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魔王ピィさまの野望  作者: 夏野みかん
6/8

魔王さま、トレンドカラーを纏う。

オレ様はおしゃれだと自負しておる。





「はぁ~。迷惑かけるわね。」

そう言ってママは、オレ様の城の横に積み重なった絵本やらを、ジャンピングボーイの居住区へと持って行った。


確かにどうにかして欲しいと思っておった。

日々、雪崩の恐怖を感じながら過ごしておるからな。


しかし、相変わらずジャンピングボーイの言動は謎だ。


『これね、この石ね、翔くんからもらったんだよ。すっごいの!これを持っていると魔法が使えるって!』

…そんなもんがその辺にゴロゴロしていたら、オレ様はこんなところにはおらん。


『見て~。ゆかちゃんがぼくを描いてくれたの!』

…それはそもそも人を描いているのか?



はぁ~思い出しただけで頭が痛い。



ジャンピングボーイの理解不能な言動を思い出し、ため息がでた。

そんなオレ様にママが顔を近づけクスッと笑い


「でも、わかるな。」


わかるとはなんだ?


そしてママは、予想もしない言葉を言った。

「ピィちゃん、綺麗だもん。」



綺麗?はぁ?何を言いたいのだ?


ママはにっこり笑うと

「この場所は昔から、良輔の宝物置き場なの。まぁ石とか、半分ゴミのようなおかしの包み紙が宝物と言うのはわからないけど、ここにピィちゃんを置きたがった良輔の気持ちはわかるな。だって春のトレンドカラーのイエローやアイスブルーを纏って、ほんと綺麗なんだもん。良輔がピィちゃんを宝物だと思うのもわかるな。」


宝物…。オレ様が宝物?!

あの石とか、半分ゴミのようなおかしの包み紙と一緒だと思うと、少し複雑な気持ちもあるが…。

まぁ、ジャンピングボーイがオレ様を慕う気持ちはわかる、なぜならオレ様は魔王だからな。


フッフフフ…。



「あら?埃っぽかったのかな。ピィちゃんの声が変だわ。」


…えっ?今の笑いはオレ様の十八番なのだぞ?!あの笑いで敵をビビらせていたんだぞ。


「隣に避難しようか。」

はぁ~ママから見て、オレ様の笑いは大した事がないということか‥あぁ…魔王からどんどん遠ざかっていく気がする。




ぼんやりそんなことを思っていたら、どうやらママはオレ様の城ごと抱え、隣の居住区に入ったようだった。

おおっ!ここは…ママが外に出るときに、パタパタと顔を叩き、外の敵に対して気合を入れる場所!

尊敬の眼差しでママを見れば、ママはにっこり笑い


「待っててね。」


そう言って、オレ様の城を置いて戻っていった。


ここは神聖な場所なのだろう。

あのジャンピングボーイさえも、この台に触る事をママは許さないからな。


城から顔を出すと…オレ様がもうひとりいた。こ、これは…鏡だ。


なるほど、ここで威嚇する顔を作る練習もやっているのだな。

オレ様は(フッフフフ…)と鏡に向かって笑って見た。


‥やっぱりママの言う通りだ。


相手をビビらせる迫力はゼロだ。うっ‥ん、これは…笑い方が悪いんじゃない。この姿だ。そう言えば、オレ様をママは綺麗だとか言っていたな。だからダメなのか?!


城から飛び出し、鏡で全身を映せば、ママの言っていたイエローやアイスブルーを纏ったオレ様がいる。

この小さな鳥の姿を気に入っているわけではないが、ひっそりと悪の力を育むのには目立たぬ姿だ。

だが色は…ママが言うほど良いとは思わぬが…。


魔界ではオレ様は、魔王に相応しい色を纏っていた、もちろん黒、そして差し色として赤。

魔界の闇に溶け込む黒、そしてその闇の中で、ハッとする赤がある。


フッ…あの頃はオレ様はおしゃれだと自負しておったな。


しかし…今はなぁ…。


いろんな方向から、鏡に映る自分を見ているが…う~んやはり今一つだ。

ママはオレ様のこの羽の色を、春のトレンドカラーだと言っておったが…威厳はないな。


羽を広げてみた。


…ふ~ん。


くるっと回ってみた。


…へぇ~。


羽ばたいてみたら、羽に日差しがあたり、羽が透き通っているかのように見えた、


おおっ!こ、これは…良いではないか!



だが、バタバタと羽を動かしていたら、体が少し浮き鏡がある場所から、滑降するように落ちてしまった。



さすがにまだまだ飛べぬな

参ったな、さてどうやって城に戻ろうか…。


高い山を仰ぎ見るように、はるか上を見ていたら、良輔の宝物置き場を掃除していたママが部屋に戻ってきた。



良いところに参った、オレ様を城に上げてくれ。


だが、ママは俺をじっと見つめ、ゴクンと息を飲むと叫び声を上げた。


「わぁ~!!」


ママよ、大丈夫だ。ケガはしておらんぞ。心配は無用だ。


オレ様はママが落ち着くように、穏やかに言ったのだが、ママは難しい顔でオレ様を抱き上げると

「そろそろゲージに入れないと…。いけないわね。」


厳しい声と、その表情に嫌な予感がした。






そして…数日後、その予感はあった。オレ様はまたもや城を失ったのだった。

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