第2話:誰にも触れない心
学校なんて面倒くさい。
授業でやってる事なんてとっくに自分で勉強した。
小さい頃から親は勉強だけを叩き込んできた。
代々医者の家系で、親父も兄も医者。だから俺にも「立派な医者になれ」と命じてきていた。
だけど俺は親に引かれたレールに乗って走るのはゴメンだった。
勉強自体が嫌いな訳じゃない。
知らない事を覚えるのは楽しかった。
だから成績は良かった。中学時代は常に学年でもトップ3。
反面悪い奴らともつるんで親に小さな抵抗もした。
そうしたら親は俺を家から追い出した。
実にあっさりしたものだった。
世間体とか言ってそれなりの高校には行かせてくれたが、家の敷居は跨ぐなと言って俺を一人暮らしさせた。
大人は勉強のできる俺を認めるだけで、誰も俺自身を認めない。
教師も同じだ。
成績の良ければいい顔をし、成績が落ちた途端に見捨てる。
そんな中で優等生面するのも馬鹿馬鹿しい。
クラスメイトなんてのもそもそも興味ない。
バカみたいにはしゃいで遊びに行く話ばかり。
俺はそんな奴らとつるむ気はない。
自分の成績だけ上げて親が行かせてくれるだろう医大に行く。
そして医者になった後に親に言ってやるんだ。
「あんた達が見放したドラ息子でも医者になれたぞ」と。
だから俺はいつも休み時間になると屋上にいる。
うるさいクラスの奴らの声を聞きたくない。
ここにいれば1人の時間になれる。
鳥の鳴く声や風の音を聞きながら、1人のんびりしている方が気楽だ。
「ねえ、君?」
いつも通り俺の特等席でのんびりスマホをいじっていた時、突如後ろから声をかけられた。
普段ここに俺がいても声をかける奴なんていないから思わず体が震える。
だけど無視だ。今俺は自分の邪魔をされたくない。
「ちょっと聞いてる?
君の事だよ」
無視していたのにもう一度声をかけられる。
せっかくの俺の時間を邪魔するやつは誰だ、俺は仕方なく振り向いた。
そこに立っていたのは長い髪を結んだ女の子。
背はそこそこ高く、夏に焼けた肌が健康的だ。
キラキラした瞳がなんともまぶしい。
恐らく可愛い部類に入るだろう、普通の男なら。
だけど俺には関係ない。
「何?
俺に用?」
仕方なく俺は返事する。関わる気はないが無視もできない。
「ねえ、あなた
前にラブレター貰わなかった?」
変な事を言ってくる。そんな記憶はない。
「そんなもの貰った覚えない
人違いじゃないか?」
「嘘。
あなた前に小柄な女の子から手紙もらったでしょ?
彼女に返事聞いてきてくれって言われてるのよ」
頭の中にある記憶の糸を少しずつ解いていく。
夏休み前、登校中に後ろから手紙を渡してきた女の子のことだ。
思い出すと確かにそんな事があった。
「そういやなんか貰った気がするな……」
彼女の顔が綻ぶ。俺は興味ないが思い出したのは事実だ。
「それで返事は?」
「悪いけど読んですらいない」
貰った手紙は早々にゴミ箱行きだった。
「はあ!?
読んでないってどういう事よ!?」
「……貰ってすぐに捨てた」
そう言うと彼女はいよいよもって顔を赤くして怒り出した。
怒るのも無理はない。だが、俺にはまったく関係ない。
「あなた人から手紙を貰っておいてそれは何よ!?
彼女がどんな思いであなたに手紙渡したと思ってるのよ!?」
「あのさ……悪いけどその彼女に言っておいてくれ
俺はそう言う事に本当に興味ない」
もうここにいても休めないだろう。
仕方なく立ち上がると俺は彼女の横をすり抜けようとする。だが彼女が腕を掴む。
「ちょっと待って!
せめて彼女に謝るとかないの!?」
「ない」
俺は即答した。
1%ぐらいは悪いと思うが、それ以外は興味ない。
唖然とした彼女の手を振り解き、俺は屋上から校舎の中に戻る。
あれだけハッキリ言えば彼女とは二度と関わらないだろうと思っていた。
だが、まさかこれが俺の学校生活を大きく変えるきっかけになるとは——この時はまだ想像すらしていなかった。
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