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十三話「俺、エルフの村に滞在する」

「アンデッドに弓は効果が薄いわ。全員、抜刀」


 エルフの女性の指示に、後ろの男達は弓を担ぎ剣を抜く。全員が覚悟の表情だ。


 これではまたゾンビの戦力が削られると判断した俺は、ゾンビを庇うように前に出た。


「待ってくれ。俺達はアンデッドじゃない」


「むっ。上級アンデッドがいるわね。先にこちらを討つ!」


 エルフの女性は俺の言葉に構わず、剣を向ける。これはただでは耳を貸すこともしてくれそうにない。


「こ、こちらにはエルフの女子供がいるんだぞっ!」


「――卑怯な! 女子供は関係ないわ。放しなさい!」


「ああ、そのつもりだ」


「……えっ!?」


 元から身柄は引き渡すつもりだ。俺は女子供とエルフの女性の間に道を開けてやる。ゾンビの花道だ。


 しかし、エルフの女子供は怯えていて立ち上がろうともしない。


「仕方ないな」


 俺はゾンビに直接命令を飛ばし、エルフの女子供の後ろにいるゾンビに鳴き声を上げるように指示する。


 要するに羊を追いかける要領だ。反対側から追い立ててやって、無理やりに移動させる。その調子で女子供はエルフの女性の元へたどり着いた。


「これで信じてもらえたか」


「女子供を脅かすなんて! もっとやり方があるんじゃないの?」


 そう言われても、ゾンビに女子供をエスコートさせるにはやや役不足だ。これが精いっぱいの誠意とやらだ。


「どうした? 何かあったのでしょうか?」


「どうせまた、エルフの村人と揉めている」


「にゃにゃにゃあ。喧嘩はよすにゃあ!」


 ここでやっと後続のメリア、ニィモ、ジルが到着する。俺は顔に出さずとも、内心安堵した。


 そこから女性のエルフと話し始めたのは主にジルであった。俺のイメージではエルフとドワーフは仲が悪いと相場が決まっているが、そんなことはないらしい。古い旧知の仲らしく、親友の距離で説明と説得を行っている。


 話が終わったのか、リズがこちらに歩み寄ってきた。


「聖刻の者を疑って悪かったわ。謝らして。私はリズ、この度は失礼したわ」


 エルフの女性は名乗りながら、俺に頭を下げた。


「慣れてるよ。紛らわしいのは事実だからな。そう畏まらないでくれ」


「別に畏まっているつもりはないわ。ただ村の生き残り達を助けてくれたから感謝しているだけよ。ところで邪な勢力に寝返った領主を倒すための戦力を集めているそうだけど」


「おう、もしかしたら力を貸してくれるのか?」


「全面的に協力するのは無理ね。この村も現状を保つのがせいぜいよ。実際、邪な勢力を追撃していたら逆に村を襲われる隙を生んでしまったの。これ以上、被害を大きくはできないわ」


「そうか。期待してたんだがな」


「ただし、条件次第では私一人なら協力してもいいわ」


 リズは俺に条件を提示してきた。まず、村の再建を手伝うこと。次に領主の城を取った場合、報酬として城の財産の三分の一をエルフの村に与えること。ヒチの村が再建した時、一定の交流を図ることだった。


 一つ目と三つ目は同意できる。しかし二つ目の要求は些か強欲に思えた。


「城の財産の三分の一はやりすぎじゃないのか? 手伝うのはリズ一人なんだろ」


「私の腕は村一番だからね。心配はしないでいいわ。それにこれは私たちの村への慰謝料も兼ねているの。断るなら協力は無しよ」


「……五分の一でどうだ?」


「ダメよ。三分の一。それはビタ一文まけられないわ」


「ぐぬぬ……」


 俺が唸っていると、メリアが意見してきた。


「あのワイバーンのことを考えると、一人でも射手がいなければ攻略は無理でしょう。ここは譲歩すべきではないでしょうか」


 ああ、ゾンビも手先が器用で弓の扱いに長けていれば良かったのに。


 俺は渋々、リズの提案に乗った。


 リズは俺の応えに、悪戯っぽい笑みで返した。


「それじゃあ、まずは村の再建からね」




 ヒチの村の再建を後回しにしたにも関わらず、ヒチの村人たちはよく働いてくれた。


 家を建て直すのに必要な木の伐採と運搬はゾンビに任せ、細かい木の切りだし作業はエルフと村人で共同して行った。


 他にも夕方が近いと言うこともあり、炊き出しも始まっていた。幸い、いくらかの食料は燃えずに、略奪者達の持ち物にあった。


 ただ備蓄に肉が少ないと思った俺は、他の皆を呼んで狩に赴くことになった。


 集まったのはメリア、ニィモ、ジル、リズの四人だった。


「ニィモは俊敏なので良いが、私は戦力外なのでは?」


 メリアが言うにはローテイル族のニィモはその素早さから素手で狩りができるらしい。リズは弓を、ジルはエルフの村で借りたクロスボウを装備しているので問題はない。ちなみに俺は投槍を何本か持っている。


 ただメリアはメイス以外持ち合わせもなく、弓もクロスボウも心得がないそうだ。


「心配ないわ。メリアさん。貴女はここに居てくれるだけで助かるわ」


「そ、そうか」


「ええ、そうよ」


 確かにメリアは居てくれるだけで心強い。このメンバーの中で誰よりも屈強で背も高く、頼りになる。


 リズがメリアに近づいた。


「そうよ。このたくましい二の腕、それなのに白くなまめかしいうなじ。素敵よ。メリアさん」


 あれ? 何だかリズが纏う空気がおかしい。


「リ、リズ。少し近すぎないか。女性同士だから良いけれど、ボティタッチも何だか、いやらしくないか。私の気のせいかもしれないが」


「それはメリアさんの思い込みよ。女性は女性同士、こう濃厚な関係ではなくちゃ。綺麗よ」


 リズは顔を赤く上気させながら、顔をメリアに寄せる。自分の手をメリアの身体には這わせ、蔓のように纏わりつく。


 これは、あれだ。


「メリアには言い忘れていた。リズは村でも有名な女好きだ。付き合うには注意しろ」


「ま、待ってくれ。私にそんな気は」


「うふふふ。メリアさんったら恥ずかしがって。そんなに身体を強張らせなくてもいいわよ」


 俺はこいつの名前を聞き間違えたらしい。こいつはリズじゃない、レズだ。


「た、助けてケント!」


「何故俺に助けを求める。他の替え玉なら、こっちに二人いるだろ」


 ニィモとジルを指し示すと、二人はブンブンと拒絶するように首を横に振る。


「どうでもいいが、いちゃつくなら置いていくからな」


「見捨てないで、私は違う。違うから!」


 後はお二人でごゆっくり、と放置しようと思うも、俺は袖をメリアに捕まれた。


 間もなく日が暮れる。できれば早く狩を終えて村に戻りたいものだ。


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