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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 章題未定

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027 聖なるもの

 巨大スケルトンがその四肢を振り回す。

 操られていた状態の轟炎竜と比べると若干小さく、そして遅い。

 だから楽勝かと言えば、そうではない。


 骨の騎士が隙を埋めてくる。


 慣性を無視するかのような大剣捌きで、甲冑騎士とは思えない速さで動く骨の騎士。

 マジカルジュエルに強化されているマジカルナックルに迫る速度は尋常ではない。

 スケルトンの群れを圧縮したこの二体は、吹けば飛ぶ雑兵スケルトンとは比較にならない強さだが、しかし手数は明確に減っている。


 それを補うのがノイン・ツェーンであった。


 マジカル波を直撃させ、消滅したように見えたノイン・ツェーンは、しかし頭蓋骨だけが残っており、杖と共に宙に浮いて多様な魔法を放ってくる。


 ボロボロのローブの内部にあった身体は傀儡にすぎなかったのか、別のアンデッドに本体を運ばせていたのかもしれない。


 頭蓋骨だけで動けて魔法も使ってくる以上、戦力に影響はなさそうだ。


 敵の中軸は明らかにノイン・ツェーンである。

 だからマジカルナックルは狙い続けているのだが、巨大スケルトンと骨の騎士がうまく動いて攻撃できないし、近接攻撃と魔法の連携も巧みだ。


 前衛と後衛が機能しているというのはこういうことかと、お手本を見ているような気になる。


 こちらもマジカルナックルが前衛として敵の攻撃を引き受けて、エルエルヴィが身を隠しながら最も動きが遅い巨大スケルトンの解呪を試みたりしているが、解呪の魔法陣では解呪できていない。


 魔法使いとしての腕が敵の方が上なのか、それとも別の要因か。


 轟炎竜を解放したときの魔法は他のエルフ複数と共同で使っていたようなので、あるいはマジカルナックルが協力できれば、いや、まだそこまで魔法に熟達していないし、魔法に集中すると攻撃を受けてしまうだろう。


 マジカル波も、骨の騎士と近接戦闘をしながらでは放つ隙がない。


 自在に切り返される騎士の剣を下がって避けたところに巨大スケルトンの拳が落ちてくる。その上足元が泥沼にされたのでムチを足場にしてさらに飛びのく。その先に突き込まれる大剣。白刃取り。身体ごと振り回されそうになる。てこの原理はどこに行った。

 この大剣も骨でできているはずだ。


「マジカル浄火パンチ!」


 剣のひねりに合わせてこちらも体を回転させつつ、挟んだ両手から魔力打撃と浄火爆砕を仕掛けると、ばぎんと音がして剣の先端が折れる。

 折り取った切っ先からはどす黒い煙が出ていたので思わずノイン・ツェーンに投げつける。

 ノイン・ツェーンの頭蓋骨に取り込まれるように消えていった。失敗したかもしれない。


「ククク。よく動く。若い者はあきらめが悪い。それだけ動くなら良い素材になるであろう。汝も我が配下にしてやろうぞ」


「お断りだけどね! 配下を増やしに出てきてたってこと? 半分吹き飛ばしちゃってごめんなさいね?」


「減らず口を叩くものよ。最近の若い者は礼儀を知らぬ。嘆かわしい。嘆かわしい」


 折られた剣の側からも黒い煙が出ていたが、気づけば元の形に再生していた。

 これは消耗しているのか、していないのか。


 しかし浄火の炎はそれなりに有効らしいという手ごたえがあった。

 もっと手軽にぶつけられればいいのだが。


 マジカル波は足が止まるし両手を使う。

 こちらの手数が足りなかった。


 エルエルヴィにもっと頑張ってくれとも言えない。

 これまでも致命的な隙をカバーしてくれている。


 マジカルナックルのカバーをやめて攻撃に専念してもらう?

