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第0話 はじまりはじまり

私は、神である。

全ての事柄は神の運命によって定められ、散りばめられた宝石のように瞬いては、消えてゆく。その一つ一つを造るのは、この私である。

彼女には、死ではなく、新たな未来を。

ヒロインには、より良き未来を。

彼らにはそれぞれ役割があり、ストーリーがあり、未来がある。

造られた未来など、壊していしまえばいいと思う者に祝福を。滅びの未来を造ろうとする者には罰を。

そして…その世界は動き出す。


「物語を作るのは、君たちだよ」


**


ざわ、と生ぬるい風が通る。

私は、ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井を見てため息をつく。


「…やっぱり、夢じゃないわけか」


ああ、身体が重い。

てか、重すぎでしょ。よっこいしょ、なんて言わずに起き上がれないほど、おなかの肉がタプタプなのだ。


「ふう、ふう、…は―――もう。絶っっ対!痩せてやる…」


私の名前は…カサンドラ、そして、橋本真梨香という。何を隠そう、元は現代の女子大生だ。お決まりの死んだらここに来た、という奴。…まあ、私の死因は若年性脳梗塞っていう病名付きだけど。

ここは私がプレイしていたゲームの世界に似ている…ケド違う世界らしいが、まあとにかく、こうして人生を再スタートできる権利を手に入れたのだ。

一時はこの世界に来たことを絶望したけども、最近は少し気持ちを変えることにした。

壁に貼ってあるダイエットカレンダーには、毎日毎日少しずつ、ばつ徴をつけている。毎朝のルーティン…それは、朝起きてのスクワット5回と、腕立て5回、腹筋三回。どれも目標回数が少ないけど、この腹のぜい肉を減らすのが目的であって、やせる以前の問題なの。手を抜いてるわけじゃないから!!

そして、更に現代で寝る前によくやってた見様見真似のヨガの『木』のポーズ!…これが結構つらいのよ!


「筋が、筋がつる…」


ぶつぶつ言いながらも、絶対痩せる。痩せないと物語進まないし、破滅も回避できないし!!


「カッサンドラおっ嬢様―――!おはようございまーーす!」


ばたん!と思い切りドアを開けてやってきたのは、メイドのアリー。

元気印で天真爛漫、幼いころからの付き添いメイドだ。ああ、今日も茶色のみつあみからくせっ毛がはみ出している…!


「お、おはよ…アリー」

「きょ、今日も顔色がすごいです…頑張っていらっしゃるんですねえ」

「そうよ!目標ないと人生ダメになる一方だから」

「すーこーな目標…素敵です!!」

「ありがとね…よーーし、終わり…あ、やば」


ぜえ、ぜえと息を切らしているが、時計を見て慌てて窓を開く。


「カサンドラ!起きたか?」

「ヘルト兄さま!!起きました。今用意します!」


私の部屋の下は庭園になっているのだが、そこには藍色の髪をなびかせた私のお兄様がいる。

この世界のこの場所…ここは、『ハルベルン帝国』と呼ばれている。

この私、カサンドラ・グランシアはその帝国でも数少ない公爵家の長女である、そして、彼は私にとっては継母となる母親の連れ子…つまりは、養子となるわけで、血がつながっていないのだ。…まあ、良くある設定だよね。乙女ゲームだし。


そんな彼とも小さいいざこざがありはしたものの、和解。今ではすっかり私のダイエット専属トレーナーとなっている。


「よし、パラメータ…あ、状態小疲労…まあ、しょうがないか」


アリーに聞こえない程度の声でつぶやくと、目の前にゲームウィンドウが表示される。疲労度、体重、身長、称号(?)がリアルタイムで更新されているので、それを見てから、犬の散歩兼ジョギングをするのが日課の一つ。


「そう言えば、朝から何通かお手紙が来ていましたけど」

「は?手紙??」

「えーと、フォスターチ公爵家のユリウス様からの招待状と、後ノエルさんからのお手紙と…あ、お嬢様!?」

「ああもう、後で見る。よし、行ってきます!あ、帰ったら、食事するからよろしくね!」


そう、ここはゲームの世界…だけども。

五感は勿論、言葉も対人関係も、家族関係も全てリアルなので、もうゲームだとかどうとかは忘れることにする。

今度は絶対に後悔しないような生き方をしたい。…本当にそう思ったんだ。

さて、では私に何が起こったかというと。

それは、今からおよそひと月前の事である。

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