記録開始
初心者素人です。温かい目で読んでやってください
某日、ロック刑務所にて。この刑務所には、世界各国の極悪人のみが収容される。強盗、放火、殺人などすべての罪人を集めれば犯していない罪はないだろう。特にロック刑務所最奥『零号』には、死罪人のみが集められている。そこは、いくら極悪人といえど委縮し、子犬のように震えてしまうほど恐ろしい場所として有名である。
乾いた足音がやむと、「ガシャン!」と強い金属音がなり、扉が開く。
「三百五十八番、起きろ」
看守から呼び出される。貴方はここで『三百五十八番』と呼ばれ、死罪人として管理されている。
「朝礼を始める」
広間に呼び出されると、毎朝恒例の朝礼が始まる。ここでは罪人の健康管理だけでなく、点呼を取ることで脱獄者がいないか確認もしている。
少し隣を見れば、裏社会に名をはせたギャングのボス、社会的大混乱を引き起こした殺人鬼や大泥棒といった極悪人が大勢いる。全員目を光らせ、互いを睨みつけている。
「それでは、刑務作業に移れ!」
朝礼が終わった後、全体は刑務作業に入る。貴方は持ち場につき、作業を始める。
「今日は出ないといいな」
隣で作業をしている唯一の友人マクスウェルが話しかけてきた。彼は貴方と同じ牢の中で生活をしており、互いを助け合っている。
「縁起でもないことを言うな。皆、『アレ』には懲りたはずだ」
「いいや、悪人どもはあんなもんじゃ怯まねぇよ…。ここにいる奴の大半はギャングかマフィアだぞ?今もどこかで機会を…」
[newpage]雑談をしていた中、隣を通りがかった看守がこちらを睨む。
「三百五十七番!私語は慎め!」
看守がマクスウェルを怒鳴りつけた。その後看守が去ってから彼はバツが悪そうな顔をしながら小声でヒソヒソと話しかけてきた。
「特に今怖いのはアイツさ」
マクスウェルが指をさしたのは、遠くで別の刑務作業をする黒髪の大男だった。
「ザラキ、アイツの噂は絶えないぜ。元ギャングのボスって噂もあれば、元々貴族だった奴が国家を転覆させようとして捕まったっていう噂もあるぜ」
「しかし、どうしてアイツがそうも噂されるんだ?」
ザラキはほかの罪人と異なり、特段変な様子はない。というか、面識がないので何とも言えない。
視線に気が付いたのか、彼がこちらを睨む。貴方とマクスウェルはすぐに目をそらし、作業を真面目にするフリをする。
「それがな、アイツの周りにいる罪人どもは不吉なことしか起こらない。中には泡を吹いて倒れたやつだっているらしい」
「偶然だろ」
貴方は鼻で笑った。マクスウェルは作業を進めていた貴方の手を叩き、「やめろ!」と言わんばかりの怒りを示す。
「いいや、俺は見ちまったんだ。アイツが『アレ』を見たとき、笑っていた所をな…」
マクスウェルの顔色が少しずつ青ざめていく。
「思い出すだけで恐ろしいやつだぜ。目の前であんなことを見ておいて尚…」
「狂っていたんじゃないのか?」
「違うね、恐ろしすぎてはっきりと覚えている。あの悪魔みたいな笑みは狂乱なんかじゃない…」
「…そうか」
「そういえば、お前はまだ何も思い出せないのか?」
マクスウェルが急に話題を変えてきた。きっとあの時のことを思い出して耐えきれなかったのだろう。
「何もな」
「変な話だよな。自分の罪状を覚えていなければ、執行される日もわからないなんてよ」
その時、突如として刑務所全体に鐘の音が鳴り響いた。それまで真顔で作業していた罪人の顔色が一気に変わりだす。
『囚人は持ち場を動かないこと!零号と出口は封鎖し、看守は武器を持ったら持ち場につくこと!』
(あぁ、それでも出たか…)
全体にアナウンスが鳴った。脱獄者が出たのだ。刑務作業は一時中断された。しばらくして、騒ぎが完全に静まると、貴方たちは牢屋へと戻された。結果はわかっている。誰もこんな監獄からは出られるはずがないのだ。
