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魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ
2章 章題未定

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019 アンデッド

 大きな角が前方へ向けて三本生えた三メートルほどの四足巨獣。


 そのアンデッドが、どしん、どしん、どしんどしんとマジカルナックルの脇を駆け抜ける。


 先日戦ったドラゴンと比べれば小さく遅いその敵に、マジカルナックルは苦戦を強いられている。


「腐った肉きつぅ……」

「しっかりしてッ!」


 マジカルナックルの相棒である、エルフのエルエルヴィの苦情にごめんとあやまるが、現代日本人には、かなりきつい匂いとビジュアルだった。



 仮称・三角ゾンビ巨獣。


 ゾンビ。動く死体。

 おばけである。


 南へ向かう森の中。

 現れたこいつは問答無用で襲い掛かってきたのだ。


 正面から打ち合えば勝てる相手だろうが、嫌悪感が勝る。


 そのくらい我慢しろと、マジカルナックルは自分でも思うが、なかなか思うようにいかない。


 しかも、最初に我慢して打撃したとき、ぐちゃりという手ごたえだけでダメージが認められなかった。


 雑な狙いは意味がなく不快なだけ。

 見極めて攻撃する必要がある。


「直接が駄目なら魔法でッ!」


 エルエルヴィの指示。

 三角ゾンビ巨獣が向きを変えて再び突撃を仕掛けてこようとしている今が、魔法を使うチャンスである。


「やってみる! つる草よ!」


 マジカルナックルの左腕からものすごい勢いで無数のつる草が伸びる。

 そして周囲の木々を渡して大きな網を作り出した。


「マジカル・つる草の網!」


 つる草で編んだ網で三角ゾンビ巨獣を受け止めようという狙いである。


 三角ゾンビ巨獣はそんなものは気にしないとばかりに、網の向こうのマジカルナックルへと突撃してくる。


 三角ゾンビ巨獣を受け止めきることができるか?


 いや、それは問題ではない。


「マジカルパンチ!」


 三角ゾンビ巨獣がつる草の網に触れた瞬間。


 衝撃が走り、三角ゾンビ巨獣の全身が震え、そして突撃が止められた。


 さらに、網からつる草が巻き付いて行く。


「マジカル連続パンチ!」


 巻き付いた端から三角ゾンビ巨獣へと、打撃が放たれる。


 一度足を止めてしまった三角ゾンビ巨獣は次々増えていくつる草に全身を覆われていく。

 力が強くとも、数が多ければ簡単にはちぎれない。さらに支点・力点を抑えてしまえばなおさらだ。

 身動きが取れないまま、全身に魔法打撃が打ち込まれ続ける。


 そして、ついに動かなくなった。



「ヨシ!」


「や、野蛮すぎる……ッ」


「そんなあ……」



 勝利したマジカルナックルは、相棒たるエルエルヴィに厳しい評価をいただいたのだった。






 新緑の森を出発したマジカルナックルこと花車ヒスイとエルエルヴィは、森林の中を大雑把に南方へ向けて進んでいた。


 目的地は、はるか南の燃える山。轟炎竜の宮殿だ。


 しかし、道中にはいくつもの難関があるという。


 たとえば、新緑の森の南方、比較的近くにあった大樹海。

 魔物溢れる豊かな森は、人の手が入らぬままの姿を見せている。


 しかしここはエルフの案内があれば何の問題もない。


 森はエルフの味方である。迷うこともなければ生活に困ることもないだろう。


「エルエルヴィちゃんがいなかったら今頃野垂れ死んでいたわ」


「本当、ついてきてよかった」


 泊まりがけの野外活動など、学校行事とグランピングくらいしか経験がないヒスイである。


 独りで野宿前提の旅に出るなんてことはそもそも無謀な企てなのだった。



 さらに、ヒスイとしてはもっと急ぐつもりだった。

 しかしこれを諫めたのもエルエルヴィだ。


 ヒスイ、マジカルナックルは、新緑の精霊と轟炎竜によって魔法を使う素地を手に入れた。

 仮想敵は、轟炎竜すら気づかず操るような存在なのだ。

 轟炎竜ほどの戦闘力がなくとも、何らかのからめ手を使ってくることはわかっているのだ。


 ヒスイも魔法を身に付けて対応力を増しておくべき。

 そんなエルエルヴィの提案を受けて、ヒスイは魔法の練習を始めたのである。


 森を歩きながらなので新緑の精霊に由来する魔法の練習には適している。

 一方で、轟炎竜に由来する魔法の力の練習には不向きと言えた。


「念願の遠距離攻撃手段と思ったけど、まだまだ修行が足りないなあ」


 マジカルナックルの弱点として、四肢が届く範囲にしか魔法攻撃を行えないというものがあった。


 正確には自分の身体と、魔法少女衣装に接する対象に魔法打撃を与える。

 これしかできなかったのだ。

 身体能力の強化や、ダメージの衣服への転換はマジカルジュエルが自動でやってくれているので、マジカルナックルが使っているわけではない。


 それがこの度、左腕に宿る新緑の精霊の力でつる草を放出し、つる草に接した部分にも魔力打撃を発生させることができるようになったのだ!


「できるようになったのはつる草を伸ばすことですよねッ!」


「はい」


 腕から魔法のつる草を伸ばし、操れるようになった。

 魔力源は新緑の精霊に依存しないが、制御に新緑の精霊が力を貸してくれている。


 この魔法のつる草は、魔法少女衣装同様にマジカルナックルの身体判定として、魔法の起点とできたのだ。


 やっていることはほとんど変わってないが、一歩前進である。


「囲んでボコボコに殴るだけなんて野蛮すぎますねッ」


 しかしエルエルヴィちゃん先生は不満らしい。


「よいですかッ! 魔法は本来万能ですッ! 万能でないとすれば使い手の無能のせいなのですッ! まずはそれを頭によぉくですねッ!」

「わ、わかってるって」


 先生は同じことを繰り返し言うものだ。


「魔法は万能ですが、使い手に限界はありますッ! そこで様々な方法で簡単にしようと工夫されてきたのが魔法の歴史ですッ! ヒスイちゃんの場合は新緑の精霊と轟炎竜という概念が魔法の使用を助けてくれるでしょうッ!」


「それがなかなかむずかしく」


「新緑の概念は、植物。生命。成長。活力。他にも解釈次第で多くの力を手助けしてくれるはずですッ! 考えて、想起して、できると信じて、そこが出発点なのですッ!」


「解釈次第ってのがなんか雑だよね」


「魔法とはそういうものですッ!」


 魔法が何でもありということは、マジカルナックルとして活動してきた十年間で嫌というほど見てきた。

 しかし、自身に当てはめてみるとどうにも実感がついてこないのだ。


 つる草が伸びる姿を早回しで映した動画から意識してようやくできたのが、つる草を伸ばす魔法であった。

 逆に言えばその程度で一応は形になるくらいには魔法がいい加減なのか。

 いや、新緑の精霊の援護がそれだけ大きいのだろう。


「体を活性化させるとお肌がきれいになるので、植物を扱う魔法使いは皆……」


「OK、やってみる!」


 新緑の精霊よ、力を貸してください。

 ヒスイは精霊に願うのだった。


「それとマジカルパンチは名前を……」


 願うのだった!

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