Mary Christmas
キッチンの上には測り終わった材料、ふるいにかけた薄力粉、バターとサラダ油と牛乳を合わせてレンジで溶かしたもの、焼き型に紙を敷いた物。
その材料の横で私は赤いチェックのエプロンを着て、ステンレスボウルに入れた4個の卵を湯煎にかけながらホイッパーで混ぜて、人肌程度にしてる。
人肌になったら湯煎からはずして、測っておいた120gのグラニュー糖を入れて底に残らないようにハンドミキサーは使わないでホイッパーで完全に溶かす。
グラニュー糖が溶けたら、ハンドミキサーを強にして5分くらいけかけて、白っぽくなって少し重たくなったら弱にしてまた5分。いいかんじになったら、ホイッパーに切り替えて、ボウル全体を1分くらい混ぜて、泡を均一にする。
泡だてが終わったら後から入れる材料が混ざりやすいように水を15gいれて、ふるいにかけておいた薄力粉120gをさらにふるいにかけながら数回にわけながらいれて、ゴムべらでボールを回転させながら素早く丁寧に、底からすくいあげるようにして、混ぜ残りがないようにしっかりまぜる。
溶かしておいたバターに生地を少し入れて合わせて、ボールに戻して手早く混ぜる。
出来上がった生地を型にいれて、1,2回型を落として気泡を抜いて170度のオーブンで25分くらい焼いて、生地が膨らんで少ししぼんでいってそこからしぼまなくなったら出来上がり。
オーブンからだした型をすぐに落として蒸気を抜いて、焼き縮みを防ぐ。
型をひっくり返して濡れ付近をかぶせて冷ましているうちに、クリームを作る。
生クリームにジャムをいれてホイッパーで混ぜて、手早くホイップする。
冷蔵庫から買っておいたフルーツを出して皮をむいて半月型に切る。
苺は先端の3分の1を切って斜めに添えて、冷蔵庫からカスタードと2種類混ぜ合わせた生クリームを混ぜたものをだして、それを絞り袋にいれて流し込む。この状態の苺を10個作る。
ホワイトチョコペンを切れてる部分に塗る。クリームが前に来るようにして前髪部分を描いて苺の先端部分にボンボンをかいて、ふちも書く。あごひげとはなひげを描いてぼたんもかく。最後にスイートチョコペンで眼を描いて、サンタ完成。
「あまぁい」
このあと使う予定もないし、チョコペンのチョコを少し舐めた。あとサンタ用に買っておいた苺と、絞り袋にすこし残ってたクリームも。
「~♪」
スポンジを型からはずして3段にカットして、ケーキターンテーブルに台紙おいてその上に乗せて、一番下の生地にホイップしておいたクリームをヘラで均一に塗って、切っておいたフルーツを置いていく……つまみ食いはしかたない事。
その工程を2回繰り返して、クリームとフルーツを挟んだ生地の完成。パレットナイフでクリームを生地に乗せて、均一にまわしながら塗って行く……意外と難しい。
綺麗に仕上がったところで、サンタとは別の絞り袋に花口の金口をつけてケーキに塗ったあまりのクリームをいれて、等間隔で絞り出していく。
「~~っと」
途中で形が崩れそうになったけど、なんとか一周。
等間隔で絞ったクリームの間にサンタを配置して、ケーキ中央に縦に切った苺を花のようにおいて出来上がり。
「できたぁー」
出来上がったケーキをターンテーブルからどかして、箱にいれて冷蔵庫にいれる。残るは後片付け。
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ピンポーン。
来た。来た来た来た来たっ!
