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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 ドワーフ地下帝国

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039 お返し

「エルエルヴィ様、お姉様、申し訳ございませんでした」


 謁見が喧嘩別れのような形で終わり、ヒスイたちが控室に戻ったところで、聖女たちが四人現れて、聖女ビアンカが謝罪してきた。ほかの三人もそれに倣う。


「聖女様から謝罪を受けるような覚えはない。それとも、裏で糸を引いている?」


「いえ、そういうわけではないのですが」


「あたしが手合わせしたいって言ったんだ。それで」


 昨日、聖女スカーレットと聖女セレナはヒスイたちと別れて報告へ向かった。

 善後策を検討する場が持たれて、その中でそういった言葉を言ったらしい。


「スカーレットは、自分が手合わせしたいと思うくらい強いから頼りになりそうだ、という評価をしたのです。その先の決定には関わっていません」


「隊長は主導権を握ることに命を懸けているのですわ……わたくしがその場にいればよかったのですが」


「ビアンカは私たちが楽しく過ごせるように手配してくれていたんだから。そうすると、ドワーフ地下帝国なのに支援部隊のほうが主導権を握ってるの?」


「必ずしもそういうわけではなく。ただ、突発的な状況ではそうなりやすいですわ。ドワーフの皆さまは、政治の駆け引きはあまりお好みでないようで。純朴で正直な方々ですから」


 そういう聖女ビアンカは、政治的なバランス感覚を持っているようだ。

 すぐにヒスイたちのところに来るくらいである。

 あの場で動かなかったのは、それは逆効果になると考えたからだろう。


「ドワーフの皆さまは奔放である代わりに、上からの指示は絶対なのですわ。喧嘩をしても上司が叱れば驚くほど素直に従うのです」


「偉い人が出てきて叱るようなのは、よほど大規模な喧嘩ですけどね。そんなことより、お姉様、エルエルヴィ様、大丈夫ですか? よろしければ、わたしはそちらをお手伝いしても……」


 聖女クロエの申し出に、ヒスイは首を横に振った。


「クロエちゃんは、怪我人が出たときのために控えていてほしいかな。スカーレットちゃんは出るとして、他はどうなりそうなのかな?」


「わたしが援護をします。ビアンカとクロエは不参加となるかと。他の聖女は持ち場と休息がありますので、参戦しないと思います。あとはドワーフがどれくらい参加するか」


「その、エルエルヴィ様が煽ったので。ドワーフの皆さまは素直ですから」


 すまなさそうな聖女セレナと聖女ビアンカの言葉に、ヒスイはエルエルヴィを見るが、全くいつも通りだった。


「ということだけど、大丈夫そう?」


「ヒスイちゃんが聖女の二人を相手にしっかり力を見せつけてくれれば大丈夫」


 自信ありげどころか、当然至極といった様子である。


「まあ」


「参加しそうなドワーフさんは、歴戦の戦い好きの方ばかりなんですよ?」


「あたしも組み手をしてもらうくらい頑丈で強いんですよ」


 聖女スカーレットは鍛錬に貪欲なようだ。正義の聖女としての自認がそうさせるのか、そういう人だから正義の神に気に入られたのか。

 巨大スケルトンとの戦いでもドワーフと共に最前線にいた。

 おそらくとても強い。


「神の寵愛を受ける聖女ならともかく、普通のドワーフなら大勢いても同じ。魔法で怪我をしないよう、聖女様が守ってあげてくれますかッ」


 しかし、エルエルヴィは臆することなく、聖女セレナに向かってそう頼む。


 これには聖女たちも驚いたようで、顔を見合わせたあと、聖女セレナが頷いた。


「心配は無用のようですわね。黒鉄陛下が準備に一日か二日、かかるかと思います。それまでにお二人も準備をしておいてくださいまし。確定しましたら、また伝えに参りますわ」


「うん、了解。スカーレットちゃん、セレナちゃん、お互い頑張ろうね」


「はい!」

「お互いに」


 こうして互いの健闘を祈りつつ、聖女クロエを除く三人と別れた。



 聖女クロエは案内係としての役割を続けてくれるということで、一緒にヒスイたちのあてがわれた部屋に向かう。


 そして部屋の前で、ドワーフが大きな荷車と共に待っていた。


「エルエルヴィ殿、ハナグルマヒスイ殿、親方、じゃない、陛下からの返礼の品を持ってきたぞい。部屋に運び入れてもいいかの?」


「あれ、あんな感じだったけど、もらっていいんですか?」


 待っていたのは主計大臣だった。

 確かに、謁見の途中で返礼の品を用意するように言われて退席していた。


「やめろとは言われておらんのじゃ。わしらにとっては当たり前の品じゃが、よそでは価値があるらしいものじゃから、受け取ってくれ」


 そう言って渡された目録には、明らかに高価なものが書かれている。

 金、銀、宝石。そしてドワーフ製の鎧と武器。


「鎧はここにあるのは見本じゃから、あとで採寸させてもらえるかの」


「あたくしたちは魔法使いなので金属の鎧を身につけない。採寸は不要。大変申し訳ない」


「おぉ? 鎧を無しで……?」


 見本とされた鎧は、磨き抜かれた銀色の、鎖でできた服のようなチェインメイルと、金属板を叩いて作られたであろう胸当てだ。手甲や足甲も付属している。固定には革製のベルトを使うようだ。

 それが二人分。


 身に付ければ何キロになるだろうか。

 着慣れないとうまく動けないだろうとヒスイは思った。なんなら身に着けるだけで体を鍛えられそうだ。


「そういうことならほかの品と取り換えようかの。武器はどうかね?」


「この素晴らしい剣を二人分。他は使いこなせない。良ければナイフや錆びない日用品をいただきたいッ。我々はしばらく旅をする予定。ドワーフが作った道具があるととても助かりますッ」


「ほうほう。では用意しようかの」


 主計大臣はそうして、お供のドワーフたちに指示して、返礼品を下ろす作業を始める。


「この鎧はよい鋼ですねッ! 一流の戦士が身に着けるものと同等品ですかッ?」


「うむうむ。わしらの使う鎧はこれと同じ鋼を使っとるよ。強靭で歪みにくい、いい配合なんじゃ」


「武器はどうですッ?」


「武器は好みが強いの。鋼以外を使うこともある」


 そんな話をしているエルエルヴィと主計大臣を横目に、ヒスイは運び込まれる貴金属や宝石を見ていた。


「お姉様、どうしました?」


「いや、お酒のお返しがこんなになるとは、って思って」


 金の延べ棒が三本、銀が五本、大粒の宝石が十個。

 これだけで日本でどれくらいの価値になるのか。億とか行くのではないか。


 ちょっと桁が違う気がする。


「ドワーフの皆さんにとっては他種族のお酒はそれだけ貴重なんでしょうね。薬草もあったでしょう? 毛皮もこのあたりで手に入るものではない大きな魔獣のものでした」


 砂漠における水の一滴のようなものか。

 価値観の差の片鱗をヒスイは味わっていた。


「もしかすると、迷惑料のようなものも含まれているかもしれませんね」


 聖女クロエがヒスイの耳元でそう囁く。

 そう言われればなるほどと、思わなくもなかった。

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