 しかし火力はマジカルナックルの方が上だろう。

 相性もいい。

 何かいい手はないか。


 お互いに膠着を感じているのがわかる。

 こうなると気になるのは消耗だが、マジカルジュエルは徐々に暗くなってきているし、多用している新緑の精霊由来の魔力が減ってきていることを感じていた。

 疲労についてはジュエルが光っている限りは大丈夫。つまり心が折れなければ。

 ジュエルが完全に黒く染まるほどの絶望は感じない。

 ただじりじりとした消耗と、相手はアンデッド、消耗しているのかわからないという点で長期戦は不利な気がしていた。


 こんな時こそ勇気をもって踏み出さなければならない。


 マジカルジュエルは愛と勇気、夢と希望を力にしてくれる。


 何でもいい。試してみよう。


 つる草ではなく枝を伸ばした。炎で包み込む。大剣と打ち合う。ダメ。切り飛ばされた。剣の腕が足りない。


 火球が飛んできたのを火炎放射で迎撃。火球が膨張しなかった。これはいい。


 巨大スケルトンの足元に入り込むと全身がバラバラになって圧し潰そうとしてきたので慌てて逃げた。動けなくされると終わる。



「ククク。小賢しく動いておることよ。我らは疲れることなく汝を攻め続けるぞ」


 疲れないらしい。嫌な情報だが知っておくべき情報でもあった。


 思い切った攻め手で均衡を崩さなければジリ貧だ。ノイン・ツェーンがそれを狙わせるために焦らせていることもわかるが、それでもだ。


 そう思っても敵の攻め手は止まらない。


 そこに四方八方からマジカルナックルの腕ほどの木の枝の矢が降り注いだ。狙いは敵。

 エルエルヴィの支援だ。


 瞬間的に敵の動きが拘束される。


「マ~ジ~カ~ル~ッ! 波ああああああああ!!!!」


 足を止め、生命と浄火の力を込めたマジカル波が放たれる。

 狙いはノイン・ツェーンだ。

 骨の騎士をかすめる軌道。骨の騎士は大剣で受け止めようとするが、マジカル波の範囲に入った大剣は消滅してしまう。


 ノイン・ツェーンまで届く、そう思ったとたん、横から巨大スケルトンの拳が振り抜かれた。


「ぐっ……!」


 全身が叩きつけられ吹っ飛ばされるマジカルナックル。


 エルエルヴィの木の枝の矢の魔法では、巨大スケルトンを止め切れていなかったのだ。


 激しい痛み。だが負傷はない。魔法少女衣装がボロボロになったが。


 一撃でのダメージが大きい。


 今の流れで敵を削れなかったのはマジカルナックルの判断ミスと言えるだろう。


 巨大スケルトンを狙えば被弾も避けることが出来た。


 着地しながら拳を握り、反省しつつ、突っ込んでくる骨の騎士を待ち受ける。剣を失ってどうするかと思えば向こうも手甲で拳を作っていた。





『聖なる光よ!』





 そのとき、響いた女性の声と共に、煌々と清浄な光が生み出されあたりを照らし出した。


 声は一つではなく、光源もまた複数だ。


 さらに。


「聖なるドワーフ特攻弾!!」


 力強い女性の声と共に何かが回転しながら飛び込んでくる。


 それは巨大スケルトンに激しくぶつかり、破砕音が生まれた。


 マジカルナックルやエルエルヴィより小さいが、銀色のチェインメイルに身を包んだ髭のおじさんが、その身ほどもある輝くハンマーで巨大スケルトンをぶん殴っていたのだ。

 ドワーフだ。


「もう一丁!」


 これは声の主がドワーフを投げつけているのだろうか。


 断続的にドワーフが飛び込んできて巨大スケルトンに殴りかかる。


 これに対し、骨の騎士は素早く身を引いた。

 先ほどまでは骨の色だった全身が黒く覆われるという変化が起きている。

 そして、ノイン・ツェーンの頭蓋骨と杖をひっつかむと光の外へ駆け抜けた。


「ククク。また相手をしてやろう。次は我が配下に迎え入れてくれる。ククククク」


 いけない、追うべきか。


 しかし、巨大スケルトンがドワーフたちと殴り合っている。

 足止めに残されたのだろう。目立つし。


 ドワーフや女性の声の主を置いてまで追うべきか。


 迷った時点で手遅れだった。

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