No.13
「おや、大佐殿。浮かない顔をしているじゃないか」
「ここ最近は、いろいろと忙しくてね」
「だが、それだけじゃない、という表情だ」
「自律無人戦闘機XXは当面、試験中止だ。下手をすれば計画も白紙にされかねない。予算審議では、関係者の不祥事も槍玉にあげらた」
大佐はため息を漏らした。
「まあ、ご苦労なことだな」
「だがな、教授。スターファイター計画についても、国防省から疑問視の声が、ごくわずかだが出ている」
それを聞いて、教授の表情も曇った。
「うむ。なにか不味いことになりそうだが、大丈夫なのか?」
「何とかするつもりだ。無人機は後でどうにでもなるだろう。だが、こちらは……ここまで来たら途中で止めるわけにはいかないだろう?」
「それは当然だよ。これは、私の研究の集大成でもあるんだぞ」
「分かってる。あるいは、計画が凍結されたとしても、裏で継続できるよう手を打つ」
「それなら頼もしい限りだ」
トンプソン大佐が、軍部内の政治的なごたごたに手を焼いていたとき、リアムは見つけてしまった。
繋がっているパソコンには、もう見るべきものはないと思ったときだった。スターファイター計画に関するファイルを、見つけてしまったのだ!
その文章を読み進めるうちに、彼は愕然とした。自分の意識が、制御機器のなかに転移したなどいう、SF映画じみたことなど、あり得なかったのだ。
自身が、いわば極秘実験の被検体にされた、ということに怒りがわいた。その瞬間、もしも肉体が健在だったならば、目の前のパソコンを床に叩きつけていただろう。
大佐に問い詰めようかとも思ったが、考え直した。そんなことをしても、最悪の場合、自分が処分されて終わってしまうだろう。それよりも、このおぞましい計画を世間に知らせるには、どうしてやろうかと思った。
ここにある機密書類を、マシューとジムに送ろうか? だが、まがりにも機密情報を漏らすとなると、大きなリスクを背負わせることにもなりかねなかった。それかあるいは、自分自身がここから逃げ出すことも考えとしてよぎった。
いずれにせよ、時間は充分にあった。今はまだ、大佐の言うことに、ひとまず従っておくのがいいかもしれないと考えた。
その合い間に、計画を練ることにしようと思った。
そうして、また大佐と会話を交わすタイミングでリアムは言った。
「大佐、以前に飛行試験とおっしゃってましたね?
「ああそうだな」
「私は、やろうと思いますよ。パイロットとして」
「大丈夫なのかね?」
「はい」
いっぽうで大佐は、リアム・ミラーのようすが変化したことを意外に思った。彼が状況を受け入れ、指示に従うようになるまで、時間がかかると考えていた。
だが、若干の疑念があったとしても取るに足らないことだった。実験を継続できることに越したことはないのだった。




