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Project StarFighter  作者: 菅原やくも


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14/16

No.14

 数日後には、三回目の飛行試験が行われる予定だった。リアムは、考えていた計画を、そろそろ実行するときだと思った。真夜中、彼は再びパソコンへ意識を向けて、メールを作成した。今度はスターファイター計画に関するファイルを添付して、同僚ジムと弟マシューのもとへ送信した。

 それから、何食わぬようすで過ごし、試験飛行に取り組むことになった。


 監視のための戦闘機が二機、リアムの機体の後方を飛んでいたが、リアムは構わずに少しずつ予定航路から外れていった。戦闘機のパイロットは無線で呼び掛けたが、リアムは無視し続けた。

「こちらセプター1。試験対象は予定航路を逸脱しつつあり」

 異変に気が付いたパイロットが、コントロール室へ報告した。

「なんだと?! 応答は?」

「セプター1より、応答ありません」「セプター2、同じく応答なし」

「分かった」

 大佐は振り返って、オペレーターの一人に言った。

「すぐに手動制御に切り替えろ」

「はい」

 しかし、作業は手間取った。

「なにをぐずぐずしているんだ」

「それが、制御切替えが拒否されます」

「どうなっているんだ」

「私にも分かりません!」

 大佐はふたたび、追尾中のパイロットに指示を出した。

「セプター1、セプター2。試験対象の追尾を続けろ」

「セプター1、了解」「セプター2、了解」

 大佐はそれから、コントロール室のオペレーターの方を向いた。

「予想される飛行経路は?」

「まだ解析中です。ただ、おそらくは……市街地方面へ向かっているようにも思えます」

「リアムはいったい、なにを考えているんだ」

 大佐は突然の異常事態に戸惑っていた。

「こりゃ、脱走だな」教授がぼそりと言った。

「だが、逃げ出してどうするというんだ? 燃料が切れたら、そこで終わりだ」

「さあね」教授は肩をすくめた。「あるいは、気がおかしくなったとも考えられる」

 冗談めかして言ったが、額に汗を浮かべ、内心では気が気でないようすだった。

 大佐はまたオペレーターのほうへ向いた。

「通信の状況は?」

「少なくとも、こちらからの音声は、聞こえてるはずです」

 大佐はうなずいてマイクに向かった。

「リアム! 私だ。ヘンリー・トンプソン大佐だ。君は予定航路を外れている。テストは中止する。すぐに戻りなさい」

 しかし、すぐに返事はなかった。

「リアム・ミラー君! 聞こえているのか?」

「トンプソン大佐……私は、読みましたよ」

「なんの話だね?」

「スターファイター計画に関する文章です」

 その一言に、大佐は面食らった。

「なんだと……何と言った?」

「スターファイター計画は、大佐の統括する極秘計画ではありませんか?」

「なぜ、それを知っているのだ⁉」

「繋がっていたパソコンにあったファイルを、見たからです」

「なんてこった!」大佐は思わず悪態ついた。

「大佐、いったい、なにがどうなっているのだね?」

 先ほどから、すぐ後ろでやり取りを聞いていた教授も不安そうな顔だった。

「つまり、リアム・ミラーは、計画の全貌を把握してしまったということだ」

「それは……かなり、不味い事態ではなかろうか」

「もう、とっくに面倒なことになっている」

 大佐は少し考えてから、追尾中の戦闘機のパイロットへ向けて無線で言った。

「セプター1とセプター2に告ぐ」すでにその表情は、歴戦の指揮官のものへ変わっていた。「試験対象をターゲットに指定する。撃墜の用意をしろ」

「大佐、本気か!?」教授は途端に反論した。「あれは、機体は私の研究の集大成だぞ! 撃墜なんてされては、たまったものではない。私の研究をぶっ壊す気か?」

「教授、もしも機体が、市街地や民間の空港に降りたりでもすれば、どうなるかくらい予想がつくのではないか?」

「そんなことを言われてもだね、みすみすと、研究結果を目の前で破壊されてたまるものか!」

「だがこのままでは、これから先、研究ができなくなるどころか、すべての職から追放される可能性も高いぞ。選択肢はない」

 その言葉に、教授は言い返せなかった。そっぽを向き、肩を落として首を振るばかりだった。

「セプター1、セプター2、ターゲットを撃墜。必ずだ」

「セプター1、了解」「セプター2、了解」

 それから教授に向かって言った。「なにがあっても、部外者に知られるわけにはいかない」


 だが、リアムはそもそも敏腕の戦闘機パイロットであったのだ。初回の攻撃をかわすことなど、造作のないことだった。

 セプター1、セプター2のパイロットも、まさか空中格闘戦(ドッグファイト)という事態に発展するとはは想定外のことだった。兵装は各機、ミサイル二基と機関砲のみだった。

「セプター1、ミサイル攻撃を避けられた」

「逃がすな! 何としてでも撃墜、あるいは飛行不能な状態に追い込め!」

「了解」

 巧みに攻撃をかわしていたが、それでもやはり、武装がないだけリアムが不利だった。

 そして、一対二の戦いは、あっけない最期を迎えた。リアムのとった高機動に、〈F‐117(ナイトホーク)〉の機体は耐えられなかったのだ。実験のために改修さているとはいっても、しょせんは旧式の機体だった。結果、尾翼の一部が裂け、飛行不能に陥ると地上へ落ちていった。


 追い続けていた二機は、しばらく上空を旋回していたが、ターゲットが地上に落ちて黒煙を上げているのを確かめると、大佐へ報告した。

「こちらセプター1、ターゲットは墜落」

「セプター2より、ターゲットは墜落した」

「よろしい。君たちは帰還してくれ」

「了解」

 大佐が振り返って見ると、サンチェス教授はうつむき加減に座り込み、目頭を押さえていた。

 だが、感傷的になってなどいられなかった。次の指示を要員に出した。

「至急、回収部隊を向かわせる。私も同乗する」

「了解です」

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