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【完結】re:どすこい令嬢の華麗なる逆襲~すべてのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
外伝 暁に見る夢~レアルドEND編~

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外伝 暁に見る夢3

 

「…ハシモト マリカ  さん?」

「ハイ…あ」

「あっれー?」

「!」

黒い外套に、ブラウスとパンツルック…だけど問題は腰にある剣だ。やって来たのは…真梨香にとっての先輩で、咄嗟にレアルドを隠そう両手を広げてみたが、レアルドの長身に敗北した。


(どうしよう?!レアルドいまの格好って……このままでは、銃刀法違反で捕まっちゃう)


「橋本さん、帰ったんじゃな…え?!ちょ 誰?」


しかし、レアルドの姿を見るなり、「はわわ」という表現が適切なように口をパクパクさせている。


(人外のイケメンを見たらそうなるわよね…)


「行きましょう!おつかれさまですーー」


そして、脱兎のごとく逃げ出したのであった。


「すごいな…!この世界は鉄でできてるのか!」

「て、鉄っていうか…はあ、まあ…」


高速で階下へ移動する鉄の箱に感嘆を漏らしながらも、着換えもそこそこに、真梨香とレアルドが手を繋いで歩き出す。

見るものすべてが初めてということで、手を離すとどこかにふらふらといなくなりそうだったため、必要な処置ではあるつもりが、レアルドはにこにことしっかりと手を握り返した。


「つまりは、マリカ、外見は違うけど君はカサンドラ…と、言うことで間違いないよね?」

「はい…話せば長くなるんですが…」

「うん、ぜひ聞きたいな」


今のカサンドラ=真梨香の現状は説明がやや難しい。

どういう奇跡かイタズラか…真梨香という人間はもうすでにこの世にいない。

つまりこれは、身体が見ていた世界を体感しているわけで…のだが、腹は減るものだ。


「ええと…レアルド様はお腹は」

「レアルド、だと言いにくくないか?」

「え?いや…ええと」

「君はマリカ、だろう?なら、俺はルルがいい」

「ルルさん…?随分と可愛らしい名前ですね。では、ルルさんお腹すきませんか?」

「いや、見る物全部が新鮮で楽しくて…それどころじゃない!」


言いながら、レアルドはキラキラと目を輝かせてあちらこちらをきょろきょろしている。

なんだか、毛並みが良くてお利口な…ボルゾイみたいな犬と散歩しているような感覚になってしまったが、さすがに言葉に出さずかみしめた。


「あ、今は…丁度、クリスマスの時期なんだ」

「クリスマス?とはなんだ?」

「あー…この世界では、神様が誕生した日で、親しい人とプレゼントを交換したりするんです。ハルベルンで言う、12月の建国祭と似ているかもしれません」

「…なるほど。じゃあ、真梨香が俺にくれたのは、この素晴らしいサプライズだね」

「え」


…眩暈がする。

邪気を払いのける、神々しい笑顔に思わず目を伏せた。


(目の毒。なんだろう…カサンドラが見た目だったら耐えれるのに…っ)


「よし…!ならばルルさん。どういう経緯でこうなったのかさっぱり見当が尽きませんが…ここは楽しむとしましょう!案内しますよ、私の世界!」

「…!」

「まずはその…王子様オーラを消すことから始めましょう」

「…王子様オーラ…??」


とりあえず、預金口座の金額を確認し…真梨香は某大手のショップへと走る。

中に来ているジャケットやブラウスなどはそのままに、ひとまず外套を引きはがし、見事な細工の宝剣は外套にくるんでトートバックに収納。

オーソドックスな黒色の冬用のダウンを購入(ロングコートだと、みなぎるカリスマオーラは消せなかった)、キャップを購入し、現代人ファッションを完成させたのだ。

それでも…困ったことに、何を着ても絵になり様になり終いには、JKたちに遠巻きで写真を撮られる始末である。


「うーん…文明レベルの次元が違うのか。この世界の人たちの生活と営みを勉強したいものだ」

「…あまり参考にはならないかも。あ、来た!」


そして、やって来たのは…定番「牛丼屋」である。


「ボタンを押せば紙が出てくる…?!マリカの持っているそれと同じなのか?」

「仕組みは…多分、違うと思います…でも」


不思議なことにスマホの画面は暗くなったままだった。


(まさかこれが関係しているとか…?)


「マリカ、これはどう食べれば…?!」

「ああ、えっと。フォークとスプーンくださーい」


(レアルド様ってば…語尾がどれも疑問形になってる…)


マリカの中のレアルドのイメージは、「固くて生真面目な優等生」だった。

でも決して気が弱いわけではない、ちゃんとしっかりとした芯は持っていて、ブレない。それが間違った方に行くと、穴にはまり込んでしまうような危うさも感じている。


「あ…もしかして、純粋で素直ってこと?」


つい、言葉に出し、はっとなるが…当のレアルドは、どんぶりを見て固まっていた。


「これは…肉を先に食べるべきなのか、この白いものと一緒に食べるべきなのか…?」

「…っふふ アハハ…!あわせてどうぞ」


(だめだ、…本当は良くない状況かも知れないけど…!)


