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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 ドワーフ地下帝国

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052 開戦

 翌朝、水の聖女とドワーフたちに見送られ、出発したマジカルナックルたちは、警戒しつつ行動を進んでいた。


 昨日までと違い、遭遇する可能性が高い。というより時間の問題だ。


 目的地まで遭遇なしとはいかないだろう。


 音を消す魔法で鎧の音を消すことはできるが、長時間維持しなければならないので選択肢から外した。

 そうなると隠密性は全くない。

 そして入り組んだ坑道なので後ろからの襲撃もありうる。



 緊張感と共に進んでいると、突然、前方を照らす聖なる光が消えた。


「遭遇じゃ!」


 先頭の鉄の髭が鋭く叫ぶ。


「「「「聖なる光よ」」」」


 聖女四人が同時に聖なる光の加護を使い直す。


 聖なる光が消えるというのは、強力なアンデッドがいる証拠だ、と出発前に確認している。


 闇の魔法と同様に、聖なる光と打ち消し合う相反する力、アンデッドが生み出す瘴気。

 高位のアンデッドの周辺にまとわりつくように、周囲の空間を侵食してアンデッドを強化し、生命を持つ者の心身を蝕む負の魔力の一種らしい。

 長く居座っているほどその影響は広がるが、聖水や聖なる光などと相殺して影響を失う。


 明かりとして使っている聖なる光が消えることで、敵との遭遇がお互いにわかり、続いて聖なる光を前方に投入することで戦域を有利にする。


 そして。


 マジカルナックルの横を、マジカルナックルが駆け抜けて聖なる光の中に飛び込んで行く。わずかに遅れて追随するマジカルナックル。


 壁際に寄る鉄の髭の横を抜け、先行するマジカルナックルが、横合いから殴りつけられる。


「金属ゴーレムか」


 鈍く光る銀色の腕が、壁の陰から飛び出て、マジカルナックルの姿が溶けるように消えた。

 エルエルヴィによる幻術だ。先行した幻影マジカルナックルが攻撃を受けて消えたのである。


「マジカル・奪取」


 幻影マジカルナックルが消えゆく中、マジカルナックルは幻影を攻撃した腕を取り、魔法を使う。


 それは魔力回復ポーションの元となる薬草を繰り返し育てて覚えた新しい魔法。


 金属の腕を抱きしめるようにして放った魔法により、腕がポキリと、付け根から崩れるように外れて落ちる。


 そうしている間に後続の仲間たちが前に出る。


 戦場はちょっとした広さの資材置き場。

 岩石ゴーレムが見える範囲で三体、石を投げてくる。

 金属ゴーレムが一体。

 地に伏せるスケルトンたち。

 矢を放つスケルトンゴーレム。

 ボロボロのローブを纏い杖を持った骸骨。こういうアンデッドをリッチ系と呼ぶらしい。確かにこの個体は指輪とか付けている。リッチだ。


 ゴーレムたちの飛び道具を鉄の髭がはじき散らしながら前に出て、聖女たちがそれぞれ詠唱をはじめる。

 エルエルヴィはリッチの魔法対策をする役目。


 マジカルナックルは片腕を奪った鈍銀ゴーレムに相対する。速やかに処分出来なければならない。


「マジカル・奪取」


 マジカルパンチと同じ要領、つまり接触して魔法を使う。

 残った腕をさけながらあちこちに魔法を打ち込んでいく。


 マジカル・奪取は魔力を奪う技である。

 ゴーレムもアンデッドも魔法によって動くつまり結局のところ魔力で動いているのだから魔力を奪えば魔法解除しなくてもその力は失われるのではないか。

 そんな発想から考えた魔法だ。

 感覚的には魔力を蓄える植物のタネを植え付け成長させるというものだ。

 新緑の魔力と轟炎竜の魔力を組み合わせて使う。


 魔力ポーションの原料の薬草は育つ際に光合成とは別に周囲の魔力を集める性質がある。

 その性質に注目し、そして魔法で生み出す植物はこの世界に存在していない物でも生み出せることから、めっちゃ魔力を奪う植物を考え、めっちゃ魔力を奪うという部分だけを魔法で再現したのだ。


