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【完結】re:どすこい令嬢の華麗なる逆襲~すべてのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第6章 パーペチュアル・ゲーム

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第62話 見据える瞳


「実の弟が…兄を?そんな」

「そう。誰もが信じられない。だからこそ、王宮はこの事件をロクに調査せずに事故と断定して、全ての情報屋に調査禁止令を出した」

「禁止令…?」

「秘密を暴くな、調べるな、と」

「‥‥そんな」


ラヴィは自分が依頼しようとしてる内容に、少しだけ恐怖した。


「…僕でも、君に依頼を頼める?」

「内容次第、だな」


ノエルの言葉に、ラヴィは頷いた。


「…前回の仮面舞踏会の時に、僕はそのヒューベルトさんに間違えられたんだ」

「誰に?」

「レアルド王子」

「…それはまた」

「そこで…彼のことを本格的に調べてほしいんだ。どういう容姿だったか、とか何かこう、エピソード、とか」

「なぜだ?調べたところでラヴィに何か関係あるのか?」


ノエルの言葉に、ラヴィはしゅん、と耳を下げる。


「あるかもしれないし、ないかもしれない。…その、王室のことだし、詳しくなくていい。もし危険なことがあるようならそのまま引いてもいい。」

「…随分慎重だな?」

「自分のことを考えることを休むのはいいけど、放棄してはだめだから…小さくても、材料が欲しい」

「へえ…いいな、その心意気」

「君には…無理をさせてしまうかもしれないけど」


公式に事故とされているとはいえ、暗殺されたかもしれない王族の人間を調べてほしいなど、気軽に依頼していいような内容ではないことは承知しているのだ。


「一応、取引だからな。報酬は?」

「…僕の秘密、全部。」

「秘密ねえ…」


ラヴィは頷いた。

自分自身に対して少なからず『疑問』を感じ始めているからこそ、何かの糸口になるかもしれない、と考えたのだ。

ノエルはしばし考え、ラヴィを見返した。


「…いいよ。魔法のウサギの秘密というのも、面白そうだ。」

「ありがとう、ノエル君」


ノエルの言葉に、ほっとしたような顔で微笑む。


「で、ラヴィはどうする?」

「…ええと」


ああ、なるほど、とノエルが頷くと、今度は下から上までじーっとラヴィを見つめた。


「え?な、なに」

「じゃあ、働くか!!18:00過ぎたらバータイムだし」

「は、働くの?!」

「住処は必要だろ?給料も出すし…ここ、貸してやるよ」

「で、でも…!」

「頭領!」

「ああ、フラウ」


やって来たのは、灰色の珍しい髪色の青年。…手には大量の書類を持っている。


(秘書さん…とか?ノエル君は一体いつ休んでいるんだろう?)


「失礼します、統領。お客さんがいらしているんですけど」

「客?…ヘンな奴だったら任せる」

「ヘン…といいますか、なんというか」


いつもならはきはきと答える大きな声が特徴の秘書のフラウは、その日に限って珍しく言葉を濁した。

ノエルは雑に自分の前掛けをフラウに渡し、ジャケットに着替える。


「…今日は千客万来だな、あ、ついでにフラウ。こいつ、ラヴィ!今日からここで働くから!」

「よ、よろしくお願いします…」

「うわあ…なんかすごい女性ファン増えそうですねぇ…わかりました!案内しますね」

「はあ…」


肩を落とすラヴィに軽く手を振り、ノエルは客を迎え入れるため襟を正した。


「どうぞ」

「…ああ」


やって来たのは黒いロングコートに、目深の帽子をかぶってすらりとした長身の男性と、同じような格好の従者らしき男性だった。


(ん?!ちょっと待て、こいつは)


「君が、ノエル・シュヴァル。報酬次第で、何でも依頼を受けてくれるという」

「…まあ、内容次第、ですかね」

「そうか」


そして、フードを外して現れたのは、赤い燃えるような髪に、朱色の瞳。ノエルは思わず席を立った。


(…マジか)


「初めまして…私はレアルド・ルベリアム。こちらは従者のルイス。今日は君に内密に依頼があってやって来た」

「これは驚きました。まさかご本人自らお越しくださるとは…その前に一つ」

「?」


ちらりと様子を見る。


(なんか…以前見た時よりも、しっかりしているというか)


「レアルド皇太子。…オレはこう見えて、ヒトとは違う【目】を持っているのだけど…」

「人とは違う目?」


レアルドは軽く首を傾げてノエルを見た。


「何度か見かけたが、あなたの目は、ここ半年くらいでどんどん光を失っているように見える。…呪いでもかけられていたんじゃないか?」

「‥‥呪い」

「ぶ、無礼な!殿下に対して」


怒るルイスを諫めて、レアルドは静かに呟いた。


「…呪いとは、どういう類のものだと思う?」

「オレはそう言う話は専門外だから、なんとも言えない。ただ…聖騎士レイヴンも似たような症状のように思える。失礼を承知で言わせてもらうが、お二人がご執心のあの巫女様。…本当に【聖女】なのかい?」

「……君も、そう思うか」


(君も?)


