表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

正門前 ~ヒロイン~


――――遠野高等学園・正門前



「ふわぁぁぁ!きれーい!!」


視界いっぱいに舞い散る綺麗な桜吹雪に、思わず声を上げた。

ぽかんと口をあけて見惚れていると、周囲からくすくすと笑い声が聞こえた。

結構大きな声が出ていたみたいで、ちょっと恥ずかしい。



「おい、アホ面してんぞ。」


ちょっとむっとして見上げる。

てしっと軽く頭をはたきながらけなしてきたのは、今日から同級生になる幼馴染。


ここ最近、イライラしているようで、今も呆れたように頭を叩いた癖に周りをちらちらと覗っている。


(???高校生になって緊張でもしてるのかなぁ??)


どうしたのかな、と思って顔を覗き込むと、ふいっと顔を反らされる。


「どうしたの??顔、赤いよ?風邪でも引いた?」


熱を測ろうとして手を伸ばすと、大げさによけられる。


「っ!いいからっ!ほら、早く行くぞっ!」


幼馴染に引っ張られながら、正門を通り抜ける。


(・・・・友達、たくさんできるといいなぁ。)




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



幼馴染の手を引きながら、彼は己の身に流れる魔性の血を思う。

彼女に触れているその手に、血肉に宿る異質なそれを。


鈍感な彼女には、この十数年間気付かれなかったが、それは奇跡のようなものだ。

この学園に入学すれば、自分の正体もそう遠くない未来に気づかれるだろう。


周囲からの突き刺さるような視線へ牽制するように睨み付ける。

睨み付けて、彼は惑う。


(・・・・俺も、あちら側、だけどな・・・。)


あちら側の存在が、彼女のそばにいていいのだろうか。

いっそこの身を裂いて、血を全て流せば、彼女と同じ存在になれるだろうか。いや、ただ死ぬだけだ。


異質な存在である自分がそばにいることへの迷い、彼女に正体を知られることへの恐怖。

それらを飲み込んで、彼は彼女の手を握り続ける。


(それでも、俺は、コイツを守る。)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