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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 ドワーフ地下帝国

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45/51

045 決着

 意識して身体能力を強化するようになって改めて理解したことだが、マジカルナックルに変身して高まる身体能力も魔法によるものだった。


 そして、同じように、鎚矛メイスを振り下ろしながら高速で距離を詰めてくる聖女スカーレットや、それに続くドワーフたちも魔法によって強化されていることが分かった。


 これは小柄だろうが女性だろうが、重量装備に振り回されずに、振り回すことが可能ということだ。

 聖女はともかく魔法使いではないドワーフたちも魔力で強化しているのは、この世界では魔力の使用が一般的なのだろう。

 板金鎧なら可動域の問題があるだろうが、鎖を編んで作られたチェインメイルなら比較的動けるだろう。

 重い装備を身に着けて機敏に動けるのなら、欠点はうるさいことくらいだ。攻撃力も防御力も上がっている。

 そして動けるなら連携もしやすい。


 聖女スカーレットの鎚矛を受け止めれば、続く黒鉄皇帝をはじめとするドワーフ戦士たちの追撃がくる。


 距離を取って端から削るのが対多数戦闘の定石だ。

 だが、マジカルナックルはもともとそれができない魔法少女だった。


 殺意の塊のような鎚矛を振り下ろす聖女スカーレットの、右手側に至近距離をすれ違うように避けるマジカルナックル。

 フリーの左手に捕まる可能性を嫌ってのことだ。

 聖女スカーレットは鎚矛の軌道を強引に修正し、柄の柄頭で殴りつけようとしてくる。身体強化のおかげでできる無理な挙動。


「マジカルパンチ」


 マジカルナックルが打ち付けられようとしている鎚矛の柄に触れて魔力打撃を打ち込む。聖女スカーレットの左方向へ向けてだ。

 鎚矛を持っていかれそうになり反射的に力を籠め、動きが固まる聖女スカーレットの隙をついて後続を狙う。


 向かって左から、一番、二番、聖女スカーレット、黒鉄皇帝、三番、四番と並んでおり、黒鉄皇帝から向こうは聖女スカーレットが壁になっているので狙いは二番。


 やはり殺意の高い両手斧。こんなものを人間にたたきつけたら真っ二つだろう。

 タイミング的には彼の想定より早い接近だっただろうが、二番の戦士は対応していた。

 振り上げつつあった斧を盾のようにしてマジカルナックルを受け止める構え。聖女スカーレットがやるはずだった役割を務めようということか。


 マジカルナックルはつる草のムチを絡みつかせて二番の戦士を跳び越えた。


 一瞬の滞空。

 ムチを引いて反動で着地。

 マジカルナックルよりはるかに重い重装ドワーフはマジカルナックルを地上に固定する錨の役目を果たしてバランスを崩している。


 さらにムチを引き、反動も利用して向きを変え、一番の戦士の背中に迫る。


「マジカル・お日様の魔法」

「ぎゃあ、まぶしい!」


 振り返りざまのハンマーを避けて兜の鼻まで伸びていた部分にお日様の明かりを設置した。

 さぞまぶしいことだろう。

 開戦時に狙われた意趣返し、というわけではない。

 立派な胸甲をつけているので試そうと思ってのことだ。


「マジカルパンチ!」


 一番の戦士の胸、しっかりとした金属板の部分に打ち込まれた魔力打撃は、彼の姿勢をわずかに揺らした。


 事前にかけられた魔法防御はしっかり効いているようだ。


 マジカルナックルは安心して、今度はハンマーの柄にマジカルパンチを打ち込む。


「マジカル連続パンチ!」


 マジカルパンチのいいところは、触ったまま連打できる点である。


 本人へのダメージは魔法で防御されているようだが、手に持った武器には効果が無いようだ。

 まぶしくて混乱しているところに短時間に連続して衝撃を打ち込まれ、一番の戦士の手からハンマーは弾き飛ばされてしまった。

 拾いに行けば十秒はロスになるだろう。


「速いですねっ!」


 ここで体勢を立て直した聖女スカーレットと黒鉄皇帝が左右に分かれて殴りかかってくる。

 マジカルナックルは二歩下がる。一番の戦士が伸ばした手が空を切った。危ない。捕まるところだった。


「速くないと勝ち目がないでしょう」


 黒鉄皇帝に向かって踏み込む。

 マジカルナックルの武器は踏み込みと離脱の速さと巧みさである。

 攻撃射程が手が届く範囲だったマジカルナックルが戦うにはこれしかなかった。

 巨大な敵も、小さな敵も、人型の敵も、手の届く範囲まで接近して魔力打撃を叩きこむ。それだけしかできなかったのだ。


「ふん!」


 振り下ろされるツルハシを止まってかわす。目の前でツルハシが止まる。はじめから止める気だったのか。ツルハシが水平にまでひねられてそのまま押し込んでくる。


「マジカルパンチ」


 柄に手を当てて聖女スカーレットの方向へ弾くと、黒鉄皇帝がたたらを踏んで身体が泳ぐ。先ほど武器を弾いたのを見たからだろう、がっちりと握っていたせいで体ごと浮いたのだ。


