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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 ドワーフ地下帝国

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037 謁見

体調は回復しましたが、しばらく更新ペースを落とします。ご了承ください。

 剣。

 鎧。

 鎚。

 槍。

 名前を知らないけどいろいろな形状の長柄武器。

 兜。

 などなど。


 謁見の間には様々な武具が大量に飾ってあった。

 すべて形が違う。

 そして、素人目にも美しく、そして強さを感じ取れる。

 威圧感すら感じるような光景だ。


 謁見の間というのは偉い人と会う場所なのに武器とかあっていいものなのかと思ったりしたが、文化の違いだろうとヒスイはひとまず深く考えなかった。



 ドワーフ農場観光の翌日、互いの準備が整ったということでドワーフの皇帝と会うことになった。謁見だ。


 謁見なんて言葉の当事者になるなんて思ってもみなかったヒスイである。

 エルエルヴィはどうだろうかと様子を見ると、いつもよりは表情が硬い。

 今朝、用意していたお土産を確認していた時にはこんなことを言っていた。


「互いに別の種族だから作法は気にしなくていい」


 敬意さえあれば大丈夫だという主張をしていた。

 ヒスイとしては、エルエルヴィはナチュラルに「これだから人間は」とか言っていたので少々心配だった。だが、緊張しているのならむしろ大丈夫だろう。きっと言葉を選ぶ。



 そういうヒスイは、今日起きてからすこぶる体調が良かったことで、気分が高揚していた。

 こちらの世界に来てから調子がよかったが、旅立ってから歩き詰めで、筋肉痛を挟んでからはあまり変わっていないという感覚だった。

 しかしそれは、蓄積する疲労との相殺だったのかもしれない。


 こちらの世界で体が軽くなるというのは、地球とこの世界の魔力の差なのだろう。

 ヒスイのやたら大きいという魔力の器が徐々にこの世界になじんできているという仮説だ。そろそろ呼吸法の練習を再開してもいいかもしれない。



 今はそれよりもドワーフ皇帝との謁見だ。


 調子がよすぎて昂揚しているので、ヒスイのほうがうっかり変なことを言わないように気をつけなければ。

 社会人をやっていたヒスイは、しょうもない失言で人を怒らせたこともある。

 そして、そういうことは調子に乗っているときに起きやすいのだ。

 つまり今である。

 気分がいい時の失敗ほどへこむものはない。


 皇帝についてはこれまでのドワーフの皆さんの様子を見る限り大丈夫だろうと思っていた。




 さて、謁見の間には、ヒスイたちのほかに、ドワーフ地下帝国に入国する前に会ったメンバーが一緒に来てくれていた。

 さらに、ドワーフたちがワイワイ話をしている。


 なんだか思ったよりカジュアルなのかなと思っていると、話をしていたドワーフが手を振りながら近寄ってきた。



「おう、森の友。よく来たの。そんでお嬢ちゃんが聖女ちゃんたちのお姉様か。わしがドワーフ皇帝“黒鉄”千百十三世じゃ」


 現れた皇帝は眼鏡に白いシャツに黒い腕カバーをしていた。

 ヒスイは昭和の事務のおじさんを思い出した。コント番組の再放送とか、刑事ドラマの再放送でたまに見かけた姿だ。


「山の友の皇帝に挨拶申し上げるッ。あたくしはエルエルヴィ。エルエルの系譜、エルエルウィの子。新緑の森より参りましたッ。こちらは同行者である新緑の森の友、花車ヒスイ。」


「花車ヒスイです。南を目指しエルエルヴィと旅をしています。どうぞよろしくお願いします」



 そして、二人の横にはドワーフ地下帝国へのお土産を運び込んで置いてあった。


 エルフの果実酒の樽、エルフの蜜酒の瓶、エルフの薬草、砂糖壷、森の獣の毛皮。

 などなど。


 結構な量だが、エルエルヴィが魔法で小さくして新緑の森から持ってきたものだ。


 エルエルヴィとエルフたち、猫人たちが旅立ちに際し用意してくれたもの。

 一部はエルエルヴィの私物だが、お酒の多くはエルフが、毛皮は猫人がもたせてくれたものだ。


 旅の途中、人に会う時や、交換物が必要な時があるだろうと。

 エルエルヴィは旅立つときからドワーフ地下帝国を通らせてもらおうと考えていたわけだから、そのつもりで用意したものでもあるだろう。


「うむ、結構なものを用意してくれたようじゃが、なにが狙いじゃ?」


「狙い?」


「違うのか?」


「何がですかッ?」


 ヒスイとエルエルヴィは首を傾げた。


「私たちは南に向かいたいのです。それで来てみたら通れなかったので」


「おう、それで力を貸そうって話だそうじゃの? その上こんなに貢物を差し出してくる。わしらに何かを要求しようってんじゃろう?」


「え?」


「んん?」


 黒鉄千百十三世陛下が言っている意味が分からなくて、ヒスイとエルエルヴィは顔を見合わせた。

 それを見た黒鉄陛下は眼鏡をはずして声を荒げた。


「わからんのか! お嬢さん方が差し出すもんが多すぎるじゃろうが! 釣り合わんと言っておるんじゃ! 力を貸す、土産を積み上げる。その代償にわしらに何をさせようというんじゃ? 金か? 命か? なんか騙そうとしとるんか?」


 そこまで行ってから眼鏡を付け直し、髭をしごきながらにらみつけてくる。


 なるほど。


 言われてみれば、確かに天秤で考えれば釣り合いが取れていない気がする。

 とはいえ、こちらからの要求なんてものはない。

 ヒスイは何と答えるべきか迷った。


「山の友、誤解がある」


 迷っているうちに、エルエルヴィが口を開いた。


「これは通行料を兼ねてはいるが、挨拶。新緑の森と山の友の友好の意思を示すための。ささやかで申し訳ないが、新緑の森は新興の森なので大目に見てもらえると助かる。通行できなかったが、それはそれで、これはこれとして受け取っていただければそれでいいッ」


 これに対し、黒鉄陛下は動きを止め、わなわなと震えてから応える。


「ほおう、そうかそうか、森の友。主計大臣! 相応の返礼を見繕って来いっ!」

「おうよ!」


 推定主計大臣が謁見の間を出て行く。


「ちょっと、怒らせてない?」


「異種族間のやりとりでは決して舐められてはいけない」


「さっき言ってたことと違くない?」


 周りを見ると、人間たちは焦っているようで、ドワーフたちは、髭でわかりにくいが不敵な笑いを浮かべているように見える。


 これはどうなのだ、ヒスイはどう反応するのが正解なのか、また迷った。皇帝との謁見の経験などないので。


 何か企んでるんじゃないかみたいな言い方をされるのは心外ではある。「なんか騙そうとしとるんか?」は普通に失礼だろう。皇帝でも。


 そうするとエルエルヴィの反応もわかる。

 誤解は解いておかないとつまらない。なめられているのもよくない。


 とはいえ、こういうのは止める役の者を用意しているものだが。


 出てくる様子がない。


 三秒ほど様子を見たが出てこなかったので、ヒスイは思い切って動くことにした。


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