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二十三話「俺、戦況を変える」

「城門が破壊される! 敵が殺到するぞ!」


 三日目、その日も同じように防衛をしていた。しかし、こちらの物資は減る一方であった。何より兵士の数が違う。


 そして、ついにワイン樽が尽きたため、ビックリムの突貫を防ぐことができず、城門が破られる。俺は城門の後ろに長槍を持たせたゾンビを配置して、その時を待っていた。


 城門が破壊された瞬間、二匹のビックリムが大きな手足を振りかざし突入してくる。


「投槍開始!」


 俺はゾンビ共に命令を下す。前方にいたビックリムに雨のように槍を降らせ、勢いを止める。けれども後続のビックリムに槍を浴びせかける時間はない。


 ビックリムは自分の大きな一つ目を庇いながら、長槍の中へ突撃する。たった一撃で、槍衾は一瞬のうちに破壊されてしまった。


「クソッ、ゾンビ犬行け!」


 森で見つけた野犬を数匹獲得していたので、この時まで温存しておいた。ゾンビ犬は訓練された狩猟犬のようにビックリムに接近し、その大きな肉に噛みつく。


 だが、歯が立たない。ビックリムの厚い皮はただの牙では貫くことができなかった。


 次々とゾンビをけしかけるも、ビックリムはひるむ様子がない。その間にも、ビックリムの巨大な手足でゾンビの数は減らされてしまっている。


「ここまでか……」


 俺が対処する策がないことに呻くと、その横を通っていく影があった。


 メリア、ニィモ、ジル、リズの四人である。


 「応っ!」


 メリアの鋭く振られた重いメイスの一撃がビックリムの腰を叩き、その巨体をふらつかせる。


「にゃにゃにゃあ!」


 尻餅をついたビックリムにニィモの素早い斬撃がビックリムの肌に細かい切傷を作る。


「ほいっ!」


 ジルが軽快に跳び上がると、ビックリムの瞼の上からハンマーの強い衝撃を与えた。


「はっ!」


 ビックリムの巨大な腕を駆け上がったリズが弓を引く。放たれた矢は痛みに開かれたビックリムの瞼を目に縫い付け、ビックリムは狼狽えた。


「――! 瞼は思ったより薄い。目を集中的に攻撃しろ!」


 俺はゾンビを操り、ビックリムの目に殺到させる。その多くはビックリムの抵抗により弾き飛ばされるも。その間を縫って、数体のゾンビが目や瞼に噛みついた。


 歯が通ったのである。


 ビックリムは絶叫し、しばらくもがいていたが、動かなくなる。肌は真紅から赤褐色に変わり、目は死んだ魚の目のように白濁した色に変わる。ビックリムもゾンビ化したのだ。


 ビックリムが再び起き上がり、今度は城門の外へ振り返った。


 反撃の時である。


 ビックリムのゾンビ、ゾンビックリムはまず群がる豚科ローテイル族を見定める。豚達は突然仲間のビックリムがこちらを向き、何事かと見上げている内に大きな手の平で潰された。


 ゾンビックリムは豚達に噛みつく。しかしあまりにも体格差があり、豚達はゾンビックリムに噛み砕かれ肉片になってしまった。これでは再利用できない。


 後続の敵ビックリムも目の前の同胞の異常と敵意に気付き、身構える。大柄な二体はそうして取っ組み合いになり、豚とゾンビを巻き込みながら転げまわった。


 その一進一退の攻防も、他のゾンビ達の加勢により、最終的に敵のビックリムは瞼を噛まれた。こうしてまたゾンビックリムが生産されていく。


 次々と豚とビックリムをゾンビ化させ、こちらの戦力が城門に突入した兵士を上回る。ついにはこちらが城門から打って出た。


 敵は用心していたようで鎧を着こんだ人間の兵士が長槍の槍衾で待ち構える。それをゾンビックリムの集団が蹴散らし、掃除した。まるでローラー作戦のようだ。


 槍の壁は散り散りとなる一方、敵もやられているだけではない。今度は炎の魔法を唱えてきた。


 これは生前炎に強かったゾンビックリムは嫌がるそぶりはない。けれどもやはりゾンビなのか燃え始めた。


 風も敵軍の追い風となり、炎の勢いは増す。あまりに炎の壁は高く、こちらの軍は一度城門に避難した。


 その日は敵兵の軍の再構成もあり、それ以上の戦闘はなかった。


 こちらの戦果は敵兵五百以上を倒し、兵力は六百からゾンビックリムを含めて七百に増大した。


 戦力こそ増したものの、敵はまだ二千数百。けれども戦局は確かに変わりつつあった。




 四日目、口火を切ったのは敵ではなく、こちらのゾンビ達だった。


 今回は温存しておいたゾンビの兵士にある仕掛けをして送り出したのだ。


 どことなく光沢のあるゾンビとゾンビックリムらは城門より出陣し、敵陣に向かう。敵も基本に忠実らしく、長槍と炎の魔法による組み合わせは変わっていない。


 長槍の上を越え、ゾンビに再び炎が被せられる。


 だが、今度のゾンビは違う。炎に炙られても彼らゾンビ達は燃えることなく行進を続けているのだ。


 その秘密はゾンビの身体に塗られたものだ。その名前はパラフィン、もっと身近なもので言えば蝋燭の蝋だ。


 蝋は燃えやすいと考えるかもしれないが、実際は違う。火に当てられても蝋は引火せず溶けるだけなのだ。また気化した蝋は炎を勢いよく燃やす性質がある。


 これにより一時的とはいえ、ゾンビに炎は引火しない。また、炎は気化したパラフィンに触れ、勢い自体は増して敵兵にも引火する。


 敵がそうして混乱している最中にゾンビ達は兵士達に近づいた。感染が始まったのである。


 更に隠し通路からもパラフィンを塗ったゾンビを出陣させ、攻勢は順調であった。


 とはいえ、敵も指をくわえているばかりではない。新しく風の魔法や氷の魔法を試し、こちらのゾンビの足止めを行う。


 効果はまずまずあり、ゾンビは肉体を損壊したり物理的な足止めを喰らう。


 パラフィンも溶け切ってしまっては火を防ぐことはできない。時間を置くと、ゾンビ達は再び炎に脅かされ始めた。


 戦線が膠着したのところで、俺はゾンビ達に後退を命令した。


 その日、戦績は著しく、敵兵士は千八百まで減り。味方の軍は千近くにまで増えていた。戦力が逆転するのも、まもなくである。


 俺は勝利を確信して、ほくそ笑んだ。


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