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トラウキネシーズ  作者: 不透明 白


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3/18

 〈3〉 忍法、人海戦術!

 ただ時間を浪費するだけのようなそんな日々が何日か続いた。

 影山なる人間を調べる案はいくつか出たが、どれも現実的ではなかった。

 無限にある選択肢の中から頭をひねって考えても、結局希望的観察にしかならない案が出ては積もるばかりのこの現状にうんざりしていた。

 こんなちまちましたことをするのは、ワタシらしくない。

 裸一貫この身一つで飛び込んで、そして、頭のおかしいふりをして聞くのだ。


 「初めまして。そして、初めましてで申し訳ないが、聞かせてもらいたい。あなたは超能力を使える人間をご存知かい?」と。


 方針が固まったら後は、行動に移すのみ。

 ということで、煩わしい情報収集を全放棄して、ワタシらしく、強引な正面突破として直接会うことにした。

 とはいえ、相手は不登校の生徒である。

 いくら学校で待ち構えていたとしても一向に会えない。なので、最終的には影山の自宅を目指すことになるのだが、当然、現状として住所も知らなければ、そのヒントとなるはずの交友関係についても何一つ知らなかった。

 とりあえず、模索できる方法としては二つ。


・影山の住所を知っている知り合いや友達を探す。

・能力を使って家の表札を片っ端から確認する。


 この二択である。

 結局どっちを選んだとしても、一筋縄ではいかなそうだが、何もせず考え立ち止まっているよりはマシだろう。

 ということで、失敗したとしても一番情報が得られそうな前者の案、『知り合いや友達を探す』ことから始めるか。いや、でも……。

 うーん、ずっと悩んでいても埒が明かない。というか集中の緒が切れた。

 なので、今日はもう考えるのを止めてさっさと家に帰ろう。

 明日のことは明日のワタシに任せるに限るというやつだ。

 頑張れ、明日のワタシ。


 ―――………


 一日経って、翌日。

 授業も一通り終わって、各々が教室から出ていくのを見届ける。

 昨日の自分が考えた二つの作戦の一つ、前者の案を実行するならば今のタイミングで話しかけるのが定石だろう。

 だが、一晩よく考えたら、もっといい方法があることに気付いてしまったので、作戦変更である。

 というのも、見ず知らずの生徒に話しかけるのではなく、影山が在籍するクラスの担任の先生に話を聞くのが一番早いんじゃないかとワタシは考えたのだ。

 その上で知っている情報としてまず、影山は隣のクラスの人間であり、担任の先生は富樫(とがし)という数学教師であること。

 富樫先生はワタシのクラスでも数学の授業を担当していて、印象としては若くてさわやかな男の人という感じ。多分女子人気も高い。

 人当たりもいいので、もしかしたら掛け合ってくれるかもしれないという勝手な希望を抱いている。

 ということで早速、先生のいる職員室へと向かうことにする。


 ――コンコン。

「失礼します、一年一組の全世界です、富樫先生に用があって来ました」

 扉を開けて中を観察する。

 まだ清掃の時間が終わっていないので、ぽつぽつと先生が座っている中、一番端の机――その一番奥の椅子にその人は座っていた。

 富樫先生はこちらに気がつくと、軽やかな足取りで職員室の入り口まで歩いてくる。

「全世界君、どうしたの?」

 前髪を軽く分けた髪形に、整った塩顔、すらっとした立ち姿。こりゃあモテるねと自分勝手に納得する。

「ちょっと、影山君のことで話したいことがあるのですが……」

 そう言うと、少しではあるが先生の眉が八の字に曲がった気がした。

「うーんと、そうだね……じゃあ全世界君、この後時間あるかい?」

「はい」

「じゃあ、十分後に一階の生徒指導室へと来てくれるかな?」

「分かりました、では失礼します」

 ガラガラガラ、コトン。

 これでまず、第一関門は突破したということで間違いないだろう。土俵に上がってきてくれたので後は手を尽くすのみである。

 そして、自分の願望を相手に通すには、しっかりとした理由とそれっぽい動機が必要不可欠。

 なので生徒指導室に向かうまでのこの間、しっかりとイメージトレーニングを怠らないのがワタシである。

 ……その歩速がゆっくりなのは、その、えーっと……多分、気のせいだろう。


 ―――………


 来た時に暑苦しい教室だと、話したい事が詰まったり、気が散って集中できなかったりと、交渉が決裂しかねないので(あらかじ)め窓を開けておく。室内に溜まっていた蒸し蒸しとした空気が、外から流れ込んできた風に運ばれて反対側の窓から出ていく。頬をさらりと撫でるこの風は、この季節だからこそなせる業だろう。

 コンコン、ガララ。

「ごめんなさい、少し遅れてしまいました」

 時計を見たら、確かに三分ほど遅れていた。他の先生だったら、そんなことまったく気にしなかっただろうことを考えると、よりこの人が几帳面な性格だと知れた。

「いえいえ、気にしないでください。では、ここに座って下さい。ワタシは向かい側に座りますので」

 先に主導権を握る事は、交渉をする上で大事なことだ。

 机を二つ向かい合わせた面談形式で対面するワタシと先生。

 今から行われるのは、どう転ぶかも分からない腹の探り合い。

 その火ぶたはもうとっくに切って落とされている。

 頭の中でゴングが鳴り、ピストルの号砲が響き、笛が鼓膜を震わせた。

 ――交渉開始である。


2021/06/18に初投稿。本文は当時の文章から加筆・修正を加えての投稿になります。

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