 神前決闘の反省とこれまでの経験から、対ゴーレム、アンデッドという点を考えて組み上げた、植物由来の魔力奪取魔法。


 それがマジカル・奪取なのだ。


「魔力の流れを見抜いてせき止める感じで使えば末端は壊せるか。パンチよりは効くかな」


 鈍銀ゴーレムの四肢を外したところで前線に向かう。

 このメンバーではマジカルナックルが攻撃役として活躍できないと今回の作戦は成立しない。

 ゴーレムへの対処は、壊れるまで殴る、エルエルヴィや聖女セレナが魔法解除するの二つが主だ。

 しかし、二人は援護能力も高く、可能な役目が多い。

 魔力と集中力を多く負担させると、今回の作戦を戦い抜けないだろう。


 ドワーフと聖女たちの構成は対アンデッドと耐久力に秀でている。

 エルエルヴィは幅広く便利屋で、敵の魔法使い系アンデッドに対応できる。

 だからマジカルナックルは穴である対ゴーレムを担当する。

 それが出来なければ崩落の危険を承知で力技をぶち当てる仕事しかないのだ。


「マジカル・奪取」


 前線は岩ゴーレムとドワーフが互いに支えていた。彼らの上の空間を使って魔法が飛び交い、防がれている。

 バックラーで矢を打ち落としながら、前線を飛び越えざまに手を当てて、岩ゴーレムの頭から魔力を奪う。

 わずかな時間では機能停止までは至らなかった。


 やはりある程度の接触時間が必要か。


「マジカル・活性。奪取」


 敵中へ飛び込んだマジカルナックルは身体強化を行いながら、矢を放っている骨ゴーレムの首を落とした。

 すると首から下は動かなくなる。


「なるほど」


 周囲のゴーレムたちがマジカルナックルに向きを変える。


「マジカル・奪取根だっしゅね


 しかしマジカルナックルは放射状に根っこを広げてゴーレムたちの足に絡みつかせた。

 根っこには彼らの移動を阻害するほどの強度はない。

 しかし、柔らかく巻き付いた根は魔力を奪い取る。


「物質化すると消費が大きいわね」


 マジカル・奪取の利点は、新緑の魔力を補充できる点にもある。使い方次第で。差し引きプラスになりえるのだ。

 しかし、植物を物質化すると消費が大きくなってしまう。対象が増えた分で補えるかと思ったが、使ってみると大きくマイナスだった。

 とは言え、マジカルナックルに向き直ろうとしていたゴーレムたちはバランスを崩して転んでしまった。そのままさらに根っこに絡みつかせて魔力を吸いきってしまおうとしつつ、足が止まるのはまずいかと思っていると。


 そこに拳大の火の玉が飛び込んでくる。

 しかしそれは、マジカルナックルに届く前に、現れた光の盾に当たりベクトルを真逆へと変えた。エルエルヴィの援護だ。


 ゴウッ!


 返された火の玉はリッチを巻き込んで燃え上がる。リッチの周囲、半径三メートルほどが炎に包まれ、それが消えると、ぼろぼろのローブは燃え尽きていた。


「あんまり効いてないみたいね」


『おのれ貴様ら』


「黙ってそこで待っててね」


 心の奥底を凍り付かせるような音で発せられた言葉が理解でき、わずかに動揺したのを隠すようにマジカルナックルが言うのと同時、聖女スカーレットが乗り込んでいった。

 ゴーレムの数が減って敵の前線が崩れたのだ。


 マジカルナックルも聖女スカーレットに続いてゴーレムたちから彼女の背を守る。

 さらに聖なる光が撃ち込まれてまぶしくなったリッチを、聖女スカーレットが殴りかかる。

 ドワーフたちもやってきて、マジカルナックルが残りのゴーレムを倒している間にリッチは聖なる打撃と魂光鋼の打撃で粉砕されてしまったのだった。

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