夏の虫
初投稿です、稚拙な文ですがよろしくお願いします。
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カンカン照りの縁側で冷やした麦茶を飲み込み息を吐く。
普段は風鈴が鳴ると心が落ち着くのだが、なぜだろうか今日は落ち着かない。
暑さに溶けそうになる体を我慢しながら目の前の庭を眺め息を吐く。
我が家の庭では母親が植えた向日葵や金木犀の木などが青々と茂り、日中は蝉時雨が降りそそぎ夜になるとせっかちな秋の虫がひっそりと鳴く。
僕はこの縁側をとても気に入っていて、2週間ほど過ぎた夏休みの中で暇があればここで虫を眺め風鈴の音を楽しんでいる。
周りには山しか見えず何もないようなこんな田舎だが、この庭があれば構わないと思えるほどここは僕にとって楽園だ、きっと虫にとっても楽園なのだろう。
縁側からサンダルを履いて地面に足を着け不規則な大きさの飛び石を渡って楽園の内側から世界を眺め、足元に居る虫を踏まないようにソロリソロリと歩いていく。
蝉の死骸に蟻が群がり
草に擬態した蟷螂が息を潜め
木には蜘蛛の巣が張り巡らされ蝶が暴れている――
嗚呼、夏の虫は残酷だ。
長い時間をかけて必死に積み上げてきたものを一瞬で奪っていってしまうのだから
しゃがみながら見上げた僕の楽園は夏の日差しの中で必死に息をしていた。
「ねぇーどうせそこに居るんでしょ!」
玄関の方から僕を呼ぶ声が聴こえる。
曲げていた膝を伸ばして、声が聞こえた方向かって草の間から顔を出す。
「ほらーやっぱりいた!最後なんだから見送るくらいしてくれてもいいじゃん……」
白いワンピースに麦わら帽子を被っている幼馴染が僕に向かって叫ぶと、ずっと聴いていたくなる風鈴のような声が僕の楽園に響いた。
長い時間積み上げてきたものを今言わなければきっと後悔するのだろう。
「…………あのさ」
カラカラに乾いた喉から声を捻り出す。
――――――風鈴が揺れた。
引越しのトラックに揺られる君に手を振り、僕はその日初めて縁側で眠りについた。
――嗚呼、夏の虫は残酷だ。