第三章
【カナタ】
〈イマガイズ〉
カナタのイマガイズはピンク色をしたウサギの着ぐるみのような外観だ。しかし、その三方に顔があり、耳も三方向に伸びている。頭頂部には縦に伸ばした銀の王冠が載っており、アンテナのようにも見える。
〈イマジン〉
カナタのイマジンはエネルギーを形として聞く。妙な表現だが、妊婦の胎内をエコーで映し出すようなものらしい。
彼女には飾有町中のありとあらゆるエネルギーを聞きわけることが可能だ。特に想像の力によって発生するエネルギーを聞きわけることで、イマジナルとイマガイズのおおよその位置を特定できる。
戦闘能力こそないが巡回班を強烈にバックアップする、〈ウィズダム〉になくてはならないイマジンである。
〈サブ〉
カナタのサブは自分の感じ取った外部情報を誰かに伝達するものだ。これにはイマジンで得た情報も含まれる。これにより、カナタは一切の機器を必要とせずに他者と情報を共有できる。
しかし、カナタはこのサブをその目的で使うことはほとんどない。それはこのサブが〈WIZ〉に向けられているからだ。
このサブで飛ばされる情報は一種の電波で構成されているらしく、それを機械でキャッチしモニターに出力することで簡単に情報を視覚化できるようになった。それにいくつか機能を付け加えたものが〈WIZ〉だ。裏を返すと、想像の力を探知する手段はそれまで存在しなかったため、カナタがいなければこの便利なソフトは完成しえなかったのである。
このサブはイマガイズなしでも発動できる。
【ヒカゲ】
〈イマガイズ〉
ヒカゲのイマガイズは古めかしく荒々しい作りの木彫りの面だ。
縦に長い面の上部と下部には腕のような盛り上がりがそれぞれあり、それらは顔に巻きつき締めつけているようにも見える。表情は苦悶そのもので、むき出しにされた歯はきつく噛みしめられている。対照的に目はうつろで、ぽっかりと空いた穴だ。
顔中に大胆な太い筆遣いでベージュの線が引いてあり、民族的なイメージを見る者に与える。
噛みしめられた口が開くことがあるらしいが、それを知る者はあまりいない。実際に見たものとなるとさらに少ない。聞いたところでは、その開いた口の中も目と同様の暗い空洞だったとか。
〈イマジン〉
イマガイズの目の穴からこぼれ落ちる、薄緑色の錠剤。これを口に含み、粘膜から体内に吸収させることで、人体は驚異的な治癒能力を発揮する。
ただし条件もある。それは錠剤を飲んだ後眠ること。原理は不明だが、錠剤は身体に元々備わった治癒能力を高める働きをしていらしい。そのためか、安静にしていないと効果が出ない。
ヒカゲは怪我人にこの薬を一錠ずつしか渡さない。巡回班に持たせたら便利そうなものだが、そうはしないのだ。何か理由があるらしい。
〈サブ〉
ヒカゲのサブは器用さの向上。といっても並大抵ではない。その精度はぱっと見ただけの髪の毛をメスで縦二本に両断できるほど。機械のように精密で、かつ人間の柔軟さも併せ持つ。
彼女が持つ医療技術は確かなものだが、このサブがそれをより一層強固にしているのは間違いない。
このサブはイマガイズなしでも発動できる。
【エチゼン】
〈イマガイズ〉
エチゼンのイマガイズは頭をすっぽりと覆う、密着したラバー質の白い膜である。顎の輪郭に沿って丸い金属のビスが等間隔で並ぶ。目の部分は丸く抜かれているが本人の目は見えず、真っ暗である。
〈イマジン〉
エチゼンのイマジンは力を蓄える白い膜。
膜は本人の手が触れた個所に密着するようにへばりついて出現する。二点を順序に触れることで線を、三点以上でそれを行えば面を出現させられる。
この膜の性質はゴムに近い。引き伸ばされれば元に戻ろうとし、押されれば跳ね返す。しかしこの膜がゴムと決定的に異なるのは、膜の柔らかさをエチゼンがコントロールできることである。柔らかくどこまでも伸びるようにもできるし、反対に車のタイヤのような硬さを持たせることも可能だ。どのような硬さであっても力を蓄えてから一気に開放する性質は変わらず、蓄えてから解放するまでの時間が左右されることになる。また膜の強度は一定のため、硬さに関わらず鋭利なもので容易に破壊される。
直接的な破壊能力こそないが、自身を膜ではね飛ばして高速で移動しその勢いで攻撃したり、敵を膜で覆い自由を奪ったりと汎用性が高い。経験豊かなエチゼンを象徴するようなイマジンである。
〈サブ〉
エチゼンのサブは身体強化。これはイマガイズなしに発動できない。
【クリン】
〈イマガイズ〉
クリンのイマガイズはサファイアのような青を基調とした、角つきの目元を覆う仮面である。くわがたのように上に伸びた青い角は、金剛光沢を放ち非常に目立つ。そこに金の緻密な装飾が上乗せされているものだから、はっきり言って悪趣味なほどド派手である。
