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正門前 ~ライバル~

――――遠野高等学園、正門前


艶やかな黒髪を無造作になびかせながら、美しく舞い散る桜吹雪を無感動に眺める。

月神凪(つきがみなぎ)は、今日から通うこととなる学園の実情を反復する。


(・・・遠野高等学園、通称、妖怪学園。表向きは通常の高等学園、その実態は妖怪と人間が通学していて、妖怪監視・安全確保のため、陰陽師も数人に紛れている。目的は、『人間と妖怪の交流』となっているけど。)


それすらも表向きだろう。

数百年に一度、この地はある種災厄といってもいいほどの戦争(・・)が起きる。

この学園が建っている土地は、そういう場なのだ。

そして、私はその戦争に、一般生徒(・・・・)として傍観(・・)するために、ここにいる。


(といっても、傍観が許されるような生ぬるい場になるとは思えないけどね。)


おそらく、陰陽師、月神凪としてかかわることになるだろう。


平安時代より、陰陽道は『陽神家』と『月神家』の二家を開祖としており、現代にいたるまで、陰陽師と名乗るものはどちらかに所属している。

といっても、諸事情によって、月神家は私一人当主であるが。


それに比べて、羨ましいことに、陽神家は数千人の陰陽師を率い、政財界にも顔の利く、一大派閥となっている。


その陽神家に対して、一人とはいえ、二千年続く陰陽師一家の片肺なので、今回の入学は、月神家として、あくまでも形だけかかわるだけですよ、というポーズをとる必要があった。

要は政治だ。


私としても孤軍奮闘する気もなく、願わくばこの三年間を『一般生徒』として乗り切りたいものだ。

そのために、霊力を一般人レベルまで封じ、武器も検知されないような弱い札数枚のみ、カバンに忍ばせているだけだ。


普段の高防御力を誇る装束と違って、ぺらぺらとした化学繊維の制服が酷く頼りない。


ばれないように『妖力検知』はしていないが、一見平和そうな学校風景も、大妖が跋扈する学校だ。

禍々しい妖気に満ち溢れているだろう。


(気分としては、檜の棒と布の服で魔王ダンジョンに挑む、ってところかしら。)


即死間違いない。だが、下手に重装備をして、大妖やら陽神家やらのいらぬ興味を引くよりかは、生存率が増すというものだ。


(まあ、死のうが生きようが、唯我が月神家の領分を全うするのみ。)


ぴくりとも変わらない平坦な目で、死地ともしれない学園内へあっさりと足を踏み入れる。


――――月神家当主として、一般生徒として。






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