その日の夜、やはり罪人たちは全員広間へと呼びだされた。みんな、下をうつむいている。誰もがなんとなく内容を悟っていたのだ。
「さて、今朝お前たちの中から脱獄者が出た。そこで、これを見てもらう」
ワゴンに被されていた布がとられると、そこにはハチの巣にされていた死体があった。
「あれ…ジョンじゃねぇか」
多数の罪人たちがひるみ、鼻をつんざく腐敗臭が充満し、意識をくらくらとさせる。
無理もない。ジョンは暴れ人と称されるほど気性が荒く、よく看守に反抗し血まみれにさせて謹慎をくらい続けていたのでその恐ろしさは零号随一である。
「そうだった。お前たちがコレを見るのは二度目だったな」
そう、我々が指していた『アレ』とは、脱獄を試みたものの凄惨な死体である。このロック刑務所において脱獄を試みたものは例外なく死刑が即刻執行されてしまう。
「刑期が早まっただけだ。別に、問題はなかろう?」
「フフン」と鼻を鳴らし、看守は罪人たちを見下ろす。
「とはいえ、前にも一度見せてこのザマだ。まだマヌケなことを目論む者もいるかもしれない。そこでだ」
何かをひらめいた看守がサーベルを持ってくると、罪人の腹へと突き刺した。すると広間全体に声にならない金切り声が響く。死体が少し動いた後、完全に静止する。
「おっと、生きていたのか。まぁいい…」
看守の発言に、全員が恐怖を抱く。
「なっ、何をしているんだ!」
ある罪人が声を上げると、看守は不敵な笑みを浮かべ、サーベルをさらにねじ込む。
「こいつの臓物をほじくりかえし、お前たちに拝ませてやろう」
そこからは地獄のような時間だった。残酷な看守は出てきた内臓を潰し遊んだ。女の罪人が泣き出すと、そいつにむかって内臓を解剖して見せた。男の罪人でさえ吐いて失神した者も出た。
死体の最期の声があなたの頭の中で響き、意識をむしばむ。貴方は強い精神力でこの時間を耐えた。どれほど経ったのかわからなくなった頃、別の看守が止めに入った。
「スティーブン看守、そのあたりにしましょう。囚人たちもこれほどのものを見せられては気力も保てまい。それに、いくら死刑囚とはいえ亡骸で遊ぶというのは神々の怒りを買う行為にもなりうる」
少しの沈黙の後、先ほどまで楽しそうな顔をしていた看守はいつもの冷静な顔に戻った。
「それもそうか。全員牢屋に戻れ」
貴方は気を失って倒れたマクスウェルを抱きかかえ、牢屋へと戻った。
「はぁ、とんでもないものを見せられた」
大きなため息をつくと、貴方は近くにあったベッドに腰を掛け頭を抱えた。耐えたからといって、ダメージはゼロではない。
(スティーブン看守、相当不満がたまっていたのだろう。残忍な性格だとしても、あれほどのことを涼しい顔でやるのは不可能だ)
貴方は諦めて布団の中に入り目を閉じるが、ジョンの最期の金切り声が頭から離れない。
(ある程度の残虐性を持ち合わせているとはいえ、あそこまでいくと何者かに操られているような感覚を覚えるな…)
なかなか寝付けはしなかったが、睡魔はやはり強力だ。目を閉じればいつだって貴方を夢の世界へといざなう。
「ここは?」
夢は暗闇に満ちていた。貴方はそこに一人立っている。なかなかに不吉な夢だ。どこを見回しても、何もない。
だが、そこに急にぼわっと炎の球が現れた。それはほんのりと温かく、ぽわぽわと浮かびながら貴方を導こうとしている。少し迷ったが、貴方はその導きに従うことにした。
「こいつは、どこへ…?」
かなり走ってはいるが、一向に景色は変化する兆しを持たない。
しばらくして、目の前に一抹の光が見えた。近づくとそれは焚火であることを視認できた。
「来たか」
声のする後ろを振り向くと、奇妙だ。貴方は先ほど、この方向から来たはずなのにそこにはさっきまでいなかった小柄な男がいた。
「時間がない。手短に話すぞ」
男は真顔で淡々とした声で貴方に話しかけてきた。
「ちょっとまて、お前はいったい誰なんだ」
