夢と転校生
初めてのラブコメ初めてみました。
前回作の更新スピードと落とさないように更新していきます。
「ねえ、ともくん! なんで先にお風呂に入っちゃうの。一緒に入ろうって言ったじゃん!」
芸能人に勝るとも劣らない美少女が俺にそう叫ぶ。
「風呂くらい一人で入らせろよ。勘弁してくれ、凪咲」
「どれだけ私に我慢させる気なの! トイレについて行くのを我慢してるだけで限界なんだけど!」
そんな訳あるか。
トイレまで着いてこられたらたまったもんじゃない。
「黙れ変態! これ以上俺に付きまとうな。俺は一人の時間もほしいんだ」
「えー、なんでそういうこと言うのー。彼女じゃん! 私、ともくんの彼女じゃん!」
こいつ、俺の彼女であることを盾に使う気か。
だが残念ながら世間一般の彼女はそんな事しない。
「俺の彼女であることには間違いないな」
「ストーカーていうルビがついたのは気のせいかな! 気のせいかな! 誰がストーカーじゃい!」
凪咲は自分で自分でツッコミを入れる。
将来はツッコミマスターでも目指しているのだろうか。いや、お笑い芸人か?
「もう、うるさいな。いいかげん「よう! 仲良し夫婦!」」
不意に扉が開けられ、天パー男が俺のセリフを遮りながら入ってくる。
「あ、平山君。やっほー!」
「やあ、折川さん、知久。元気そ「お前はお呼びじゃない。今すぐお引き取りを」」
当然のように俺の家にやってくる天パー男に毒を浴びせてやる。
「辛辣 ! いいじゃん別に」
「よくない。俺の部屋は中二病が入ると爆発するんだ」
「そんなわけないよねぇ! つか中二病じゃないわ!」
「え!? 違うの!」
「今初めて知ったみたいな言い方す「真打ち登場!」」
漫才のようなやり取りをしていると、ムキムキのマッチョが入ってきた。
一体俺の部屋をなんだと思っているのだろう。
「ええーい帰れ! オカマは呼んでない」
「あら、ごめんなさい。ともちゃんに会いに来たんじゃないわ。俊くんに会いにきたのよん」
「ひいいー、やめてくれ! 俺にそっちの趣味はない!」
このオカマは俺以外のもう1人の男に会いに来たようだ。
「あら、つれないわね」
「ねえ、ともくん。みんな来たからお茶出したほうがいいよね。うふふ、夫婦みたい」
「おい寄るなああ!」
「そんなこと言わないでよん。いいじゃなぁい」
「てめえら全員帰れええええええええええええええええええええ!!」
◇◇
「えええええええええええええ!! ……え?」
……夢か。
変な夢だったな。
まるでカオスだ。
ついに俺もおかしくなったか。
よし今日は休んで精神科に行こう。
と母親に言ったらたたかれた。
ふむ、不満だ。
といいつつこうやって高校への道のりを歩いてるあたり、習慣というのは恐ろしく感じる。
歩きながら今日の夢を思い出す。
いつもならすぐに忘れるのに、今日だけはやたら記憶していた。
彼女、かーー。
現在絶賛募集中である俺に果たしてできるのだろうか。
ーー答えはノーだ。
まず前提として俺は全くモテない。
女子と話すだけでテンパるという重傷ぶりだ。
そして俺は変わり者だと思う。考え方は変だし、かなりの毒舌家だし、人をいびるの好きだし。
自分で言うのもあれだが、俺の顔は普通だ。
そしてこの変わり者具合と女子限定コミュ障ときた。
こんな人間を誰が好きになるというんだ。
よほどの物好きくらいだろう。
だが現実問題そんな人間に俺は会ったことがない。
あったら恐らく俺はもう彼女持ちだ。
とまぁ悲しい自分語りはこれくらいにしておこう。
学校まで道のりを電車に乗り、最寄り駅から歩き出す。
歩いて五分のところにある学校が、俺の毎日通う高校である。
埼玉県立山越北高等学校――通称山北。
自称進学校、文武両道を謳う偏差値高めの高校である。
いつも通り下駄箱で上履きに履き替え、教室へと向かう。
もうすでに結構な人数が来ていて、騒がしい。
「おいおい知久。朝っぱらからだるそうだな」
席についたとたん話しかけてきたのは、平山 俊。俺の友達だ。
天パがトレードマークのちょいイケメンだ。
「おう平山、お前の顔を見たらさらに気分が悪くなった」
「おい! そりゃねえだろ! ひでーな!」
「うるさいうるさ……ん?」
ん? なんかこいつの顔を見てるとなにか……あ!
「何だよ、俺の顔になんか付いてるか?」
「大丈夫だ。お前の顔を見ても吐き気を催すことはなかったようだ」
「おい! 吐き気催されたら傷つくわ!」
「え? 俺以外の人はいつもお前の顔を見て吐きそうになってるんだよ。いい加減気付きな」
「うーん、傷つく! そんなわけないよねぇ!」
「……」
「え、なんでそこで黙る! ねえねえ!」
ワーワーうるさい平山を無視し、思案にふける。
なぜこいつが俺の夢に出てきた? 仲いいからか?
まさか正夢? 予知夢?
「みんな席付け! SHR始めるぞ」
先生の言葉で平山はすごすごと自分の席に帰って行く。
「みんな喜べ。今日は転校生がいるぞ」
その一言で教室は沈黙する。
そりゃそうだろう。高校にもなって転校とか普通はない。
ましてやこの高校は人気であり、留年や退学は一人もでていないからすでに人数はいっぱいいっぱいのはずだ。
一体どうやって編入したんだか。
「盛り上がらないか。まあそうだろうな。今回の編入は特例だそうだ。よし、じゃあ入ってきてくれ!」
……は? は?
おいおいうそだろ。
入って来たのは文字通りの美少女だった。
大きな目に整った顔のパーツ。肩まで伸びる茶色がかった髪。肌は透き通るように白く、スタイルも抜群。
どこぞの芸能人かと見間違えるほどだ。
俺は思わず息を飲む。
それはクラスのみんなも同じだった。
たった一人の少女にクラス全体が呑まれた。
まるでそれが当然かのように存在感が溢れ出ている美少女が現れたら、呑まれるのも当然だ。
ーーでもあの子どっかで見たことあるような、ないような。
「思った通りの反応だな。それじゃあ自己紹介を」
「はい」
おおー、きれいな声だ。
って、え? 俺の方見てね? 気のせい?
「折川 凪咲といいます。竹林 知久くんの彼女予定です。よろしくお願いします!」
――は……?
待て待て待て何言ってんだこいつ。
意味不明すぎて訳が分からない。
あぁーっ! 思い出した。夢に出てきた女だ。
おいおいどうなってるんだよこれ。
よ、予知夢?
はは、まさかな。
こちらに向けてほほえむ彼女を見ながら俺は頬をひきつらせた。
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