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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 ドワーフ地下帝国

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038 エルエルヴィがなんかすごい怒ってる件

「陛下、発言よろしいですか」


「なんじゃ?」


「何をもって我々をお疑いに?」


 ヒスイにはそこが疑問だった。

 お前たちを詐欺師ではないかと疑っていると、正面から喧嘩を吹っ掛けるような疑いをかけてきたのだ。

 エルフであるエルエルヴィが正式に名乗り、聖女たちとも良好な関係を築いてきている。

 仮に新緑の森を信用できなくても、すでに受け入れている聖女の見る目をも疑っていることになる黒鉄皇帝の行為は重いはずだ。


 ならば相応の疑うに足る確証があるはず。

 そこを聞き出して、最低限、誤解を解きたい。


「ああ? 連絡路が潰えた確認に向かったら、ちょうどアンデッドどもの幹部と戦闘していて無傷で切り抜け、そいつが力を貸そうと言い出すだ? 都合がよすぎるだろうが! あまりにも!」


 なるほど。


「親方ぁ、この子らぁ、いい子ですぜ?」


「バカおめぇらがそう単純だから皇帝が苦労するんだろうが! というか皇帝と呼べや! 客人の前じゃぞ!」



 黒鉄陛下と口を挟んだドワーフのやり取りからは、皇帝という言葉からくるイメージとは大きく違うなと、ヒスイは思った。

 老獪な政治家だとか、冷徹な決断者、帝国という大きな存在の頂点、幾万の民を率いる偉大な指導者。

 そんなイメージとは違って、もっと卑近というか、ドワーフたちの言う親方のほうがあっているような気がした。



 それはそれとして。


「エルエルヴィちゃん、確かに怪しすぎるよ、わたしたち。これ以上引っ掻き回すことになる前に退散しようか」


「非常に不本意なんですが?」


「でも反論できる?」


「むむ」


「あんまり言いたくないけど、エルフでももめたでしょ」


「それは、そうですがッ」


 エルフたちの間でヒスイが寝ているあいだに始末するかが議論されたことは事実である。

 エルエルヴィが頑張って恩人という扱いになったことも。

 新緑の森とは違い、ドワーフ地下帝国では、より怪しいと判断されたということだろう。

 状況も違うので仕方あるまい。


「新緑の森の友を疑われて引き下がるわけには。撤回させなければならない」


 エルエルヴィの“友”という表現がそれほど重いものとは思っていなかった。


 ヒスイはドワーフとエルフの関係を気にしていたが、すでにその心配をする段階では無いようだ。


 しかし疑惑を解くのは難しいことだ。疑いの目を前提としてしまえば、何をやっても疑惑は深まったと言い続けられるのだから。悪魔の証明というやつである。


「友を疑われては友とは――」


「それ以上はいけない」


 エルエルヴィを止めつつ、ではどうしたらいいかというと困ってしまった。

 黒鉄陛下に疑惑を取り下げてもらわなければ、エルエルヴィは納得しないだろう。

 かといって悪魔の証明を求められても困る。だから帰ろうかと思ったのだが。



「いやいやいや、陛下、そしてお二人も、お待ちください」


 ドワーフとヒスイたちがそれぞれ内輪でもめていると、副長と、初めて見るおじさんが聖女たちを従えて前に出てきた。


「なんじゃ、聖女ちゃんとこの」


「ええ、ええ、中央諸国同盟のドワーフ帝国支援合同部隊隊長のチョータイです。どうぞよろしくお願いします、新緑の森のお二人」


 隊長は、腰は低いが見た目は髭のおじさんだ。ドワーフに負けていない。三国志の武将のような印象だ。関羽とまではいかないが、屈強で髭が立派である。


「確かに話を聞くだけでは信じがたい部分はありますが、聖女の皆さまが認めたお二人です。陛下の民を思うお気持ちもわかりますが、否定から入るのはよろしくありません。よろしければ、見極める機会を設けてはいかがですか」


「どうしようというんじゃ?」


「ご存じの通り、我々の中には正義の聖女がおります。正義の神が司るものには断罪もございます。立ち合わせてみるのはいかがか。神前決闘というわけです。万年宰相を相手にしたという力も見ることができるでしょうし、邪なたくらみをもつ者ならば正義の力で粉砕されることでしょう」


「うん? しかし、その正義の聖女ちゃんも支持しておるんじゃろうが」


「お言葉ですが――」


「神に誓って、私心にて手を抜くことはありません」


 隊長の言葉を遮って、聖女スカーレットが宣言する。


 黒鉄陛下は失言が多い。わざとやっているのだろうか。

 聖女スカーレットの目が燃えている。ヒスイを見て口角を上げていた。

 手合わせをしたかったのか、他に思惑があるのか。


「どうですかな、エルエルヴィ殿、ハナグルマヒスイ殿?」


「それで疑いが晴れるのであれば」


 ヒスイは渡りに船だと考えた。

 だが、こういう形に持ってこようという意図を感じ、面白くない。考えたのは隊長か、副長だろうか。

 ドワーフが泥をかぶっている形なのは少々気に入らない。

 気に入らないが、向こうの関係のことにヒスイが口を出すのも違う気がする。


 しかしエルエルヴィはそれで収まらなかった。


「条件を要求するッ。疑いを晴らした暁には発言の撤回と謝罪が行われることッ。瑕疵もなく嘘もついていない我らを頭から疑い、神前決闘? そのような真似を強要する以上、最低限けじめをつけてもらうッ」



 想像の百倍怒っていた。



「なっ……」


 絶句する隊長。


「森の友、それは」


「ドワーフ地下帝国皇帝陛下。新緑の森はドワーフ地下帝国よりはるかに若く小さいが。竜を前にしても立ち上がるぞ」


 山の友という言葉を使わず、冷徹に言い放ったエルエルヴィの言葉は謁見の間に染み渡った。


「それでよければ受けて立ちますねッ。こちらは二人ですッ。そちらは何人でもどうぞッ? 条件を付けた分、譲りましょうッ」


「ということです」


 旅のパートナーがここまで覚悟決まっているなら、ヒスイも否やはない。

 黒鉄皇帝を、隊長を、副長を順に見る。


「……ええじゃろう。認めるに足る結果を出せたならこの頭を下げてやろう」


「決まり」


 こうして、神前決闘が行われることになったのである。

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