001 決戦
新作です。
よろしくおねがいします。
今日は2話投稿します。
高層ビルが立ち並ぶこの国の首都。
人類の技術の粋を集めて建てられたそれらの建築物より高い空の上で、鮮やかにきらめく輝きが、昏く暗い深淵とぶつかり合っていた。
愛と、希望と、夢と、勇気の光が、絶望の闇の力とぶつかり合う最終決戦。
闇の力は今までになく膨れ上がり、世界を覆わんとしている。
しかし、今期の魔法少女たちもまた、闇と戦い続け、絆の力で強くなってきた。
拮抗する二つの力の余波が世界を震わせる。
そんな激しい戦いのさなか、地上を高速で動くものがいた。
「うわぁぁぁ―――――――――!」
ビルが崩れ、巨大なコンクリートの塊が人々の上に落ちていく。人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
「マジカル――乱打!!!!!!」
コンクリート塊に無数の拳がたたきこまれると、その大質量は砕けながら人がいない場所へと押しのけられていく。
「逃げてください! ここは危ないです!」
「すげえ! 魔法少女だ!」
「写真撮らなきゃ!」
ベテランの魔法少女マジカルナックル。
人々を助けた彼女の願いは聞き届けられない。
つい先ほど命の危険を感じて逃げ惑っていた人々は、興奮した様子で携帯端末のカメラを構えていた。
それを見た魔法少女は悔しそうな、悲しそうな表情を一瞬だけ浮かべた。
上空の戦いに参加できず、被害の拡大を水際で防ぐ。それだけしかできないマジカルナックルは、説得をあきらめて移動を再開する。
戦いの余波で出る被害を抑えるために。説得に時間を割いていては、他で被害が出てしまう。自身が去れば、写真を撮ろうとする人たちにも残る理由がなくなるだろうと。
戦況を見ながら被害予測地点に先回りして、戦いの余波を打ち払う。
魔力を体の外に出すことがいまだにできないマジカルナックルは空も飛べないし有効な遠距離攻撃もできないのだ。
さらには一年近く戦い抜いた今期の魔法少女たちとは世代が違う、十年物のロートルだ。
下手に手を出すと足を引っ張ることになる。
現役の時からやっていることは変わらない。
魔法少女の落ちこぼれ。
しかし。それでも。
できることを、少しでも。
愛と希望と夢と勇気の力がマジカルナックルの中にある限り、何もしないという選択肢はないのだ。
長い戦いも佳境となり、土埃の中を駆け回るマジカルナックルも疲労を感じてきたころに、ついに絶望の闇が追い込まれ。
無差別に闇の光線による攻撃をばらまき始めた。
「! あぶない!!!」
その多くは上空で戦っている魔法少女たちが防いだが、幾筋かの光線が人々に向かう。
マジカルナックルはそのうち最も太い光線の前に飛び込んで、全力の攻撃をぶつける。
「マジ! カル! パァーーーーーーーーンチ!」
見事闇の光線は引き裂かれ……なかった。
マジカルナックルは魔力を体の外に出すことができない。
全力の攻撃は闇の威力を弱めたものの、充分な威力をもってマジカルナックルに襲い掛かった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」
絶叫。
マジカルナックルは激しい痛みをこらえ、意思を萎えさせないために声を振り絞る。
マジカルナックルは一定以上の威力を持った魔法攻撃に対して体で受け止めるほかに対抗手段を持っていないのだ。
ただただ体に込められた魔力をもって耐えるマジカルナックル。
最終決戦の絶望の闇、とはいえこれは余波に過ぎない。
そんなものに負けるものか。
痛いだけ。
耐えられる。
すぐに今期の主役たちが、勝負を決めてくれるだろう。
魔法少女の後ろには、
「がんばって!」
愛すべきものがある。
誰かの応援が聞こえた。子供の声か。
マジカルナックルは一歩前に踏み出した。負けないことを自分と、応援してくれた誰かに示すために。
だがそこに、上空から質量物が降ってくる。
「危ない!魔法少女さん!」
誰かの声が聞こえるが、マジカルナックルは動く余裕がなかった。
幸いと言うべきか。
魔法少女は物理的な力に対しては非常に強力な防御力をもつ。これはマジカルナックル個人ではなく、魔法少女としての、変身アイテムの力と言ってよい。魔力を外に出せないマジカルナックルも、ビル数階分の質量の下敷きになるくらいであれば無事に耐えられる。
だが、落ちてきたのは鉄筋コンクリートの塊ではなかった。
海上にあった大量の輸出用トラックを積み込んだ輸送船だったのだ。
雨あられと降り注ぐトラックととどめの輸送船に阻まれ、周辺を巻き込み爆発する絶望の闇の力。
その日、ベテラン魔法少女マジカルナックルは、無数のトラックとともにこの世界から姿を消したのである。
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