張り上げられる丈夫な縄を垂らしてくれ! ……あっ、そうだ! 楓が掴まっても耐えられる様な縄にしてくれよ?」


 その言葉にムカッときた楓が文句を言った。


「ちょっと、それどういう意味よ!?」


 楓が雷人の顔を指さして文句を言っている姿が上から僅かに見て取れる。そして、言い争いも終わったところでやっと二人が穴から出てきた。まだ、楓は雷人に対して怒っているようだ。


――▽▲▽――


 その頃、闇の塔の中では一人の少年が何かをブツブツ呟いていた。短髪の黒髪に赤い瞳、少しいかり気味の肩に、程よい筋肉のついたその少年はやや焼けた肌をしている。その少年は、外からのガヤガヤとした声に集中力を削がれ怒り心頭のご様子だった。


「まったく外が何だか騒がしいなぁ。まさか人か? ――なわけないか。こんなところに来るなんて相当な物好きくらいだぜ。それにしても、俺がこんな力を持っている理由が分かるかもしれないと思ってここに来たが……。ったく、とんだ骨折り損のくたびれ儲けだぜ! それにこの文字…。こんなことだったら、ちゃんとロムレス学園通って古代文字を習っとけばよかったな……。つってもその学園も廃校ってか壊されたんだっけか? いっけね、じじいの言葉ちゃんと聞いてなかったからな」


 外見では十二歳くらいに見えるその少年は少し口調を荒くしてそんなことを一人で呟きながら壁の文字に指を当てて目を細めた。


――▽▲▽――


 一方、十二属性戦士もようやく闇の塔の前方にたどりつき、そのままその場を正面突破しようと武器を構えた。しかし、ギリギリのところでそれに気づいた誰かが阻止した。


「何なんだ、てめぇらは! …まさか、さっきからうるさかったのは、てめぇらのせいか!!」


 黒髪の少年の一方的な勘違いによって、一同は巻き添えを食らった。


「ちょっと待て! 俺らは人探しをしてて…」


 爪牙が必死に止めたが無駄だった。少年は武器の拳銃を取り出し彼らに襲い掛かった。


「くそ、こいつ……話しても通じる相手じゃなさそうだぞ!!」


 雷人が慌てた様子で少年の銃弾攻撃をサッと躱す。それからしばらくの間、死闘が続いた。

 やっと終わったのが死闘が始まってから一時間後くらいだった。両方とも疲労によるリタイアをしてしまったのだ。

 その時、楓が少年に雫に頼んでもらった天然水を手渡した。


「なっ……てめぇ、何のつもりだ!?」


 少年の警戒心をかいくぐるように楓はニッコリ微笑んだ。その笑顔が少年の気持ちを怒りから疑問に変えた。


「あなた、『(あらし) 暗夜(あんや)』でしょ?」


 その言葉を聞いて驚いたような表情で少年が訊いた。


「何で俺の名前を知ってるんだ?」


 その質問に楓が説明した。


「――そうか、じじいが……。ってことはてめぇらは俺を探しに来てたってことか…。そいつはすまなかったな。実はこっちも困った状態でな…」


 彼のその困った顔を見て楓が心配そうな顔をして訊いてきた。


「良かったら私達に話してみて?」


 楓に聞かれ一瞬閉口するが、何を思ったのか暗夜は話し出した。

 話によると、ここ闇の塔には幾つかの秘密が隠されているらしく、噂によれば塔の下には秘宝が眠っているのだとか。しかし、別に秘宝に興味があるわけではないらしく、彼が視点を置いているのは塔の中の壁に記された古代文字についてだそうだ。その古代文字を読めば何かが分かりそうな気がする……闇夜はそう言ってきた。

 その話を聴き終えて楓は何とかしようと思い、他のメンバーに相談した。そして、ある条件を闇夜に提案した。そう、それは暗夜の望みを叶える代わりに十二属性戦士の仲間に入るというものだった。闇夜が聞くまでもなく十二属性戦士だということは既に彼の祖父であり自分たちの先々代の四代目十二属性戦士である嵐爪夜から聞いている。

 暗夜は自分の望みを早く叶えてもらいたいという欲望に駆られ、後先考えずにさっさとOKを出した。

一同にお詫びも兼ねて暗夜の自己紹介を終えたところで、細砂がさっそく古代文字の翻訳に取り掛かった。トレジャーハンターを目指す彼女にとって翻訳などお手の物…。本来ならすごく作業に時間がかかるものなのだが、それを彼女はほんの三十分程度で終わらせた。あっという間に文字の分析も終わり後は言葉の意味を理解するのみだった。それには雷人も協力して、ついに闇の塔に書かれてある文字の言葉の意味を全て理解できた。そう、闇の塔に刻まれた言葉は十二属性戦士の十二枚の石板の場所を示す物でもあったのだ。それによると、場所はここ闇の都にある『霧の城』だということが発覚した。さっそく、一同はその石板のある場所、『霧の城』へと向かった。


