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04話 とある少女の昔話。

これは、とある少女のお話。

────────────────

 少女は狐の獣人とうさぎの獣人から産まれました。

 

 狐の獣人である父の髪は紅色、うさぎの獣人である母の髪は茶色。そして、その娘である少女の髪は全体的に茶色で、紅色のメッシュが入っていました。

 少女は、大好きな父と母の色が入ったこの髪をたいそう気に入っておりました。


 しかし、そんな髪は数年後に自分を苦しめる元凶となってしまうのです。


 幸せな家庭が壊れてしまったのは、少女の10歳の誕生日である6月2日。


 この日の夜、父の帰りが遅く、両親が喧嘩をしてしまいました。

 父の帰りが遅かったのは今回が初めてではありません。昨日も、一昨日も、少女は考えました。毎日父の帰りが遅いのはきっと"父が仕事を頑張っている"からなのだと。

 だから、寂しくても我慢しなければならないのだと

 仕事を頑張っている父の邪魔にならないために。

 

 しかし母は違いました。父が毎晩日付を超えてから帰ってくる理由。それは、母とは違う"女性の獣人の匂いを、母にバレないようにするため"なのだと。


 少女は母の考えていることを理解できませんでした。

 大人になれば理解出来るかもしれない!少女はそう思い、誕生日を待ちわびていました。


 6月2日。少女は誕生日を迎え、10歳になりました。

 朝から母とケーキを作り、晩御飯は大好きな母の手料理。その後プレゼントを貰い、あと少女に足りないのは、いつも遅くに帰ってくる父だけです。

 少女はせめて、父からの"お誕生日おめでとう"だけでも貰おうと、母を説得し父が帰ってくるまで頑張って起きていました。

 数時間が経ち玄関の扉が開きます。少女は父に駆け寄り、抱きつきました。そして、目を輝かせ父の方を見ます。


 父は、少女が期待していた言葉を言わず


 "なぜこんな時間まで起きているのか、早く寝なさい"


 と、それだけを少女に言い放ち、自室に向かいました。


 父は少女の誕生日すら覚えていなかったのです。


 少女はとても悲しみ、泣き疲れてそのまま眠りにつきました。


 


 後日、少女が目を覚まして最初に見たのは、荒れた部屋と泣き崩れている母の姿だけでした。

 父に助けを求めようと、父の自室の扉を開きます。

 しかしそこには父の姿はなく、空になったクローゼットしかありませんでした。


 


 父と母が離れ離れになって1年が経った頃、娘は母と共に暮らしていました。そうしなければ"母が何をするかわからなかったから"です。

 母は父が居なくなってからおかしくなってしまいました。

 母はただ、謝って欲しかっただけなのです。

 娘の誕生日を忘れていたことを、知らない女性と会っていたことを、毎日おやすみも言えない時間に帰ってくることを。

 しかしそうはいかなかった結果が今の状況です。

 母は自分を見捨てた父を恨みました、それと同時に父と同じ髪色をした娘が憎くて仕方なかったのです。

 

 恨んでいる相手との子が目の前にいる。


 それだけの理由で母は、少女を理不尽に叱り、無視し、最終的には商人に売ろうと考えました。


 母は少女が寝ている間に商人を呼び、手続きをし、少女が商人の手に渡ろうとした頃、少女の目が覚めました。

 少女は嫌がります。暴れ、泣き、助けを求めて母を見ます。したし、母は心底スッキリした表情をしていました。その瞬間少女は理解するのです。

 今まで母のためにしてきたことは無駄だったのだと、耐えてきた苦しい日々は無意味だったのだと。


 もう全てがどうでも良く思いました。

 誇りに思っていた父も、優しかった母も、もういないのですから。

 

 少女が意識を手放そうとした頃声が聞こえました。


 


 『おい、貴様。その子に何をしている。』


 


天使です。

昨日、道に迷っていたところを助けただけの。

 ───────────────────

 天使は、少女が怪我をしてしまったところを魔法で直し、豪華な食事を作り、ボロボロの服を直したり素敵な服を作るための裁縫と魔術を教えてくれたりもしました。

 しかしそれだけではありません。鏡を見る度に嫌な気持ちが込み上げてくる髪は天使が1番好きだという灰色に変えてくれたのです。

 その瞬間、少女の生きがいはこの天使になりました。


 少女の生きがいである天使の名は、イロウエル。

 少女の名はアジュガ。


 これがアジュガの過去であり、

 イロウエルがアジュガを、アジュガがイロウエルを、溺愛する理由である。

 ─────────────────


 『────ということだ。』


 なるほど…


 「アジュガちゃんとイロウエルさんにそんな過去が……」


 アジュガちゃんの両親ほどでは無いが、俺の父も結構めんどくさいので共感できる。


 採寸が終わり、俺たちはアジュガさんの元に戻る。


 『アジュガー、採寸終わったぞー』


 『ありがとうシーレくん。』


 もうどんな服にするかは決めているらしく、後は形にするだけらしい。

───────────────

 数時間後、服を持ったアジュガちゃんが俺たちの元に戻ってきた。


 『これ、できたから着てみて。』


 返事をする間もなく俺は服を渡され、個室に押し込まれた。


 アジュガちゃんは事前にどんな服がいいか希望を聞いているらしく、他の4人の服もアジュガちゃんが作ったらしい。

 俺の希望は〈動きやすくて、似合いそうなやつ〉なのだが、どんな見た目になったのだろう?




 着てみたはいいものの……なんだろう、男子高校生が着るには少し勇気がいる服だな…何を言ってるか分からない人に説明しよう!俺の今着ているのは、黒の少しハイネックなノースリーブみたいな服に黒の短パン、そしてまさかの白ニーハイだ…


 『おい、カドル?まだ着替えてんのかよ?』


 シーレに扉をノックされる。机に座るくせにこういう所は行儀いいよな……


 「いや、着替えは終わってるけど…」


 この服で外に出る勇気がまだでしてね、、てか!この格好絶対寒いよね!?上着とかないの!?


 『おっ、似合ってんじゃん』

 

 扉開ける時言ってくれぇぇ……ノックはしてくれたけれども、、


 『これ、アジュガがカドルに渡し忘れてたってよ』


 シーレが差し出したのは、でかいパーカーのようなもの


 「……もしかして上着か!!?」


 『うわっ、急におっきい声出すんじゃねぇよ。それ着て皆んとこ戻るぞ』


 俺はシーレから渡された上着を広げて見てみる。

 結構ダボッとしていて、フードが付いている。ベースの色が白でところどころ赤色が使われてて、今着ている黒色がベースの服の相性が良さそうだ。


「アジュガちゃん凄……けど、」


 やっぱりニーハイはハードル高いって!!!

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