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【完結】re:どすこい令嬢の華麗なる逆襲~すべてのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第5章 攻略対象全員集合!

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第50話 祭りの後に


「ヴィヴィアン、ヴィヴィアンしっかりしろ!」

「う…ん、あ、レアルドさ…」


周囲では人の話し声や慌ただしい足音が煩く感じる。重たい体を起き上がらせると、目の前に泣きそうな顔の朱色の瞳が飛び込んできた。


「無事でよかった!!」

「!」


レアルドの腕の中に納まりながら、ヴィヴィアンはまだぼうっとしている頭を必死に動かした。


(何だっけ、…そうだ、私気絶したんだ。それに)


自分の手にあるペンダントを見、ほっと胸を撫でおろす。


「あ、大丈夫です…ごめんなさい、レアルド様。その、助けてくれて」

「そんなことはどうでもいい。…君が無事であれば」


周りはところどころガラスが割れていたり、花瓶が割れたりしている。

ホールの方では自分と同じように気絶している人も何人かいたようで、重傷の人間から運ばれていくところのようだった。


(…派手にやってくれたわ、あの片眼鏡)


その光景を見ながら、その一因が自分にもあることが、とても苦しく思えた。


(どうして…!だって、この世界は私のためにあって)


そして、あのカサンドラが言っていた「彼らも人間だ」という言葉が重くのしかかり、ヴィヴィアンは思わず唇をかむ。


「ヴィー…一体、なにが」

「お取込み中失礼します」

「!今は」


床に座り込む二人の頭上から冷たい声が降ってくる。

レアルドが振り返ると、そこにいた騎士を見て一瞬たじろぐ。


「…ユリウス・フォスターチ…‥ユリウス司祭?何故、騎士団の制服で」

「ああ、私の名前を憶えていてくれるとは。光栄です…が、私は既に神殿を退いた身です。司祭と呼ぶのは相応しくありません」


ユリウスはそういうと、膝をついてしゃがみ込む。


「この状況と、ご自身の服装は…どうやら、あなたにとってはあまり有利な状況とはいえなさそうですね」


はっとなり、レアルドは自分が仮装をしていること、ヴィヴィアンも同様だということに気が付く。


「…何が望みだ」

「別に。しいて言うならば、適切で歪んだ妄想のないまっさらな情報…とでも言いましょうか」

「歪んだ…?なにを」

「まさか、無自覚ですか?」


ユリウスの声に何が、と言いかけて、レアルドはそれ以上何も言えなかった。


「今回の仮面舞踏会は不可思議な点も多くございます。たとえ王室関係者だろうが、神殿関係者だろうが、特別扱いは致しませんので、ご了承くださいませ」

「ヘルト・グランシア…」

「わ、私見ました!カサンドラが!」

「ここは仮面舞踏会だと聞く。身分を明かさないのがルールだとも。何故その人物がカサンドラだと言い切れる?それより、あなたがここに倒れていた理由を聞かせてもらいたい」


思いがけず窮地に追い込まれたヴィヴィアンは、ヘルトをきっとにらみつける。


「わ、私を疑うの?!」

「一応この舞踏会に参上した全員に話を聞いて回っている所です。聖女様、レアルド殿下もぜひご協力を」

「っ私は次のこの国を担う次期」

「次代の国を担うとおっしゃるなら」


ぴしゃり、とヘルトは言い切った。


「もう少し、立場をわきまえた振る舞いを。聖女様も、国のために女神に仕えているというご自覚を持っていただかないと。ハルベルンという多くの人間の命と期待がお二人の身に集まっているということ、ゆめゆめお忘れなく」

「わ、わかりました…」


ヴィヴィアンはうつむきながら、ヘルトとユリウスをねめつけた。


(なんなのよ!あたしはヒロインなのに!!どうしてこんなに事が進まないのよ?!)


**


「うー…ん」

私はうっすら開いた目を再び閉じて、もぞもぞと暖かい布団の中で再び寝返りを打つ。

「もうちょっと」

少し寒く感じたので、隣にあった毛布を引き寄せた…つもりなのだが。

「寒いの?こっちの方が暖かいよ」

「んんー…ほんと…だ?」


聞こえてきた耳慣れない低い声に、バチっと目が覚める。そして、目の前に現れる黒い髪の美しい貌。


「いいな、御主人様の身体は柔らかくて、暖かいな」

腕枕をしながら妖美に微笑むこのイケメン。誰だ?

(…はい?)

ずりずりと後ずさりする私の身体は、逞しい腕によって再び布団の中へ引きずり込まれる。


「もう少し一緒にいて?」

「い…?いやいやいや!!」


絡みついてくる腕をはがして、私はベッドから脱出する。

パパっと自分の身だしなみを確認するのが…やや乱れてはいるが、皺ひとつない…のはさすが上等な生地!

じゃなくて。そうでした。昨晩は睡魔に負けてドレスのまま眠ったんでしたぁ!!


「…ッあ・あああなた、そうだ!アードラ!」


帽子屋改め、アードラははだけたシャツをあらわにしながらふわああ、と呑気なあくびをしている。


「んー、久しぶりに快眠だったー。人肌って、こう、暖かくていいよね」

「なにしてんのよぉおおお!!!」


力いっぱい叫んだ私の声に、驚いてアリーが飛んでくる。


「お、お嬢様!!大丈夫ですか?!」

「だ、大丈夫!寝ぼけただけだから…」


私は背を向けていたので、慌ててアリーの方に振り返るのだけど。


「なんで顔が赤いの?アリー」

「あ、あの。お嬢様っ。その 昨晩は…あの、その、おたのしみでいらっしゃったようで」


おたのしみ…とは?