〈イマジン〉
クリンのイマジンは一振りの剣となって現れる。両手で扱うような大きな剣だ。効果は正々堂々。
クリンが一対一で真正面から立ち向かう限り、その重厚かつ素早い剣から逃れることも、その剣を掻い潜り有効打を与えることも困難だろう。しかし不意打ちに使ってしまったときには、その威力は鉄の棒とさほど変わらない。
戦闘力は抜群に高いのだが、とにかく融通が効かない。長時間戦わせては突破される危険性がどんどん高まってしまう。そのため、遭遇初期にイマジナルの注意をひきつけるのが主な役目となる。その間にエチゼンとアケビがイマジナルの能力を割り出していくのだ。
〈サブ〉
クリンのサブはイマガイズをギラギラと光らせるものだ。なんの効果があるのかと思われるが、意外にもイマジナルはその光を無視できずに寄ってくる。
どういった原理かは不明だが、イマジナルの性質に訴えかけているのかもしれない。
当然、イマガイズなしには発動できない。
【アケビ】
〈イマガイズ〉
アケビのイマガイズは硬く繊維質で、前面は茶色いヤシの実のようだ。平行四辺形にくり抜かれた穴が二つ並び、そこから本人の目が見える。その左側は斜めにばっくり割れていて、ザクロの実のような赤紫のきらきらした粒が覗いている。顔の縁から濃い緑のつやつやした葉が重なり合うように生え、側面から後頭部にかけてを覆っている。頭頂部の葉っぱが二枚ほど立ち上がっているのがキュートだ。
〈イマジン〉
アケビのイマジンは蔓。彼女の指先から発生した蔓は、何かを伝ってどこまでも伸ばしていける。空中に伸びていくことはできず、必ず何かを伝っていかなければいけないという制限はあるが、侮れないほど素早く広がり、物音を一切立てない。
一本一本は非力なものの、絡まり合った蔓は強靭。イマジナルを捕らえたり、体に巻いて防具にしたり、ロープ代わりにワイヤーアクションをしたりと用途は様々。
〈サブ〉
蔓を生きた蛇のように操作できる。とはいえ絡まり合った蔓の力でも成人男性ほど。イマガイズに関わらず発動できる。
【ハスバ】
〈イマガイズ〉
ハスバのイマガイズは歯車ひしめき合う鉄仮面。顔の中央で四分割するようにフレームが十字に渡されており、対角の二枚しか鉄板で覆われていない。鉄板の目元、口元には縦にスリットが並んでいる。残りの二か所は歯車が剥き出しで、埋もれるように眼球や歯が組み込まれているのが見える。眼球には丸いシャッターが取り付けられている。
耳の辺りには大きめの歯車が飛び出しており、からからとゆっくり回っている。
歯車はハスバの感情やイマジンの発動によって回転速度が変化する。本気を出すとかなりすごい音が鳴るらしい。
〈イマジン〉
ハスバのイマジンは透明な歯車の形をした力の場。そのエリアに入った物体を任意で固定し、また回転させることができる。固定、回転の力は尋常ではなく、単純な力で逃れるのは難しい。
歯車は体の周囲にしか出せないが、自身に埋め込むように出したり、複数出すこともできる。
直接歯車を当てて攻撃するだけでなく、足に出現させて移動に使うこともできる。戦闘特化のイマジンだ。
〈サブ〉
ハスバのサブは身体強化。これはイマガイズなしには発動できない。
【オウナ】
〈イマガイズ〉
オウナのイマガイズは尖ったハート型をしている。上部は緑色だが、下部に行くにつれカラフルなモザイクに変わっていく。遠目で見ると下にいくに従って灰色に見える。
目はまんまるで大きく盛り上がっており、光っているかのような明るい黄色をしている。
〈イマジン〉
オウナのイマジンは柄が身の丈もあるハンマー。オウナはこのハンマーを軽々と扱うことができる。
ハンマーはちくわのように中空になっており、周囲は目の細かいタイル張りになっている。
このハンマーは叩いた強さに応じて、打ったものの構造を取り込むことができる。取り込んだ構造は次に叩いたときに、その強さに応じて展開される。つまり強く叩けば叩くほど、広範囲の構造を取り込み、内側まで構造を置き変えることが可能だ。しかし、オウナの力では表面を変えるだけで精一杯のようである。
このとき構造が置き換わっても、その物体自体の動きで支障が起きることはない。例えば、人間を石の構造で覆ったとしても、関節が固くなったり、動くとひび割れたり、あるいは血流が止まったりはしない。だが、外部から力が加えられるとその限りではなく、石そのものの強度で破壊されてしまう。
展開は何もない空中でも可能で、その場合構造が薄っぺらな壁となって出現する。
〈サブ〉
オウナのサブは身体強化。しかし、あまりに極端に強化してしまうため、オウナの体に並大抵ではない負担がかかってしまう。これはイマガイズなしに発動できない。




