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俺の尿管結石が異世界では賢者の石だった!?  作者: 卯月真琴
第二章 ペネストレーデの薬狂い
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賢者の石、鑑定

 昼食を挟み、一たちは旅の計画を立てていく。

「出発は三日後にしましょ。その間に食糧とか商品の補充をするわ。シロちゃんはあたしのお手伝いね!」

「あいっ! おてちゅだい、頑張る!」

「俺は?」

「あんたはオストリンデについて、賢者の石の研究を始めなさい!」

「始めろ、って言うけど、俺、何にも出来ないぜ?」

「あのポーションを渡せばいいじゃない」

「結石ポーション、か……」


 現在、彼らはオストリンデの家ではなく、薬学店の近くにある飲食店で食事中である。オストリンデの紹介でやってきたのだが、どうやら店主の老夫婦がオストリンデ薬学店の常連客らしい。ニコニコしながら次から次へとサービスを出してきてくれるのは嬉しいのだが、既にテーブルに乗り切らないほどに料理が運ばれてきている。もちろん、どれも美味ではあるが、この老夫婦は彼らがこの全てを平らげられると思っているのだろうか。


「思ってるんだろうな……」


 シュウマイのような物を突きながら、何でも美味しそうに食べるシロを眺めながらそう呟くと、ウィンが返すように呟く。


「大丈夫かしらね、オストリンデ……」

「何が?」

「あの子、研究馬鹿だから、結石ポーションなんか渡したら不眠不休でやるに違いないわよ」

「熱中出来ることがあるのはいい事だろ」

「前は、熱中し過ぎて死ぬ所だったのよ?」

「そりゃ……まぁ、そんな時もあるだろうよ」


 既にお腹ははち切れんばかりになっているため、一もウィンも食事には手をつけていない。が、シロだけは、どこにそれほどの量が入るのかと言わんばかりに料理を食べている。それを察してか、老夫婦は料理を出すのを止め、嬉しそうにご飯を頬張るシロを満面の笑みを眺めているばかりだ。


「じゃあ、食い終わったら俺はオストリンデさんの所に行ってくるよ。シロの事は任せるぞ?」

「えぇ、任せて。あんたは知ってる情報をちゃんと伝えるのよ?」

「お前は俺のオカンか」

「失礼ね! あたしはまだそんな歳じゃないわよ!」

「あー、はいはい、そうだったな。悪いな」


 頑張ってシロが食べてはいるが、まだ量の減らない食事を前に、テイクアウトとか出来るんだろうかと考え始めた一は、ニコニコの老夫婦に声を掛けた。


「すみません、これ……持ち帰りとか出来ます?」


 そう聞いたのだが、答えはせず、ニコニコとしている老夫婦を見て、大きな溜息と共に項垂れたのであった。





 昼食を何とか食べきり、量と合わないほど安い金額を払い、ウィンはシロを連れて旅の買い出しへと出掛け、一は研究室に篭りきりのオストリンデの元へと向かう。


「オストリンデさーん、入るぞー」


 何回かノックをしても一向に返事が無いので、何かあったのでは? と思い、研究室の扉を開けようとする。だが、一はこうも思う。もしかして、これはラッキースケベチャンスなのでは? と。きっと今、研究室の中では薬品か何かを溢して、着替え中のオストリンデがいるはず。人妻系の魅力があるから、きっとエロい下着なんだろうなぁ、とか馬鹿な事を考えながらも躊躇せずに研究室の扉を開けた。


「オストリンデさ……え?」


 研究室へと入ってまず目に入って来たのは、左手でイタチのような大きさのネズミを鷲掴みにして、右手で無色透明の液体が入った注射器を持ち、ニタニタと狂気じみた笑みを浮かべるオストリンデである。

 彼女の近くにあるテーブルには無色透明の液体が入ったフラスコがあり、その中には昨日に一が賢者の石を使って金にしたアケトーの葉が入っている。何か変なことをしている、というのはすぐに分かったが、何をしているのかまでは分からない。止めた方が良いのか、このまま見ている方が良いのか……それも分からないので、とりあえず止めた方がいいだろうと判断し、一は足早にオストリンデの元へと向かい、今にもブスリといきそうなその手を止めた。