「かなとーっ」
「うわぁっと」
玄関を開けて飛びついた先には、幼馴染の黒谷奏都。奏都の手には柄に入った細長い袋。
「遥佳、なんかすんごい甘い匂いする」
「んー?」
奏都の方が背が高いから、首に手を回しても私は奏都を見上げる形になる。
「秘密~」
奏都の手を引いてリビングに行くと、私はすぐに準備したものを出した。
「すっげ……これ全部遥佳が作ったのか?」
「もちろん」
ダイニングテーブルの上には、ターキーかわりのKFCとパイ包み、コーンスープにマッシュポテト。
食器棚からシャンパングラスをだして奏都と私の席において、座る。
「Mary Christmas!」
ポンっとシャンパンの栓が抜ける音と共に、いい匂いがする。
コポコポと奏都はグラスに注いで、注ぎ終わったらわきにボトルを置いた。
「KFCっていつ買ってきた?」
「んーとね、これつくった後」
取り皿にKFCのチキンを取りながら答える。クリスマスSパックだっけ?
「安心のKFCだな。うめぇ」
「もう、そればっか食べないでよ? 手作りもあるんだから」
KFCには悪いけど、こればっかりはゆずれない。
少し睨みながらいうと、奏都はパイ包みを皿にとって食べ始めた。
「相変わらず料理うめぇな。すんげぇうめえ」
パリパリと、音を立てながらパイ包みを食べてる。
「当然。あたりまえでしょ?」
KFCそっちのけでパイ包みを食べてる奏都を見ながら、私もパイ包みを食べる。
「なあ」
「ん?」
「マッシュポテト多くね?」
「奏都好きでしょ? マッシュポテト」
まあ、多少作り過ぎたかもしれないけど。
「うん、うめぇ」
これも好評。みたか、KFC。
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「どーん」
料理を食べ終わって、ゆっくりしている頃。私は冷蔵庫から作っておいたケーキを出した。
「どーんって、甘い匂いがしたのってこれ?」
「せいかーい」
包丁で切り分けて皿に乗せて出す。断面からはフルーツが覗いてる。
「シャンパンの残りもあるし、食べよう」
グラスにシャンパンの残りを注いでケーキにフォークを突き立てる。
「んふふ~あまぁい」
口いっぱいに広がるケーキの甘さと、フルーツの甘酸っぱさ。
「自分で作ったんだろ?」
「甘いからいいのー」
奏都もそういいながら頬をゆるめながら食べてる。
「あ、そうだ奏都」
「んー?」
「んとね、私と付き合ってください」
言えた。
「わぃあ?」
「なんて言ったの?」
わぃあって聞こえたけど何語?
「あー、遥佳?」
「うん、付き合って?」
「まじで?
「うん。まじ」
フォークを口にくわえたままこっちをみてる。
「奏都?」
「~まじか」
「……」
「人が言おうと思ってたことなんで先に言うかなぁ」
「へ?」
先にいう?
「奏都?」
「はるかっ!」
「はいっ」
「俺と付き合って」
「はいっ……って」
え? これって結局両想いだったの?
「よし」
「かなと~?」
「言ったもん勝ちなんだよ、こういうの」
なんか勝ち誇った顔でケーキ食べだした。
「幼馴染だから、断られるかと思ってた」
「それは俺の方だっての」
奏都がフォークを向けながら説教くさく言いだした。
「そもそもさ、なんで俺が言おうと思ってたことをさらっというよ」
「さらっとじゃないわよ」
これでも結構なやんだんだから。
「奏都、口にクリームついてる」
「ん、どこ」
「こ・こ」
少し身を乗り出して、奏都の口元を舐める。うん、あまい。
「な、なにしてんだよ」
「何ってクリームとったの」
……。
「んふ」
うん、甘い。
「おま、何して……」
「何ってキス」
「キスって……」
「ねぇ、奏都」
すこーし、目もとが細くなるのを自覚しながら。
「浮気、したらわかってる?」
「わ、わかってる……」
「よろしい」
聖夜は私と彼の想いをこうも簡単に繋げてしまった。けれど一度繋がってしまったものはそう簡単には壊れない。
「奏都、大好き!」
「ああ、俺も」
Mary Christmas!
とはいってももう過ぎてるんですけど。
それはそうとケーキ作ってるところのメニューはやろうと思えば作れる使用なので試行錯誤すればいけます。
甘いものシリーズで連載とかもよさそうですね。