なおも気まずそうに眼をそらすアリー。

え?まさかアードラ?確認のためベッドの上を確認するが、既にもう鳥の姿でくつろいでいる。


「あの、私に何か…」

「きょっ今日の服装は!首元を隠すものに致しましょう!!その!汗もかかれたみたいですし!湯あみの準備を!」

「ちょ、ちょっと待って。アリー、どういうこと?」


挙動が不審で立ち去ろうとするアリーをガシッと捕まえた。すると、アリーは顔を真っ赤にしてうつむいた。‥‥いやいや、こちらがもらい照れしそうだわ。


「あの、首元に…その。せ…せせっせ…接吻の後が」

「接吻て…きすまーく…?!」


はっとなり、思わず鳥の姿の従者をにらみつける。

そうだった、そう言えばこいつは人型で私にそ…添い寝してたんだっけ?!


(アードラ!あんたか!あんたね?!)


なるほど、アリーの誤解の経緯を理解した。

昨日は使用人たちも知らぬ間の夜中の帰宅。それに加えて朝のこの着乱れたドレスに…そ、それ以上は推して知るべし!ね!


(は、恥ずかしぃいぃい!!!)


鏡を確認するとうん、正面からは絶対に見えないけど、首元を見たらよくわかった!!背面ガラ空きの隙だらけだもの、跡がつけやすい状況だったわね!覚えてなさいよ鳥め!


「わかった!アリー!説明するから、とりあえず…ヘルト兄さまには黙ってて!!」

「も、もちろんです!!!誰にも言いません!!!」

「とりあえずお風呂!お風呂入るからよろしくね!!」


(いろいろ。後が怖いから、絶対に黙っていてもらおう)



かくかくしかじかと説明して、アリーにはやっと納得してもらった。

その後、少し多めにサンドイッチを作ってもらって私はいつもの庭園のベンチでお昼とを取ることにしたのだった。


「とりあえず、カサンドラはその隙だらけな感じをなくして、鳥かごを買うことをおすすめする」


ウサギは鳥を威嚇しながらにらみつける。


「そう怒らないでよ、つい」

「ついであんなことするわけ?必要な時以外人型禁止!」


私はこの夏の暑い日に詰襟のきちっとしたドレスを着こんでいるので、正直暑い。

昨夜の出来事の後、後始末のため昨日ヘルトは還ってこなかったらしい。ようやくシグマ・フォスターチのいざこざが収束しかけていたのに、さすがに申し訳がないような気もする。


「それにしても、あれだけ派手にやらかしちゃったけど、大丈夫かしら」


まさか、捕まったりしないよね?と思いながら、あの場ですぐに逃げ出す決断をした自分に後悔しつつ、こうして今に至る。

ただ、今朝の新聞を見る限り、イヴェンター伯爵の記事は確かにあるけど、そこにヴィヴィアンがいたとか、そういう詳細な情報はどこを探しても見つからなかった。


「…そう言えば、あの会場にレアルド王子?がいたよ」

「え?そうなの?…ラヴィ、会ったの?」


確か、ラヴィは一度もレアルドの姿を見ていない筈なのに?


「そうだね。…なんか様子がおかしくて。声をかけた時にそう言っていた」

「ふうん」


そう言えば、あの時例の謎空間でレアルドフラグがどうしたとか…そんな声が聞こえたような気がする。


「もしかして…ラヴィとかアードラとかも攻略対象に関わると、そういうフラグが壊れるような仕組みでもあるのかしら…?」

「ねえ、ご主人様」

「…なに?アードラ」

「これから、あまりあの豚モードと、ステイタス画面を開くのは極力控えたほうがいいかもしれない」

「……どうして?」

「僕はもうこの世界のシステムにアクセスできない。…つまり、何が起きても、システム側からの干渉にタッチできないんだ」


確かに、アードラの役割は『セーブ』と『ロード』と言っていた。


「あの、モノクル紳士…あいつは、システム側の人間てことよね」

「そうなるかな」


じゃあ、ラヴィはどうなるんだろう?


「……じゃあ、僕は」

「見つけた、カサンドラ」

「??!」


ぎょっとして振り返ると…そこには、ノエルが満面の笑みで立っていた。

「…相変わらず、どうやって入ったの?」

「そりゃあ、日頃からメイドさんたちと仲良くしているから」


そう言って、私の隣に座り込む。


「昨日」

「!!」

「あの後、どうした?」

「え?!」


じりじりと近づくノエルに、私はしり込みしてしまう。


「いやー…色々あったけど、俺たちのピンチに、あの会場の電気消したのカサンドラだろ?」

「え、あああの、う、うん」

「その後…妙な影みたいな、例のこの間中庭で襲ってきたような奴?あいつらが襲ってきてさ。どうしたかなーって思ってたんだよね」


ニコニコしながら、ぐいぐいと距離を縮めていく。


「あ、ああと、うん!こ、怖くなって実は先に帰っていたのよ?!」

「本当に?じゃあさ…君と同じドレスを着た、あのふくよかな女性は別人だったのかなあ?」

「え…」


どうしよう。白状するか、否か。

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