とても楽しい、そう感じてしまった。

その後も、テイクアウトでコーヒーを飲み、クレープを食べ…そんな時間を過ごした。

帰りの電車でも、相変わらずのにこにこときょろきょろしてはあれはなんだ?!と質問攻めにあうことになったのは言うまでもない。


「じゃあ、とりあえず今日は私の部屋に行きましょう」

「え…でも、いいのか?こちらのご両親もいるだろう?」

「あ 私は一人で暮らしているので。んと、この世界では、成人したら一人で部屋を借りて暮らすのが普通なんです。それに、私は両親はもういないので」

「……すまない、余計なことを」

「いいえ。…じゃあどうぞ、あまり広くはないけど」


しかし、いつまでたってもレアルドは部屋に入ろうとはしなかった。


「?どうしたんですか?ルルさん」

「…いや、しかし…女性の部屋に入るのは」

「……そこで、凍えて風邪でも引いたら、私は面目が立ちません…」


なんだかんだと頑なに拒否するのを嗜めつつ、ようやく部屋の鍵を閉めたのは…深夜12時を回っていた。

部屋着として購入したスエットを着用してもらい、お茶を入れ、小さな机で向かい合わせになる。


「…なんて身体が楽なんだろう!」

(たかがスエットなのに、レアルドが着ると超有名ブランドのモデルのようになる…)


…例の【ヘヴンス・ゲート】ゲームのパッケージが目に留まる。この勇ましく剣を構えている主人公が目の間にいるんだもんなあ…などと半ば感心してしまう。

すると、それを大きな手が持ち上げた。


「ヘヴンス・ゲート…この絵の中の人物、似ているな」

「……私の感覚では、ルルさんのいる世界と良く設定が似た物語の世界、という感じです」

「物語の世界……俺から見れば、この世界がそう見えるな。あなたもそうであるように」


(この狭い場所でじっと見られるのは、少しむず痒い…)


「ええと、まずどこから話せば」

「…君は、ユリウスとの婚約を破棄したのか?」

「?!っごほ!…な、なにを?!」

「いや、ここに来る前、言っていただろう?…気になって」

「い。いいいいまここで?!!」

「うん。重要な問題だ」


レアルドがごく自然なことのように頷いた。


「…重要なことって…」

「だって、君が今誰ともそう言う関係にないのなら、俺は遠慮する必要がないだろう?さすがに、誰か決まっている相手がいるなら手も出せないから」

「て…手ぇ?!何言ってるんですか?!それどころじゃないでしょうっ」

「それで?」

「それでって……」


すっかり聞く姿勢が整っているようで、心なしか前かがみである。

先ほど自分で分析した「頑固で素直」な性格を思い出し、観念することにした。


「…先日、正式にお断りいたしました。一応契約期間は終了したので」

「……そうか」


(……そう、正式にお断りをした)


ユリウスは、元より覚悟の上だったようで…笑顔で「わかりました」と、ただそれだけ呟いた。

別に、彼が嫌いと言うわけではなかった。ただ…自分の中に消化できない想いの塊のような物がまだあって、ずっと渦を巻いてぐるぐる回り続けている。


「では、この状況を打破する方法を…一緒に考えようか?」

「!はい…わかりました。では…まず、【私】の話から…と言っても、少し曖昧な部分もあるので」

「…わかった」


そして…一つ一つ、確認しながらはなしていく。

【世界】の事、【橋本 真梨香】という人間がいて、この場所に住んでいて…どういう人生を歩み、どうやってハルベルンへと行きつくことになったのか。

それはまるで自分自身を振り返る作業のようで、とても不思議な感覚だった。


「ルルさんは…聞き上手ですね?つい、色々話してしまいます」

「…君の事だから」

「……」


不意に胸が時折ドクンと跳ね上がる。

でも、それは…まだ確認したくはないし、正体を知ろうと思えない。


「今日はもう、休んだ方いいんじゃないか?」

「え、でも」

「これで朝、目が覚めて元に戻っていたらそれでいいし」

「……じゃ、私はソファーで寝るので」

「なぜ?」

「え?」


お互い「?」の表情で首を傾げ合う。


「だって…王子様を床に眠らせるわけには」

「そこは俺も譲れない。女性を床に寝かせるのはよくない」

「でも」

「……」


頑固で、素直…という言葉がまた重くのしかかる。


「なら、一緒に寝るのはどうだろう?」

「え?!」

「大丈夫!俺は何もしない!」

「……ッ」


(頑固で、素直…で、純粋…!)


幸いなことに、人生で二番目に高級だった、ひと月の家賃程した自室のベッドはいわゆるセミダブルサイズ。…壁紙のごとく壁に張り付きながら、落ち着かない一夜を過ごしたのだった。



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