「何をするんですか、ハジメさん! 離してください!」

「ちょっと待ってくれ、オストリンデさん。何しようとしてたか分からないけど、たんま。金にした物体じゃなくて、ちゃんとしたやつを渡すから、それを研究してくれ」


 怪訝そうな表情のオストリンデに溜息を吐きながら、一は首から下げている巾着袋を取り出す。


「流石にこれを渡すのは出来ないけど、俺がいる間ならいくらでも研究していいから。あとで結石水も作ろう」


 巾着袋から尿管結石を取り出し、オストリンデに見せる。


「アルメルディアのカッスラーの村で、この石に漬けた水が、どんな傷でも治す万能薬になったんだ。まずはそれを調べてほしい」

「伝承によれば、あらゆる状態異常を治し、不老不死に導く……聖なる水。ハジメさん、その水を与えた者はどうなりました?」

「文字通り、全部癒えました。切り傷だろうが、打撲だろうが、無くなった腕も生えてきましたね……」


 思い出すのはもう二ヶ月ほど前の事だ。カッスラーの村を襲った悲劇で、多くの人が亡くなり、怪我をし、絶望へと叩き込まれた。あの時は、この結石ポーションに大きな期待はしていなかった。ウィンが大袈裟に言っているだけだろうと、そう思っていたのだが、蓋を開けてみれば、その効果は賢者の石が持つ力の一端を垣間見る貴重な瞬間であった。


「試しに飲ませてみますか? オストリンデさんの患者さんの中で、重症者とかいます?」

「いえ、流石にいきなり人に投与するのは怖いですね。大きな副作用があるかもしれませんし、何より、知らない物を知らないままにしておくのは嫌なので」


 そんな事を言われると、確かに知らない物をいきなり人に投与するのは怖いよな、と当時の行いを反省する。とはいえ、あの時は緊急事態だった、というのもあり、深くは反省出来ていないのも事実だ。


「じゃあ、先に結石ポーションの効力をきちんと調べた上で、人に投与する、と?」

「そうなります。そして、もし可能なのであれば、その結石ポーションなるものが、賢者の石を使わずとも作れるのか、結石ポーションの力をさらに増幅出来るのか、そして……本当に不老不死の霊薬が作れるのか、試してみたいと思います」


 言葉はひどく冷静に聞こえるのだが、目はギラギラと燃えている。ドン引きするほどでは無かったが、それでもその眼力に押され、一歩を後ずさると、それに気づいたオストリンデが顔を赤くして、小さく咳払いをした。


「こほん、失礼致しました。とにかく、まずはその賢者の石が本物なのか、それを解析します」

「なるほど。でも……どうやって?」

「まずは、物体としての基本的な情報を調べます。硬度だったり、性質だったり……」

「分かりました。出発するまでの間、お手伝いしましょう。あまり役に立たないかも知れませんが……」

「いえ、心強いです」


 強気な笑みを浮かべたオストリンデに、一は少しばかり面食らったように眉を上げる。


「あぁ、そうやって笑った方が魅力的ですね、オストリンデさんは。いつものニコニコ顔も良いですけど、そうやって強気に笑った方が、似合いますね」

「ふえっ!? な、なんですかいきなり!」

「え? あ、いや、ごめんなさい、思った事をそのまま言っちゃった……」

「ハジメさん……」


 ジトっとした目で見つめられ、そのまま「はぁ」と溜息を吐かれる。


「もう良いです」


 まだジトっとした表情をしているオストリンデは、持っているイタチなのかネズミなのか分からない動物をゲージへと戻すと、ちょいちょいと一を手招きする。


「ハジメさん、こちらへ」


 オストリンデの元へ向かうと、彼女の前には大きな三角フラスコが用意してあった。中身は水だろうか? その脇には十数本の試験官と幾つもの素材がずらりと並んでいるし、その奥には、ずらりと巻物が積まれている。


「この中に入っているのは、普通に汲んできた井戸水です。後ほど、蒸留水やお茶、お酒などの他の液体でも実験を行う予定です。そして、こちらにある素材はどれも魔法薬の材料になるもので、これらを使って幾つかのパターンで魔法薬を作ってみたいと思います。なので、その前に賢者の石の組成を調べる必要があります」

「どうやって調べるんですか?」

「私は魔法が使えないので、今回使うのはこれ……魔法が込められた巻物、スクロールです」


 この異世界において、魔法を扱える者はそう多くない。魔法使いが特権階級となる中で、一部の魔法使いたちは、魔法を一般人でも扱えるようにする術を編み出した。

 それが、魔法を込めた巻物、スクロールである。

 このスクロールに使われる素材は魔獣の皮と無色の魔石の粉末だけ。これだけで平民でも魔法が扱えるようになる。仕組みは簡単だ。羊皮紙に魔石の粉末で作ったインクで魔法陣を刻み込むだけ。あとは大気中の魔力を羊皮紙が取り込み、自動的に発動する。基本的にスクロールは巻かれた状態で販売され、スクロールを開くことで魔法が自動的に発動する様に作られている。


