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【完結】re:どすこい令嬢の華麗なる逆襲~すべてのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第4章 いざ、仮面舞踏会

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第41話 不可避な依頼


(まあまあ、いい感じだったかな?とはいえ、ああも無防備でいられるとなあ)


「全く、ヘルトも大変だな。同情するよ、ホント」


カサンドラをグランシア家に送り届けた後、なんとなく気分の良いままギルドに戻る。すると、一人の部下が遠慮がちにやって来た。


「頭領…その、お客様がいるんですけど」

「依頼?」

「ええと、その」

「こんばんは」


やって来たのは、招かれざれ客というべきか。

ヴィヴィアンと青い髪の騎士らしき男が待ち構えていたのである。


(せっかくいい気分だったのに…ヴィヴィアン・ブラウナ―、それに隣はレイヴン・クロムか?)


「なんとも、想定外なお客様だ」

「こんばんは、ノエル・シュヴァル様」


黒いローブを被った茶色いの髪の少女は赤い瞳をのぞかせるとにっこりと笑った。


「貴方は何でも屋なんでしょう?どんな依頼も引き受けてくれると聞いたけど」

「今日はもう閉店時間ですよ?またのご来店を…」


ノエルがそう言ってかわそうとしたが、レイヴンがそれを遮った。


「おい。話も聞かずどこに行くつもりだ?」

「依頼人は下僕か?それとも後ろの聖女様?」

「貴様、今、なんといった?」


今にも剣を抜きそうな顔でレイヴンはこちらをにらみつける。その視線をうんざりといった様子で受け止めると、ノエルは嘲笑と侮蔑が入り混じった言葉を吐き捨てた。


「下僕は下僕だろ。もしくは奴隷?かな。」

「なんだと?!」


カッとなったレイヴンは腰に帯びた剣を抜き放とするが、ノエルの持っていたナイフの柄で鞘ごと押しつけられてしまう。


「やめとけ?…ここをどこだと思ってる?」

「…くっ」


レイヴンが殺気を込めてにらみつけるが、ノエルは全く動じなかった。


(こいつの瞳の光が失いかけている。…復活祭で見た、レアルド皇太子と同じだ)


ノエルはちらりとヴィヴィアンを見るが、当の彼女はにこにこと微笑むばかり。

そして、ノエルを挑戦的な瞳で見つめ返した。


「私が依頼人よ。なんでも聞いてくれるんでしょう?弱きものの盾、ですものね」

「か弱い方などここにはいらっしゃらないようですが」

「どうして?ひどいわ、そんな風に冷たくするなんて…!」


ヴィヴィアンはわざとらしく悲しそうな顔をして見せる。すると、案の定レイヴンがそれに反応した。


「…貴様、彼女はこんなにもか弱く儚げなのに、なんてことを!」

「‥‥‥やれやれ、恋は盲目、か?魂から心まで骨の髄まで売り渡すほどのめり込むとは、哀れなやつ」

「なっ‥‥!」


ため息交じりにそう告げると、ノエルは二人にくるりと背を向けた。


「聖女様、貴方からの依頼はなしだ。依頼人としてオレが認めない。決定権はオレにある…お引き取り願おうか」


ノエルがそう言って片手を上げると、周りにいたいかつい身体の男連中が集まりだした。

その様子を見て、ヴィヴィアンはぐっと唇をかんだ。


(本当に私のことを嫌っているのね。…なら、それでもいいわよ別に。)


「いいえ、あなたは私の依頼を絶対に断らない」

「…なぜ?」

「だって、貴方の大好きなカサンドラの命に関わることだもの」

「!」

「…託宣よ。女神様からの、ね」

「なんだと?」

「カサンドラは、()()()()()()()、命の危機に直面するわ」


ヴィヴィアンは赤い瞳をぎらつかせてにやり、と笑った。その笑みは、聖女だの巫女だのとは縁遠いものに見える。


「なんとも…巫女様の力は便利だねえ」


国が認定している聖女様の託宣とあれば、それを疑うのは王を疑うこと。

何よりも厄介なのは、それが本当がどうか確認する術を、ノエルは持っていないということだった。


(そう、きたか…本当、面倒な聖女様だ)


「…で?」

「依頼は二つ。今度の仮面舞踏会…カサンドラと私の分と、招待状を二通用意してもらえる?それがまず一つ目の依頼」

「随分と図々しいじゃないか、聖女様」

「…もう一つは、仮面舞踏会私のエスコートをお願いしたいの」


この発言には、隣にいたレイヴンが過剰に反応した。


「ヴィヴィアン!どうして…」

「ごめんなさい、レイヴン。これは私の大事な親友を守るためでもあるのよ」

「き、君がそういうなら」


(随分と自信満々だな。…何を考えている?)