――▽▲▽――


 闇の塔を出発して約一時間が経過。だが、いくら探してもそんな城はまったく見えない。しかも、闇の都(ここ)出身である嵐一族の暗夜でさえ分からないのだ。しかし、こんなことで諦める十二属性戦士ではない。彼らは霧の城という場所を(しらみ)潰しに探し、ついに城らしき場所を突き止めた。だが、そこには何もなく存在しないというよりかは見えないという感じだった。確かに建物らしき雰囲気は感じるのだ。が、それが視認できずにいた。


「本当にここ?」


 菫が半信半疑で訊いた。


「たぶん…」


 返事をした雫も曖昧だった。


「とにかく中に入ってみましょう?」


 楓が皆をまとめ入口に導いた。しかし、城の姿は全く見えない。見えるのはモヤッとした霧だけだった。


「霧が…邪魔だな」


 暗夜がちょっと不機嫌そうに唇を突き上げて言った。


「ちょっと待って!」


 楓はいい案を思いつき武器を取り出すと、巨大な風を巻き起こした。その風により霧が払われ、ついに霧の城の全貌が彼らの目の前にその姿を現した。


「すごい! まさしく“霧の城”ですね…。まさか、あの霧が幻覚で私たちの目を誤魔化していたなんて…ビックリです!」


 説明口調で葬羅が感心しながら前へ歩き出した。だが、少し理解していない爪牙や細砂にはあまり意味が解らなかった。

 爪牙に頼んで重たい城の扉を開けてもらった十二属性戦士は中へと入って行った。


「すごく重いな…この扉」


 力では誰にも負けない爪牙が“重い”という言葉を口にする。それは今まででないことだった。そこまでこの扉は重いということが彼らには理解できた。

 中は外見と違って趣のある場所だった。赤いカーペットが敷かれ、それが永遠と奥の方まで続いている。しかし、誰も住んでいないからであろうが灯りが灯っていないため、一番奥までは目視出来なかった。さらに壁には燭台がいくつも設置され、使用済みのロウソクが溶けて固まった状態で放置されていた。照火はそれの先端の火をつける部分を親指と人差し指で挟み込むようにして触れた。


――冷たい…。おそらく、ここには随分前から入っていないな。



 と、照火は心の中で思った。

 また、壁には何の絵かは分からないが、いろんな物が描かれてある肖像画が飾ってあった。風景画もあれば、人物画もあり、それがただならぬ風情を醸しだしていた。すると、彼らはふと上を見上げた。上には天井から吊り下げられた一見豪華そうにみえるシャンデリアがあった。しかし、それはすっかりホコリを被り、以前の綺麗な輝きを失いくすんでいた。

 しかも、よく見るとそのシャンデリアからは無数の蜘蛛の巣が張り巡らされ、古めかしさを異常に引き立てていた。

 十二属性戦士は二階へと続く階段を上がり先へと進んだ。部屋の一つ一つの扉は木で出来ており、どれにも鍵が取り付けられていた。試しに開けようと試みたが、どの扉も鍵がかかっているため開くことはなかった。一瞬、蹴破ろうという気持ちが爪牙に芽生えたが、時間がないという気持ちも芽生え、それが蹴破ろうとしていた爪牙の行動を制止した。そして彼らは一番奥の少し大きい扉を開けた。偶然にもその扉には鍵はついているものの、鍵がかかっておらず、彼らはいちいち後ろへ後戻りする手間が省け少し嬉しかった。




 しばらくして、楓が彼らに言った。


「城自体に霧の幻覚が施されてたんだから、もしかしたら他にも仕掛けや罠があるかもしれない…。だから皆、重々気をつけてね?」


 そう言って、彼らに忠告した彼女は、側にあった程よい長さのロウソクを手に入れようと燭台ごと取り外した。

というわけで、最後の闇属性戦士を見つけた十二属性戦士。最後の一人は、雫同様古の四帝族の一人である嵐一族の末裔の嵐闇夜です。さらに、記憶を失くした十二属性戦士に心強い安心感を与えることとなる先輩の四代目十二属性戦士の嵐爪夜。彼により、様々な情報を得た彼らは、自分達の今いるこの場所の下の世界にヘルヘイムの人口のその倍はあるということを聞くわけです。

まぁ、伏線みたいな感じですが、四族は現在、嵐一族と霧霊霜一族のみ健在で、鎧一族は滅びかけ、鳳凰一族は壊滅して一族の人間がどうなったのかは不明です。

ちなみに、設定及び登場人物などはまとめてこの話が完結してから載せるつもりですので、今は混乱するかもしれませんがご了承ください。

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