魔王さま、降臨①
「ここまでだ。もうあきらめろ魔王。」
「勇者と祭り上げられておるが、たかが異世界からやって来た人間ではないか!そんな人間ごときにひれ伏す言葉など持ってはおらん!」
そう叫んだオレ様の後ろで、魔城が…オレ様の城が、大きな音を立てて崩れていった。
魔界歴9758年、2月。
数千年続いたこの王朝が、勇者によって終わろうとしている。
「魔王。おまえのしもべ達はもう誰ひとりいない。おまえの魔力も、もう底を突く頃だろう。」
悔しいがその通りだった。
しもべ達は、ことごとくオレ様を裏切り、逃げて行ったのだ…最後の最後でひとりになるとは‥。
うっ‥そう思ったら、絶対、ぜっ~たい死にたくない!
くそっ!!あいつらを見つけ出して、ボコボコにしてやる。そしてあいつらを唆したこの勇者も、体制を整えたら、ボコボコにしてやる。
オレ様は勇者を睨みつけ
「必ず、戻ってくる。首を洗って待っておれ!」
カッコよくマントを翻し、残る魔力を全て使い、オレ様は旅立った。
そう、カッコよく旅立った。
…が、
たどり着いたのは人間の世界。勇者を育んだ世界だった。
そして、なんとカッコイイオレ様の姿は…。魔王の頃とは全く異なる姿になっていた。
「さし餌をしてますから、手のりになりますよ。」
あぁ、この声はあの太ったオヤジだ。
まだ目がよく見えないが、このオヤジのフォルムはわかる。
だが侮ってはならない。この男、どんくさいながらも拷問に長けているのだ。
拷問…
それが始まったのは、この世界へとたどり着いた日。
その日は絶望に打ちのめされ日でもあり、秘やかな情熱が静かにオレ様を満たした日でもあった。
今でも思い出す…。
魔力を使い果たしたオレ様は、しばらくはこの硬い殻の中で魔力を回復しようとしていた。だが、顔を殻にぶつけたひょうしで、殻にひびを入れてしまい、殻は崩れ落ちてしまったのだ。
魔力はまだ…回復はしていなかった。
だからオレ様の体は思いもよらぬか弱い姿で、この殻からでなくてはならなくなってしまったのだ。
ショックであった。
あまりにもかよわい姿に、オレ様はがっくりと肩を落とした。
でも匂いを感じだのだ。あの勇者の匂いを…。
それでここが、あの勇者を育んだ世界と知り、魔界に戻る前にまずはこの世界を、勇者を生んだこの世界を、征服してやると!
フッフフフ…。あの時、新しい決意が生まれた。
そう決意したら妙に腹が減り、とりあえず、オレ様は口に触れるものはなんでも飲み込んでいた。
だからだろう。うっすらと見えたこの男の指が、太くてうまそうなウィンナーに見えてしまい、思わずパクってやってしまったのだ。
その後からだ。
この男は今日まで…ベちゃとしてマズい黄色い穀物を無理矢理、口の中に押し込むという拷問をオレ様にしている。
勇者でなくとも、オレ様を苦しめる事ができるとは…。
恐るべし、勇者を生んだ世界!
だが、この世界の人間はオレ様を甘く見ていたようだ。なぜならあの拷問を受けてから、オレ様の体はたくましくなってきているのだ。きっと拷問に耐えることで、強靭な肉体を得たのだろう。
バカ者めが…フッフフフ…アハハ…
「手乗りになるの?じゃぁママ、この子に決めた。」
ちょっと考え事をしていたら…。こやつ、今…オレ様を見て何か言ったな。
何を言った?手乗りとはなんだ?だいたい決めたとはなんだ?この子供は何を言っているのだ?
ぼんやりとしか見えない目を細くして、じっとその子供を見ると、ニンマリした顔で子供が叫んだ。
「あっ!僕を見てる~!きっと僕の事が好きなんだ。」と言いながら、なぜだかジャンプをし始めた。
えっ?…いや、それはない。
ジャンプを意味なくする者を好きになどならない。
第一、初めて会ったおまえに、どうして愛情を感じるんだ。
ただおまえが、オレ様を見て何か言うから、気になっただけだ。
どこの世界でも、子供の言動はさっぱりわからん。
あぁ、考えるのも面倒だ、早く体力をつけ、魔力を取り戻して、この世界をわがものにしてやる。
フッフフフ…。
「あっ?!ママ、見た?!僕を見て、ピィピィって鳴いたよ。やっぱり僕の事が好きなんだ~。」
…いや、だから違う。
あぁぁ、もういい。相手をするのもキツイ。オレ様は寝る。
ほのぼのとした作品を書くのは初めてなので、どうなるのか心配ですが、のんびりと長く更新して行けたらと思ってます。よろしくお願いします。
恋愛物も新しい作品を近く投稿しますので、そちらもよろしくお願いします(汗)