ノエルはヴィヴィアンの心を読み取ろうと試みた。しかしヴィヴィアンはこれから何が起こるか知っているかのように、確信に満ちた瞳でこちらを見つめ返した。


――あなたは絶対に断らない。私に不信感を持っている以上、絶対にね。


「託宣と…聖女様のエスコートと何か関係が?」

「…何が起きるのか知っているのは私だけよ」

「そんなに俺に興味があるなら…、もっと艶っぽい誘い方をしたらどうだい?」


ノエルがそう言ってあざ笑うと、すっと前に出て、ヴィヴィアンの耳元でささやいた。


「それとも…君が何かするつもり?」

「…さあ?心配なら私を監視する必要があるでしょう?」

「なら、そんな危険なものに彼女が出なければいいだけの話だろう。」

「あら、私はなにも仮面舞踏会の会場で何かが起きるだなんて一言も言っていないわ」

「……」

「私と一緒に来れば、彼女を守りつつ、私のことも監視できるじゃない」

「聖女様とはよく言ったものだ。これは立派な脅迫じゃないか?」

「脅迫ととるか、女神の声が聞こえる巫女の啓示としてとるか、あなた次第よ。いいお返事、待っています」


くるりと背を向けたヴィヴィアンはそのまま振り返らずに歩きだした。


(あなたは知らないでしょうけど、私とあなたが一緒にいること。それがこのイベントの条件(トリガー)よ)


このゲームのイベントフラグというのは、いくつかの条件(トリガー)が重なって発動するものと、ヴィヴィアンは学習していた。


(必要なのは、ノエルからの招待状を私が持っていることと、彼が一緒にいること。そうすれば、通常ならばノエルのイベントが発生する。そしたらきっと、仮面舞踏会で事件が起きる)


その時、混乱に乗じてカサンドラを嵌めればいい、そう考えたのだ。


しかし、既にノエルはシステムの干渉を受けないことを、彼女はまだ知らない。


**


「ふー、今日は楽しかったあ」


私は家に帰るなり、自室でくつろいでいた。

今日一日中太陽の光を浴びたせいか、心地よい眠気が襲ってくる。

しかし、そんな私の隣の籠ではウサギがそっぽを向いている。丸い尻尾が可愛らしい。


「まだ怒ってる?ごめんね、ラヴィ」

「楽しそうで何よりだね、カサンドラ」

「うん!楽しかった―!!じゃなくて、気絶させちゃって…ほんと、ごめん」

「それはいいよ、別に」

「じゃあどうして怒ってるの?」


 しばしの沈黙の後、ウサギは首を傾げた。


「なんでだろう?」

「??」


怒っているのか怒っていないのか。わからないけど、とりあえず普通にこちらを向いてくれたので、ちょっとだけほっとした。


「ね、それよりラヴィ。今日攻略本見てて気が付いたんだけど、これってラヴィが用意してくれたんだよね?」

「…うん、そうだね。魔法で」

「見てこれ。…シークレットフラグを壊した三人のページが丸々白紙なの」


攻略本のページをパラパラとめくると、登場人物一覧の所にヘルト、ユリウス、ノエルの三人の名前が消えており、ストーリー自体が消えてしまっているのだった。


「本当だ。…そうか、もしかして、システムの影響を受けなくなったからかもしれない」

「それって…前、彼らはシステムからの強制力ばなくなるって言ってたよね。それのこと?」

「うーん…そうだと思うんだけど」

「ふうん…」


そう言えば、ふと私は以前見た夢のことを思い出した。


「ねえ…そう言えば、前変な夢を見たわ」

「夢?」

「ええ。もう、ちょっと半分忘れちゃったんだけど、なんかこう、巫女様と白い王子様の影絵が、こう真っ暗になってばらばらに…」

「…なにそれ??」

「ううーんと…」


いいながら、自分でもよくわからない。

紙芝居みたいな映像があって‥‥ええと、何だっけ?


「あ…そうだ、瞳の色!」

「瞳?」


ウサギというのは表情が実はよくわからないのだけど…ラヴィは赤い瞳でじっとこちらを見つめている。それを見つめ返すべく、小さな体をひょい、と持ち上げた。


(そう言えば…瞳の色、ラヴィも、帽子屋も…ヴィヴィアンもみんな同じ赤い色)


「血…みたいよね」

「ななに?なんか怖いこと言ってない?!」

「あ、でもそっか、白いウサギはアルビノだから…だっけ?」

「アルビノ…って??」

「あ、ごめん、こっちの話。その…夜空の見たいな深い青色のヴィヴィアンに会った…ような気がする」

「瞳の色のこと…?なにそれ?ヴィヴィアンて二人いるの?」

「うーーん…ごめん、ちょっとまとまったらまた話すね」


そう、考えてみれば。

帽子屋曰く、私は来訪者であるらしいけど。

同時に、こちらのヴィヴィアン…あの子ももしかして、来訪者となるんだとしたら。


(本当のヴィヴィアンは…どこにいったの?)


「あの…頼りないかもしれないけど、あまり、一人で抱え込まないで?また、この間みたいなことになったら、大変だから…」

「ラヴィ…」


しゅん、とうなだれる姿は耳がたれちゃって、申し訳ないけどとっても可愛い。


「ねえ。これっていいことなのよね?彼ら自体が消えているわけでもないし」

「ノエル君たちのこと…?大丈夫だよ、きっとそれをしないといけないんだし」

「うん…」


とはいえ、言いようのない不安のようなものが押し寄せてくる。

(大丈夫、なのよね…?)


「この世界はどうなるんだろう」

「え?」

「形を変えることが正しいのかな。それとも。…ごめん、ラヴィだってわかんないよね」


私の問に、ラヴィは答えてくれなかった。


「でも、きっと意味のあることだと、私は思う」

「ん。そうだね、がんばろラヴィ」


握りこぶしを垂直にして、ウサギの小さな手にふわりと当てた。


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