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十一話「俺、ワイバーンに襲われる」

 領主の逃走により森での戦いに決着がつき、領主の軍勢は完全に敗走した。


 できることなら、このまま追撃をしたい。けれどもゾンビ達の速度は敗走する領主の軍勢については行けず、それは断念した。


 ゾンビ達は領主の軍勢の奮戦で大きく戦力を削られたものの、領主の兵士を更に取り込み、数は四百体をキープしていた。


 俺が領主の後を追い、居城を襲うかどうか考えていると、メリアが意見した。


「城攻めには十分な準備が必要でしょう。ここは一旦、村に戻って体勢を立ての直しては?」


「確かにこのまま城攻めは無謀か。そうだな。一度村に戻ろう」


 俺はメリアの勧め通り、村で準備をすることにした。


 まず取り掛かったのは、森の更なる伐採だ。今度は枝葉を付けたままにはせず、破城槌のように先端を尖らせて切り出す。他にも雲梯、つまり梯子を作らせてみる。こちらはあまり細かい作業に向かないゾンビには作れず、代わりに村人に制作を依頼した。


 同じ理由で複雑な機械である投石器も作成を断念し、代わりに屋根付きの手押し装甲車であるテストゥドを作る。こちらは車輪まで作れはしないものの、ゾンビの人並み外れた膂力で担いで歩けるようにした。


 他には攻城に必要な投石の石、投擲用の槍を集めさせ、村から貰った荷馬車に乗せる。これは馬がいないので、ゾンビに曳かせる。


 本来普通の兵士がいるならば、これに加えて食料水の確保が必要になってくる。ただこちらの戦力のほとんどはゾンビのため、その心配はなかった。


「この調子なら明日に城を包囲できそうだな。だが、いまいちゾンビの戦力が足りない。これ以上減ると、攻城は無理だな」


 メリアに訊いたところ、領主の兵力は逃げた兵士を加えても三百人ほどしかいないらしい。生前の知識だと城攻めには少なくとも敵の二倍、妥当な数では三倍の兵力が必要と聞いた覚えがある。


 ゾンビの頑丈さを考慮に入れても、後百体から二百体の戦力は欲しい。今のままでは攻めるのに際して不安が多々ある。


「死体が降って湧いたりしないかな」


 俺は半随意命令でほぼ自律的に動いているゾンビを傍目に、空を見上げた。


 空は吸い込まれるような淡い青で、異世界に転移する前の灰色にくすんだ都市の空とは比べようもない。


 遠くには絶景のウェズ山脈が脈々と続いており、所によっては雪化粧をしている。


 そんな風に遠くを眺めていると、俺の視界を遮る黒い影が頭上を覆った。


「何っ!?」


 再び頭上を仰げば、黒い影の正体がいる。それは飛膜の両翼を持ち、爬虫類の頭部をしている巨大生物。藍色の鱗に包まれ、口からは青い炎を蛇の舌のようにチロチロと出している。


「ド、ドラゴンか?」


「いえ、大きさからしてワイバーンでしょう」


 俺の感嘆に、メリアが注釈を付ける。感動したのに台無しだ。


「ドラゴンにしろ、ワイバーンにしろ、どちらも邪な勢力。つまり」


 ワイバーンは炎を出しているその口を更に大きく開ける。口から、村に降り注ぐ形で青い炎がなだれ落ちてくる。


「敵だな」


 村の建物やゾンビ達が炎に包まれた。


 一番最初に対処したのは、戦でも判断が早いメリアだった。


「村人は森へ! 生木ならばまだ燃えにくいはず。ニィモ、ジル。村人を先導しなさい」


 俺は村人の安否をメリアに任して、できうる対応を考える。


「ゾンビ共、石と投槍で迎撃しろ!」


 ゾンビ達は攻城のために用意しておいた石と投槍を持たせ、投げさせる。狙いは正確でなくとも、数打てば当たるはずだ。


 ところが、そもそもワイバーンの飛んでいる場所が高い。石や投槍は逆U字を描いて、地面に落ちてしまう。


 その間にもワイバーンは口から炎を吐き続けている。またゾンビ達が青い炎を受けて火だるまになった。


「ケント、森の中へ逃げて! このままでは巻き込まれる」


「クソッ! クソッ! クソッ! 貴重なゾンビ達が!」


 俺は止む得なく、燃える村とゾンビを捨て置いて、残りのゾンビと共に森の中へ駆け込んだ。




 若葉に彩られた新緑の森の上を、黒煙が延々と流れていく。森の下の方では、その煙と火から逃れた人々とゾンビが行き先もなく、彷徨っていた。


「アンデットの次がワイバーンか。ここも、邪な勢力に呑まれつつあるのでしょうね」


「俺の、ゾンビ達が……」


 逃げる間にゾンビは約五十体ほど犠牲となり、今は三百五十体ほど。上級アンデッドを倒した時よりも減っている。数だけで言えばまだまだいるが、領主の城を攻めるのは現状難しい。


 何より、定住地が攻撃されてしまったのだ。このままでは村人もゾンビも居場所がない。


「今は落ち着ける場所を探しましょう。戦力については、それからにしましょう」


「でも行き先なんてあるのかにゃあ」


「私に心当たりがある」


 意外にも声を上げたのは、ぶっきらぼうなジルであった。


「できれば死体がいっぱいあって、倒しやすそうな敵のいる場所で頼む」


「それは無理。だけど、ここから近い場所にエルフの村がある。そこなら落ち着ける」


 ジルの言葉に、メリアは苦い顔をする。


「確かにあそこは落ち着けるでしょうが、そもそも交流自体あまりない。私達を受け入れるでしょうか?」


「でも他に心当たりがない。行ってダメ元」


 俺はエルフ、と聞いてファンタジー映画やゲームに出る、耳の長い長命な種族を頭に思い浮かべる。


「それであっている。エルフは弓の達人、魔法の使い手が多い。交渉次第では戦力になるかも」


「そいつはいい。しかし種族というと、ニィモもジルも何かの種族なのか?」


「気づかなかったのか? 私はドワーフ族。ニィモはネコ科ローテイル族。メリアは人族。ところで、ケントは何族なの?」


「俺は、人族だ。……たぶん」


 俺のあいまいな答えに、ジルはあまり深く追及はしなかった。


「目的が決まったところで、行くか! エルフの村に。ところでどっちの方角だ」


「こっち、道は私が知っている」


 俺はジルに招かれるまま、期待に胸躍らせながら、エルフの村に向かうことにした。


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