「オレにはとてもそうは思えない。…彼女は清らかさとかそう言うものとは無縁のように見える」


ノエルの思いがけない見解に、ルイスは驚いたのだが、レアルドは特に驚く様子もなく、淡々と耳を傾けている。


「頭の中にずっと声が響いていたんだ」

「…声?」

「ああ。———ヴィヴィアン《聖女》を愛するべきだ、手に入れるべきだ。彼女以外は何も望むな、彼女を愛することだけを考えろ、と」

「それはいつから?」

「分からない…気が付いた時には、もう彼女なしでは生きていられない程になった。善悪の分別も、判断力も…まるで彼女を中心に考えてしまうんだ」


レアルドはそう言いながら、苦笑し目を伏せた。


「どうかしていたな…」

「今は?」

「ある人にあってから…少し考えるようになった。今まで何の疑問も持っていなかったことに」

「ある人?」


言いながら、ノエルは内心どきりとした。

ラヴィの先ほどの話を聞いたばかりのせいか、合うはずのない線が結びついていくような、誰かの意図を感じるような…そんなことはあるはずがないのに。


「考えることやめるな、放棄するなと…そう言われたんだ」

「……」


(さっきも、聞いた言葉だな)


「僕にとっては、彼の言葉は本当に救いだったんだ。嘗て、兄がよく口にしていた言葉だったから」

「……兄上。彼の白薔薇の君…ですか?」

「…ああ。それより…君に頼みたいことがある」

「依頼、ですね」

「ああ。…二年前に起きた高位貴族連続墓荒らしを知っているか?」

「まあ、報道されている程度の知識ではありますが」

「そのの事件について…もう一度調べてほしいこと」

「…なぜ?ならば王宮の方で再調査をすれば」

「できるだけ内密に頼みたい。…王宮の力は借りられない」


妙な言い回しが少し気になるが、依頼人の内容を深く踏み込むのはノエル自身が決めているルールを逸脱している。


「だから、こうして君に直接私が依頼しに来たんだ」

「……」


(二年前の墓荒らし事件…)


「過去の記録もあるなら、詳細が欲しい。どの貴族の墓が荒らされたのか、誰の物か、消えた遺骨の行き先も」

「遺骨…ですか。一応、解決された事件のはずですが」


レアルドは一度目を閉じ、静かな沈黙が下りる。


「……それと似た出来事が起きた。それ以上はまだ」

「……いいでしょう」


皇太子殿下が言葉を濁すほどの案件など、聞きたくもない。


「とりあえず…お試しということで。最初の報酬は必要経費だけで構いません」

「!いいのか?」

「ええ。その先の内容は…その時こちらから判断します」

「…なるほど。わかった」


そうして…レアルドが帰った後、ノエルは椅子にもたれかかり、依頼書を見ながら大きなため息をつく。そして…


「マジでこの世界の秘密を暴くことになったりして…な?」


そう、ぼやいた。



「あの者…本当に信用できるんですか?」


帰り際、ルイスが心配そうに尋ねた。


「…恐らく、彼は信用に足る人物…だと思う」

「その根拠は?」

「少なくとも、報酬で動く人間ではないだろうし…あとは、勘、かな」


レアルドは、不思議な直観で確信を得ている。


「昔から…そういうところがありましたよね、殿下は」

「うん…」


その時、通りの方で、カシャン!と大きな音が聞こえた。


「?!なんだ?」

「殿下、ここは」

「いるのよね。相手にされないからって逆上するしょうもない奴って」


突如、朗々と響き渡る女性の声。

思わず二人で顔を見合わせた。


「…行ってみようか」

「え?…あ、もう~…」


ざわざわと人だかりができている。人ごみからやや離れたところで状況を確認し…レアルドは言葉を失った。

白いサマードレスの令嬢と、女神神殿の騎士が対峙している。

見れば、どうやら令嬢の背後に見知った顔がいるようだ。


(ヴィヴィアン…と、あれは?)


何度か見たことがある。緑の髪のバルク・ベルヴォン。となると、あの騎士はレイヴン・クロムかもしれない。

遠目から見るだけでも、レイヴンの異常さは際立っている。


(…自分も、数日前までああだったのか…?)


その形相にぞっとした。すぐにでも剣を抜きかねないような様子に、飛び出すべきか逡巡する。

しかし、ためらっている間に、事態は急変した。

案の上レイヴンは女神神殿の所属たる騎士なのに、その剣を抜いた。


「ま…っ!」


レアルドが飛び出そうとした瞬間、青色の扇子が煌めく。

サマードレスの令嬢はさらりとそれをかわし、武器を持たずに襲い掛かってきたレイヴンを制圧してしまったのだ。


「うわ…すご、あの令嬢お強いですね」

「薄紅色の髪…まさか」


一度、復活祭で見た。

あの時は、なぜか敵対心のような妙な闘争心があり、どこか歪んだ情報で彼女を見ていた自分に気が付く。


「まさか…カサンドラ・グランシア…?!」

「まぁ、なんということでしょう。顔色も悪く、目の下はくまだらけ。随分と凶悪な人相になられましたこと!ああ、恋って恐ろしい!人間をこうも変えてしまうなんて」


大げさな程身振り手振りを添えて、カサンドラはレイヴンをあざけ笑う。その様子を見ていたレアルドとルイスは、ついあっけにとられてしまう。

やがて、ざわざわと周りが騒ぎ出し、皆レイヴンを憐れむように見た。


「俺は…俺は!無理に連れて行こうとなんて…!しない!!!」

「!!」


そう言って咄嗟に飛び出したレイヴン目掛け、レアルドは持っていた剣の柄で太陽の光を反射させた。


「うわああ!!!」


そのまま逃げ去るカサンドラたちを見、安堵する。


「…追わなくていいんですか?」

「ああ。…今は、ひとまず…」


うなだれるレイヴンよりやや離れたところで、青色の扇子を見つけ、拾い上げた。


(彼女たちが無事なようでよかった)


その扇子は、まるで先日見た女神の瞳の色のようだった。


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