表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女(24)の異世界転移  作者: ほすてふ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

012 眠れる轟炎竜

 ヒスイがこの世界で最初に目覚めた塔のすぐ脇にそれはいた。


 空気を震わせ、いびきをかいている。


 その体は眠っていようと巨大であり、そして纏う威圧感は対峙していた時よりもはるかに強い。

 支配から解放された轟炎竜はこれほどなのか。マジカルナックルはかつてない脅威度を全身で感じていた。


 この場にあるはずがないものがなければ、やっぱり帰ろうかと言い出していたかもしれない。




 轟炎竜の周囲には、まるで巣作りのようにマジカルナックルにとってなじみ深いトラックが配置され、そのうちの一台は轟炎竜の抱きまくらかのように前足の内側にあったのだ。




 マジカルナックルがこの塔を離れたとき、これらのトラックたちは、前面を地面に突っ込む形で直立していた。犬神家状態といえばわかりやすいだろうか。


 現在は、横になり、あおむけにされ、あるいはマジカルナックルがもっともよく見た状態であるタイヤを下にして、ドラゴンを囲うように配置されていた。

 一台は前足の中で別の一台は口元だが。


 体高二十メートルほどにみえる巨大なドラゴンに対し、トラックは高さ四メートル弱である。全長は十五メートルほどで、縦にしても轟炎竜の体高にも及ばない。

 マジカルナックルと猫人の子供の間以上に体格差がある。

 人と犬猫くらいだろうか。割と小さめの。


 このような構図は自然と生まれるわけがない。


 では一体何がこの光景を作り出したのか。


 そんなものはわかり切っていた。


 轟炎竜である。


 マジカルナックルの中で、強大で恐るべき伝説のドラゴンへの畏怖が相当量中和されてしまう光景だった。


 この光景から想像できる当時の様子はこうだ。


 飛び去ろうとした轟炎竜がふと見ると古く崩れかけた塔があり、その周辺にトラックが落ちていた。

 トラックを一目見て気に入った轟炎竜は、落ちていたトラックを集め、その真ん中で眠りについた。

 一台を抱きしめながら。



 なんだこれ。


 ドラゴンの感性などマジカルナックルには全くわからない。

 あえて想像するなら、ふわふわなクッションをたくさん用意してその中で眠ってみた、とかそんな情景か。

 あるいは猫の集会に飛び込んでみたとか。実際にやったら一斉に逃げられたが。


 あたたかいお布団に包まれて寝る、というのとは違うと思う。


 もっと恣意的な好悪による、あるいは偏執的なものを感じる。抱いて寝てるところとか。


 ドラゴンといえば巣には財宝の山というのがお約束である。

 金貨の山に剣とか宝箱が刺さっているような光景。あまたの物語でそうだった。

 西洋の伝説では宝に魅了された欲深いものが呪われてドラゴンになっていた。

 ドラゴンの欲深さの回答の一つか、大元の方かそれはともあれ。


 地球で受け入れられているドラゴンの印象に引っ張られるのはよくないだろうが、トラックを宝のように感じているのかもしれない、という考え方もできる。


 地球の特殊鋼とアルミ合金と、あとプラスチックやガラス、合成ゴムで構成された精緻な技術の塊の価値はこの世界である種の宝かもしれない。

 金ぴかではないが、銀色のかっこいい荷台とそれぞれ異なる色のキャビン、下から見ればいかにも工業製品という感じの黒。

 はたらくくるまの代表といえる身近な機能美の塊。


 でもなあ。


 マジカルナックルは別のことを連想してしまったのだ。


 それは主に海外で人気の、ドラゴンに関係するミーム。


 マジカルナックルはこう見えて大人である。

 変身を解けばこう見えてという枕も要らないくらい大人である。

 だからまあそういうことに理解はある。いや、語弊があるので言い直そう。理屈はわかる。


 とはいえ。

 “それ”に思い至ってしまったとたん、轟炎竜への畏敬が吹き飛んでしまった。


 思い過ごし、勘違いだとしても、そう感じてしまったらもうだめだ。


 ちょっと男子ぃ。


 そんな卑近さを覚えたのである。


 そうなると、この巨大な生き物はビル建設現場の重機のような感覚になった。

 実質は恐ろしく危険だが、適切に扱えば大丈夫そうな。


 ドラゴンの適切な扱いなんてわからないが。


 ただなんとなく、大丈夫じゃないかなという気持ちがわいてきたのだった。



「あれを見に行ってみようか」


 トラックを指さすとエルエルヴィがマジかという顔をする。


 トラックは轟炎竜に接するほど近くにあるのだ。


「あれは私と同じ世界から来たものだと思うんだけど」


「それは調べてみたほうがよさそうですね……ッ」


 どうせ塔に向かうには近くを通らなければならない。

 通りすがりに見るだけだ、ということで、マジカルナックルを前にして二人は進んだ。


 まず朗報だがガソリンの匂いがしない。

 もともと抜かれていたのだろうか。

 あるいは幸運にもタンクや供給路が破損しなかったのか。全部が?

 数十メートル落下したにしては壊れていないように見える。

 ヒスイが目覚めた高さから落ちれば、頑丈なトラックでもフロントガラスが割れたり車体がひん曲がったりしそうなものだ。

 初めから犬神家状態で出現した?


 よじ登って運転席の中を覗いてみる。

 見たはいいが異変があるかはわからなかった。トラックの運転席なんて初めて見るのだ。

 外から見た部分より狭いような気がしたがそのくらいだ。


「なにかわかる?」


「なんらかの魔力は感じますッ。ただ、じっくり調べないとちょっとッ」


「いびきがうるさいしね。じゃあ予定通り、先に塔に行こうか」


 トラックに魔力があるというのはかなり想定外の発見だが、環境が悪かった。

 轟炎竜がいる横でゆっくり調査はエルエルヴィにとって負担だろう。

 一旦トラックから離れ、塔に向かうことにしたのだった。

面白かった、続きが気になると思ったら、いいねと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