「すごい握力」


 踏み込んで兜に触れる。


「マジカル・お日様の魔法」

「ぐううう!」


 黒鉄皇帝にも目つぶしが決まり、しかも聖女スカーレットにぶつかる動きだ。

 聖女スカーレットがどう動くか。それを見ないで後続の三番と四番の戦士と相対する。


 三番は斧と盾、四番は両手持ちの鎚矛。

 魔法防御があっても頭に魔力打撃を打ち込むのは気が引けるのだが、相手の身長が一メートルほどしかないので攻撃しやすい場所が限られる。

 それならと副次効果を狙ってのお日様の魔法だ。


 四番に踏み込み、振り上げられた鎚矛の柄に魔力打撃を打ち込むと、想像以上に弾き飛ばされていく。


「いまじゃ!」

「マジカルパンチ!!」


 四番の戦士は武器から手を放していた。そしてマジカルナックルの足に抱き着いてきた。初めからこれが狙いだったのだ。大きく両手で振り上げられていたのは誘いだったということだ。


 しかし、マジカルナックルはドワーフの戦士が触れてきた場所からマジカルパンチを放った。


「ぐぇ」


 接触面全てに打撃を受けて、魔法防御があっても四番の戦士は怯む。思いもよらない場所からの衝撃は普通以上に大きいものだ。

 その瞬間にマジカルナックルは四番のドワーフをはねのけ、飛びのいた。


 直後に三番のドワーフが盾を前面にして四番のドワーフにぶつかった。マジカルナックルが避けていなければ挟まれていただろう。


「マジカル・お日様の魔法」


 二人の兜にも明かりをつける。


「兜を脱がないと、熱にやられちゃうよ」


 距離を取りながら語りかける。お日様の魔法は熱も発生するのだ。

 斧でつる草のムチを払った二番が寄ってくる。聖女スカーレットは黒鉄皇帝を支えており、一手遅れそうだ。


「わしらは熱いのには強いんじゃ」


「じゃあまぶしいだけってことか」


「それはそれで厄介じゃがの」


 両手斧を横なぎに振るってくる、と見せかけて投げつけつつ自身も飛び込んでくる二番の戦士。

 マジカルナックルが捕まるのを嫌がっていると考えての行動だろう。両手斧を投げつけるとはさすがのパワーだ。


「ならこれを借りよう」


 投げつけられた両手斧をキャッチする。

 柄があるのだから可能である。しかしその間に距離を詰めてくる。


「マジカルパンチ!」


 掴んだ両手斧にマジカルパンチをぶつけて、二番に向けて撃ち出した。


「げえ!」


 武器を使う経験はないが、障害としてぶつけるくらいならできる。


 斧の平たい部分が相手に向けられた状態で飛んでいき、二番の戦士は勢いもあって受け止めざるを得なかった。

 そこにマジカルナックルが追撃する。


「マジカル・お日様の魔法」


 からの。


「植物は水とお日様が育てる・生命の力よ・拘束せよ・マジカル・バインド」


 長めの詠唱を入れて地面に手をつくと、マジカルナックルから半径十メートルほどの地面から爆発的につる草が伸びる。

 それは、ドワーフたちに見る見るうちに巻き付いた。

 何重にもかけたお日様の力と、事前にまかれた水に後押しされて。

 一本一本は引きちぎることもできるだろうが、量と密度がそんなレベルではない。無数の拘束は簡単に抜けることはできない。


「さあ、あとは一人だけ、ってことでいいよね、スカーレットちゃん」


「お姉様、すごいですね」


 シンプルな語彙で褒めてくれる聖女スカーレット。どうやってかわからないが、おそらく何か魔法的な力で拘束を防いだのだと思われる。

 正義の裁きを執行中は逆に拘束されることはないとか、そういう加護が働いているのかもしれない。


「そのバリバリしている痛そうなので殴られないと終わらないよね?」


「あたしが負けを認めればそれでも」


「あ、そうなの?」


 あまりにも痛そうな、神前決闘の宣言で強化されている鎚矛を受けなくていいならその方がうれしいが。


「でも、もう一手。ぜひ」


「オーケー。あっちの綺麗なところでやろうか」



 ということになり、一対一で足を止めての打撃戦が行われた。


 そして、結果として、マジカルナックルとエルエルヴィが、神前決闘の勝者となったのだった。

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