「このスクロールは、知り合いの貴族に頼んで作ってもらった特注品なんです」


 そう言って、オストリンデは一本のスクロールを手にする。


「これには対象物の鑑定を行う魔法が込められています。基本的にはこの魔法だけでほとんどは鑑定出来ますが、これでも鑑定が出来ない場合は、これの上位魔法が込められたスクロールを使います」

「へぇ、じゃあ、俺でも魔法が使えるんだ……それは単純に嬉しいな」

「ハジメさんは存在自体がもう魔法みたいなものですけどね?」

「いやいや、俺は普通の人間だぜ?」

「普通の人間は、体内で賢者の石を作ったりしませんよ……」

「それもそうか」

「では、賢者の石をここへ」


 オストリンデが指差すのは、理科などでよく見かけるガラスのシャーレ。道具とかはそんなに変わらないんだな、とか思いながら、持っていた賢者の石を置こうとする。


「これ、直接置いても大丈夫? シャーレが金になっちゃうけど……」

「構いませんよ。いざとなったらそのシャーレを売りますので」

「じゃあ、遠慮なく」


 一は少しの躊躇を経て、シャーレの上に尿管結石を置いた。その瞬間、結石が触れた所を起点に金が侵食を始める。目の前の光景を見ているオストリンデは呆れた顔のまま、手にしたスクロールを開く。途端、スクロールに刻まれた魔法陣が淡いオレンジの光を放つ。


「道具鑑定!」


 オストリンデがそう言うと、スクロールに刻まれた魔法陣と同じ物が結石の上に現れ、そのまま下に降りていく。

 CTスキャンみたいだなぁ、と思っていると、魔法陣がフワッと消える。そして、オストリンデが手にするスクロールがまた淡くオレンジ色に光る。


「無事に鑑定出来たようですね」


 スクロールをテーブルに置いたオストリンデは、それを見ながら「ふむ」と考え込む。それに釣られるように一もスクロールを覗き込む。


「アイテム名……賢者の石。製作者、ニノマエ・ハジメ? なんだこれ、すごいな……分類とか化学式とか、硬度に成分、比重、屈折率とかも分かるようになってるのか。まるで異世界ウィキペディアだ……」

「でも、ほとんど空欄ですよ、ハジメさん」

「……なんで?」

「下位魔法では鑑定出来なかったと言う事ですね。上位魔法の方でないと鑑定出来ないのはちょっと面倒です」


 うーん、と唸るオストリンデには悪いが、一が見ているスクロールには空欄などない。全ての欄に詳細な鑑定結果が書かれているのが見えている。

 なんで? とオストリンデとは別の意味で唸る一は、この事を言うべきかどうかを悩む。

 これはアレか? 何か条件でもあるのか? と悩むが答えなど出るはずも無く、より眉間の皺を深くする他ない。

 そもそも、なんで俺だけが読めるわけ? アレかな? 俺がドラゴン語とかエルフ語を喋れるのが関係してる?


「なぁ、オストリンデさん? ちょっと聞きたいんだけど、この道具鑑定って一体誰が鑑定をしてるわけ?」


 そう質問したのだが、オストリンデはこてん、と首を傾げた。


「どういう意味ですか?」

「いや、こうやってスクロールに鑑定結果が出るってことは、誰かが鑑定をして、その内容をスクロールに記入してるわけだろ? それは誰がやってるの? 昨日の契約の精霊みたいな鑑定の精霊がいるの?」

「……ごめんなさい、そんな事を考えた事が無かったので、ちょっと答えに迷いました。でも、言われてみればそうですね。恐らくはそうなのだと思います。鑑定の精霊、がいるのかは分かりませんが……あの、それがどうしたのですか?」

「これ、秘密にしてほしいんだけど……」


 スクロールに視線を移した一に、オストリンデが眉を顰める。


「秘密に、って……何かあるんですか?」

「あー、ちょっと待って。言葉を選んでるから……」

「あ、はい……」


 そう言って、一は語り始めた。

Twitterでも言いましたが、出張に行ってきますので、もしかしたら次回の更新が出来ないかも知れません。

一応は、毎週土日のどちらかには更新出来る様に準備してますが、難しくなったらまたご連絡します。

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