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こころのとも


「たのもーーー!」 パッシャーン!!


「保健室への入り方、もうちょっと考えたほうがいい。」


スライド式のドアを勢い良く開ける彰子に、凪は冷静に常識を述べる。


「どう入ったところで、入ることには変わりないんだから、いいのいいの!」

「いや、良いって言って良いのは保健医だけだから・・・、あれ?」


これだけ騒いでいるというのに、なにも言われない、と思ったら、保健室は無人であった。


(おかしいわね・・。この学園の特性上、保健室が無人になることは無いと思うけど。)


怪しみ始める凪をおいて、彰子は棚やら引き出しやらを勝手に漁ろうと近づいた。


ことり。


「ん?・・・・・・・・さっきまでここにこんなもん、あったっけ?ナギナギ?」

「・・・・・・・・いや、その机の上には何もおいてなかったはず。」


保健室のちょうど中央に不自然に配置された机の上に、治療に必要なものがおいてあった。


「え、これ自分たちで処置するってこと?」


いきなり現れたことも気になるが、医療品だけが出てきたということはそういうことなのだろう。


「んーー、まぁ、ナギナギの治療より優先させるほどのことじゃないし、とりあえずこれで応急処置して、あとで病院行こーよ。」

「うーん、気になるな・・・。」


悩む凪を椅子に座らせて、彰子は手消毒液やら脱脂綿やらを取り出して、手際よく消毒していく。


「結構エグレちゃってるねえ、ナギナギ。これだと、包帯しても開いちゃいそうだから、剥がすときちょっと痛いけど、テープで固定しちゃうよ?」

「んーーー?うん。それで宜しく。」


「・・・・・ナギナギ聞いてないでしょ。まあいいか。」


と、傷口をテープで固定しようとしたら、背後に気配を感じて、振り向く。


「?どうしたの?鹿毛さん??」

「いや、後ろに誰かいたような・・・・、・・・・・・ナギナギ。」


疑問符を盛大に浮かべるナギナギに、鹿毛彰子は引き攣った顔で告げる。


「なんか、もう、縫われてるんだけど・・・。ナギナギ、縫った?」

「・・・へ??うわっ、本当!全然気づかなかった!」


二人して顔を見合わせること数秒。


「ま、いっか!早く治療できてよかったよかった!」

「いや!!よくないから!誰かいるの!??」


臨戦態勢を取るナギナギを放置して、後処理を始める鹿毛彰子。


「はいはーい、そのまんまでいいから、包帯巻いちゃうよー。」

「くっ!何たる不覚!!気配に気づかないなんて・・・。帰ったら修行し「いや、怪我人だから、傷開くから、今日くらいおとなしくしてちょ。ナギナギ。」


と、鹿毛彰子に常識を説かれ、ちょっとショックを受ける。


「う・・・、わかったわ・・・。今日は大人しく帰って不貞寝するわ。ありがとう、鹿毛さん。」

「おう!ありがたがられました!・・・・ってことで、ねぇ、ナギナギ??」


包帯を完璧に巻かれて、感心していた凪は、手際よく片付けている鹿毛彰子から上目遣いで見つめられる。


「ありがたがるついでにさー、心の友なんだしさー・・・。名字じゃなくて、あだ名か愛称か名前かで呼んで欲しいなー、なんて。」


そう、お願いされて、友達0人から最近プラスワンしたばかりの凪にとって、ハードルが高すぎて硬直する。


(いやとっくにもう慣れてきたし確かに名字呼びって距離感じるけどこういうのって自然にというか相手から要求されないでこうそういう空気になったら呼ぶもんじゃないの!!????)


---はい、頭の中パニックです。うわ、呼ぶの待たれてる、どうしよう!


凪が、顔は無表情で脳では高速でパニクっているうちにも、鹿毛彰子から次々と提案される。


「やっぱり、名前呼びが良いなぁ!彰子(あきこ)って呼び捨てでも良いし、あきちゃんとかも幼馴染っぽいし、あっきーとか・・・・、あ、私がナギナギって呼んでるから、私のことはアキアキって呼ぶのは「しょ、(しょう)っ!」


いきなり遮る凪にキョトンとする鹿毛彰子。


「彰子って、しょうこって読めるでしょ!だ、だから、しょ、(しょう)でっ!!」


真っ赤になって、そっぽ向きながらいう凪に、段々と満面の笑顔になっていく彰子。


「彰・・・、いいね!あだ名だし、名前だし!うはーい!!!!ナギナギにあだ名で呼ばれちゃった!!」


喜び万歳三唱し始める鹿毛彰子を前に、赤い顔のまま、そっぽ向いたまま、恥ずかしさのあまり何も言えなくなる凪。

でも、知らず知らず、口の端は上がっていく。


(・・・・幸せだな・・。)



---それはどちらが呟いたのか。



幸せそうな少女たちには、どちらでも同じことであっただろう。







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