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メイドの困惑

 メイド、マギーはうっかりさんだった。

 子供のころからそそっかしく聞き間違いや勘違いも多い。

 そんなマギーが大事な大事なお客様のおもてなしの一端を任されることになったのはひとえに祖母譲りのお菓子の腕があってこそだった。

 それ以外のマギーはほかのメイドがマギーと同じ班になったときはちょっと顔色が悪くなるような仕事ぶりだった。

 マギーは決められたことはできる、しかしそれからちょっと外れたことを命じられると途端にグダグダになるのだ。

 そしてマギーが大役を任されたことに周囲のメイドは戦慄を隠せないでいた。

「大丈夫なの?」

 掃除係がマギーに聞いた。

「ええと、タルトを焼くだけですよねえ」

 マギーは首をかしげる。

「そうね、タルトを焼くだけよね」

 掃除係は冷たい汗を背中に感じていた。

「一応、見本を作って差し上げればいいのではないの」

 年かさのメイドがそう言ってマギーに台所に行くよう指示した。

 マギーは厨房に入りそしてマギーのうっかりさんを知っているほかのメイドが食材を用意した。

 小麦粉やバター、蜂蜜とジャム。それを確認してからマギーは腕まくりして作業を始めた。

 粉とバターをすり合わせある程度まとまったところで蜂蜜を追加、それから水を足した。

 そして時間をかけてタルト生地をこねていく。あるていどまとまったら麵棒で生地をのしていく。

 そして普段の不器用さが嘘のように生地にきれいな模様をつけていく。

 そして一度竈で空焼きし、ジャムを焼いた生地にたっぷりと塗り込んだ。

 そして再びタルトを焼いた。

 表面のジャムが乾いたのを確認してマギーはタルトを竈から取り出す。

 ふちに波打つようなきれいな模様が中心の真っ赤なジャムを引き立ててキレイといえる出来栄えだった。

「少し冷ましてからお嬢様にお出ししよう」

 焼かれて照りの出たジャムが食欲をそそる。誰にでも得意なものはあるというがマギーはタルトづくりに全振りしているのだなとメイドはそう思いつつそれをマーゴットに届けた。

 届けられたタルトを見てマーゴットは思わず見入った。

 こげ茶の中の真紅が誠に美しいジャムタルトだ。

「ああ、これなら侯爵夫人も喜んでいただけるでしょう」

 食べてみれば味もまことにいい。

「でもやはりもう少し豪華さがあってもいいわね」

 そしてしばらく考え込んでいた。

「いいわ、じかに伝えるからこれを作ったメイドを呼んできて」

 そして呼び出されたマギーに伝えた。

「卵とミルクも使ってちょうだい」


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