魔王さま、囚われの身になる。
俺がなにをした!こんなやり方は横暴だ!訴えてやる!
「ピィちゃん、新しいおうちだよ。」
フン!どんなにトロールが可愛く言おうが、これは牢屋だ。
「ママ~。ピィちゃんが入っていた箱、ゴミ箱にパイしちゃうの?」
えっ…す、捨てるのか?
「うん、捨てておいて」
「はーい。」
ちょっと待て!ジャンピングボーイ!!
寝床とトイレが一緒のあの狭い城は嫌だった…だが、住めば都。
体にぴったりのあの箱の狭さが、心地良くなってきたところだったのだ。
タオルを被って寝るのは最高だったのだ!
なぜ、オレ様は投獄されなければならぬのだ!
オレ様が何をした!
ハッ?!
ぁ…まさかあの時、ママから感じた…いや予感はこれだったのか…。
恐らく、あの時ママは、オレ様がママの神聖な場所を汚したと思ったのだ。
だから、オレ様を投獄することにしたのか…。
この世界で一番強いママを怒らしたんだ。
何たる失態。
ママはいつもオレ様に服従しておったので、つい油断をしておった。
やはり…この世界の王。オレ様を油断させるとは…なかなかだ。
くそっ!!だが、魔力が戻らぬオレ様は抵抗のしようがない。く、くやしいが甘んじて…受けねばならぬ。
「ママ、ピィちゃんが自分からカゴに入ろうとしてるぞ?ピィちゃんって賢いな。」
あぁ、賢いさ。この世界のルールに従う事が今は一番だと…悔しいが一番だとわかるくらい賢いのさ。
トロールよ、週末になると酔って帰って来ては、ママに叱られておるが…いつかおまえも投獄されるぞ。
「おうち、ピカピカでよかったね。」
ジャンピングボーイ、この牢は金属だ。ピカピカは当たり前だ。
バカなおまえだったが、オレ様の城の横で騒ぐおまえを見るのが、ほんの少しオレ様の楽しみのひとつになっていたのだが…残念だ。
世話になった。
俺は嘴を使って自ら牢を開けると、頭を入れ落ちてくる扉を背中に受けて、足を牢獄の中へと入れた。
上を見上げると、空は見えなかった。金属の棒に囲まれたここが…この牢獄がオレ様の住むところか…。
「…ホントに入った。」
驚くトロールの声が聞こえたと同時に、ジャンピングボーイがジャンプしながら
「すっごい~!」と叫びだし、ママが困ったように言った。
「自分で出入りできるなら、ゲージの意味ないわね。はぁ~。」
大きなため息をついたママは、オレ様に向かって
「でもせっかく買ったんだから、ここ使ってくれる?」
そう言って、トロールに
「ゲージの出入り口を針金かなんかで止めて、開けててやって。毎回背中にガツンと扉が落ちてくるのは可哀そうだし。」
「だな。」
そう言ってトロールが笑うと、ママも笑い、そしてジャンピングボーイがジャンプした。
その後、何故だか扉が空いている…妙な牢屋となり、オレ様は投獄されたはずなのに、寧ろ前よりも自由にいろんなところに行けるようになった。
だが、わかっておる。これは…ママの罠だ。
今度、失態をすれば…恐らくオレ様は…
「ママ…。ピィちゃんがゴックンってしてるよ。何か飲み込んだのかなぁ…大丈夫かなぁ。」
「その辺の虫でもゴックンしたのかもね。」
「えっ?!ママ~大丈夫なの?!ピィちゃん大丈夫なの?!」
えっ?虫?今、虫って…
えっ?!えええええー!!今度失態をしでかせば…虫をオレ様に食わせるつもりなのか?!