「それは重要なことではない。俺の幻術が切れる前にすべてを伝える」
男は目の前から急に消えると、別の場所にまた現れる。
「世界は今、お前を必要としている」
「は?急に何なんだよ」
(幻術だの世界だの、よくもわからないことを言いやがって)
「信じがたいと思うが、事実だ。間違いなく世界はお前を必要としている」
「意味わからねぇよ、何の具体性もない説明しかされてないし」
「そうだな…では信じてもらえるように言葉を残そう」
一事が一呼吸すると、火とともに消えた。
「明日、一人の罪人がお前たちのところに来るはずだ」
貴方は目覚めると、朝礼のために看守が起こしに来る足音が聞こえる。窓を見るとまだあまり日は出ていない。妙だ、朝礼にしてはあまりにも早い時刻だった。
全員が広間に呼ばれると、看守がガサゴソし始めた。
「今日は新しくここに来る囚人を紹介する。来い、四百七十一番」
その一言で、罪人たちもざわつき始める。
奥から来たのは、張り付けられたかのような笑みをしている金髪の青年だった。
「ザックと呼んでくれ」
貴方は背中にぎょっとした感覚を味わった。奇妙な青年はそれだけ言って看守に連行された。その後、我々はすぐに刑務作業に取り掛かった。
新しく入ってきた罪人は珍しくすぐに罪人たちの噂になった。
「あの新人、何をやってきたんだろうな…」
作業中の罪人が口をこぼす。やはり最初に噂されるのはそこだろう。ここ零号は死罪人しかやってこないので、どんな重刑を犯したのかみんな気になるのだ。もちろん、それは貴方も例外ではなかった。口にこそ出さないが、あの奇妙な雰囲気について違和感を覚えずにはいられなかった。
そんなことより気になるのは夢で見たあの男の発言だ。確かに、あの男の予言は当たった。だが、偶然という線も捨てきれはしない。幻術だの世界だのを信じるのは不十分だ。
「やぁ、初めまして。刑務作業は精が出るね」
貴方はすぐさま身構えた。ザックが奇妙な笑みで手を振りながら近づき、貴方に話しかけてきた。
(厄介な奴を相手にしている場合じゃない)
貴方はザックを無視し、作業を続けようとする。すると彼はその手をつかんだ。
「おっと、無視はいただけないんはないのかな?きっと俺たちはいい友人になれるはずだ」
「…何の用だよ」
「さっきも言ったはずさ、俺はきっと君といい相手になれるはずだ。そうだろう?」
「おいそこ!私語は慎め!」
貴方がうんざりしていると我々の会話に看守が横やりに入ってきた。正直、めんどうなやつを追い払ってほしかったのでありがたい横やりである。
だが、ザックは看守からの忠告を聞いてもその場を離れようとしなかった。
「いや、別にいいでしょう。刑務作業は終わらせたんだ」
「ほかの受刑者の作業を邪魔するな。それに、ロック刑務所のルールを忘れたとは言わせんぞ、守らなければ独房行きにする」
彼の態度に納得のいかない看守はある言葉を口にする。『独房』それはここにいる罪人全員が忌み嫌うものだ。しかし、ザックはその言葉を聞いて尚、怯えなかった。逆に彼は笑みを浮かべながら看守に近づく。
「止まれ!さもなくば撃つぞ!」
ついにしびれを切らした看守がピストルを抜くと、周囲で作業していた罪人たちの手が止まる。ピリピリとした空気が続き、互いが静止した後、最初に口火を切ったのはザックだった。
「クククク…」
ザックはそのまま看守の頭に触れると、すぐさま離した。その後、看守はまるで人が変わったかのように何も言わず黙ってその場を去った。
「さぁ、話の続きをしよう」
「おい!お前看守に何をやった!」
「そんなことはどうだっていいんだ。さぁ…」
ザックがあなたに近づこうとしたとき、看守から刑務作業終了の合図が出されると彼は小さく舌打ちをした。そして牢屋に戻ろうとする直前、彼は執拗にあなたのそばに近づき
「もし外部と連絡が取れるなら、そのチャンスを逃さないほうがいいよ」
と、耳打ちをしてきた。
「!?」
「それじゃあ…」
それだけを残して彼は牢屋へと戻った。
その後、牢屋へ戻った貴方は刑務作業を休んでいたマクスウェルと夢のことやザックのことについてすべて伝えた。
「うーん、それだけで話を信じるには無理がないか?」
「とはいえ、実際に新しい囚人は来たんだ。たまたまで終わらせるには惜しい」
「それ、予知夢だったりするんじゃないのか?それも信じがたくはあるが…」
「予知夢ならなぜ協力を求める必要があったんだ?とても偶然とは思えないんだ」
「なるほどなぁ」
「それに、新しく来た罪人が耳打ちをしてきたんだ。まるでこのことを知っているみたいに…」
「確かに、そこが一番の謎だな。新しく入ってきたのにこちらの情報を知っているとは到底考えられない」
マクスウェルも新しく入ってきた罪人に懐疑的になっていく。
「つってもよ、お前がどうするかなんてこの話を始める前に結論が付いているんだろ?」
「…まぁな」
「このまま死刑を待っているわけにもいかないと思うんだ」
信じていないと思っていたが、実際には違った。あの夢を見たときから貴方は一抹の希望を見出していた。外で自由に動けるような未来。その一方で、そんな簡単に甘い話を信じてしまう自分を受け入れたくなかった。
(そんなに言うなら、やってやるよ…)
今回の夢は近くで焚火がともっていた。
「来たか…」
焚火の近くで謎の男は立ち上がる。
「乗るよ、お前の話」
「昨日と比べて随分と考えが変わったな」
(うげ、中々痛いところを突いてくるな)
「…まぁ、このまま死ぬのを待つのは退屈だと思っただけだ。特に深い意味もないよ」
「そうか、その気持ちを忘れるな。それは、俺たちが生き続ける理由となる」
貴方は固唾を飲んだ。
「では、どのようにしてお前を脱獄させるか。その手はずを教える」
次の日の朝、いつもとは違って今日は自由時間が与えられる。貴方はマクスウェルと脱獄の方法について話し合っている。
「ってことは、今夜が最高のチャンスってわけか…」
「あの男の言葉が正しければそうなるな」
昨日の夜、あの男は貴方にこう伝えた。
「まずは明日、広場の排水溝に牢屋の鍵を置いている。そいつを昼までに回収しろ」
「出られたとしても看守はどうする、巡回をかいくぐることは不可能だぞ」
マクスウェルが質問を投げかけた。
「あの男は、確かに『俺の幻術で看守を眠らせる』と言っていた。そこは考えなくてもよさそうだ。それに零号には看守用休憩室があるらしいからそこで制服さえとってしまえばあとはトントン」
「にわかには信じがたいな。この世に幻術があるだなんて」
「今はそれを信じるしかない」
「藁にでもすがる気分だな」
そして貴方たちは目的である広場の排水溝に到着すると看守にばれないように交代交代で鍵を探った。
「あった!」
貴方は排水溝の中にあった錆びた鍵を発見した。
「本島に鍵があったってことは…間違いないな」
これでただの偶然ではなかったことが証明された。残りの行動はすべて夜に行うものなので夜になるのを待つのみである。
時間が近づくにつれ、二人の中で緊張が走る。今夜、成功するか失敗するかで貴方の人生が決まると思うとどう転ぶのか怖くなってきた。
(成功するといいのだが…)
「自由時間終了だ。各自牢屋へ戻れ」
看守の合図が全体へ響き、牢屋へ戻る。
しばらくして夜も更け、出発の時刻が近づく。
「出発はいつになるんだ?」
マクスウェルが口火を切った。
「…そろそろだな」
「思えば長かったな」
「なんだよ今更」
「いや…別に」
マクスウェルは頬を人差し指でかいた。
「頼むぜ、あんなふうに再会はしたくないからよ」
「…おう」
ここを出れば、壮大な脱獄劇が始まってしまう。貴方は勇気と覚悟を決め錆びた鍵を使って牢屋のカギを開けた。
作者は一話を面白くないと思っています。面白くなる話はこの先にあるので何とか耐えてください。




