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「たかが南米」という気構え

今後五輪代表のスタメンは、本大会まで背番号を決めないことにします。


なんでかって?めんどくさいからです。

 親善試合の会場は日本屈指の巨大サッカー場、さいたまスタジアム2002。今回の対戦相手はよくありがちな「欧州圏内での弱小」や「いかにもアフリカっぽい国」ではなく、本場南米でもそれなりの地位のあるコロンビア。故にスタジアムに集まったサポーターたちには「勝つか負けるか天のみぞ知る」的な、いい意味での緊張感が表れていた。


「まあ、今回あんた達はほんとにツイてるわよ。何せ、いつもならスポンサーに気を使って弱いとことしか試合させてもらえないところを、コパアメリカ(簡単に言えば南米王者決定戦)が終わって間もないコロンビアが来てくれたんだからね。負けても言い訳の立つ相手よね〜」

「親善試合の時点で負けたら総スカンものだろ。相手がどこだろうが関係ねえだろ」

 軽口を叩く叶宮監督に、友成はグローブをはめる傍らで吐き捨てる。

「俺は相手がどこであれ、どういう試合であれ、ゴールを決めるだけだ。だが、負けるつもりはこれっぽっちもねえぜ。監督のあんたがそりゃねえだろ」

 続いて剣崎のツッコミ。叶宮監督は笑って返した。

「いいわね〜その気構え。あんた達はスタメンにしがいがあるわね。大口叩いてくれるおかげで、あたしに向く矛先を変えてくれるんだから」

「いやいや監督。選手に責任押しつける前提ってのはさすがに・・・」

 叶宮監督の言葉に内海は戸惑うも、悪びれなく叶宮監督は続ける。

「この化物二人にはこれぐらいがちょうどいいのよ。あなたには彼等とその他大勢をうまく融合させるという任務があるんだから、頼んだわよキャプテン」

「その他大勢ってあんたねえ・・・」



スタメン


GK友成哲也

DF結木千裕

DF大森優作

DF内海秀人

DF真行寺壮馬

MF南條惇

MF亀井智広

MF脇坂レイモンド

MF末守良和

FW西谷敦志

FW剣崎龍一


 対戦相手のコロンビアU-23代表は、主力の一部が直前までコパ・アメリカを戦ったA代表に帯同していたために、ベストメンバーでは臨んでこなかった。欧州クラブに青田買いされたエースFWや、既にA代表で10以上のキャップを積んでいるボランチはベンチスタートであったが、それで日本代表と互角という力量はあった。

 事実、試合が始まるや、その鋭いパスワークに翻弄される。


「11番フリーだっ!コース切れ!!」

「寄せ甘いぞボンクラ!!判断早くしろっ!!」


 開始から主導権を握られると、内海のコーチングや友成の怒号がディフェンシブサード(ピッチを三分割したときの自陣ゴールから3分の1の範囲)で飛び交う。制空権は大森が、グラウダーのパスには南條が常に目を光らせていたうえに、友成の超人的なセービングで踏みとどまっていた。

「てめえらバカか?今対戦してる連中はそんじょそこらのパチもんじゃねえんだぞ!!俺ばっか活躍させんじゃねえよっ!!!」

 開始10分ですでに3本の決定機を防いだ友成は、そう味方に怒鳴り散らした。内海はともかくとして、どの選手も守備の動き出しが一呼吸遅い。速くて正確なパスを、これまた正確に柔らかいタッチでトラップするコロンビア代表。10分で対応しろというのはやや無理な話だが、ゲームに入り切れていないチームメートに、友成はいら立ちが募った。

「俺ばっかって・・・普通活躍すりゃ嬉しいもんじゃねえのか?」

 左サイドバックの真行寺壮馬のつぶやきに、内海は釘を刺すように返す。

「キーパーが目立つってことは、それだけ攻め込まれてるってことだ。このまま試合が終わったとしたら、俺たちボロクソ言われるぞ。『ザル守備』ってな」

「ひ、ヒデ・・・キツイね」

「たかが親善試合かもしんないけど、それでも代表戦に変わりないんだ。特に俺たち守備陣の評価は、劣勢の時にこそ試されるんだぜ」

「・・・。そうだな」

 一方で、友成も守備陣のプレーに落胆しているわけではない。むしろ、コロンビア代表の底力に舌を巻いていて、それに味方を呑ませないためにハッパをかけていたのであった。

(この力量でリザーブってか?やっぱ南米の連中はもともとの質が違うし、何より視野が広すぎる。互いを三次元で俯瞰してるからこそのパスワークだ。・・・・今のJリーグでこんなチームがいたら、向こう5年は優勝できるだろうね)



「う~・・・やっぱ中央への縦パスには弱いわねえ~日本人て。ずるずる横に逃げていく日本のサッカーとは違うわね」

 ベンチでふんぞり返りながら、叶宮監督は嘲笑を浮かべる。

「これって、やっぱりランキングの差なんですかね。あんまり言いたくはないけど」

「ま、それもあるけどね黒松コーチ。一番の問題はゴールへのアプローチの仕方ね。レベルが高い国ほど、形がないのよね」

「形がない?」

「あ~違う?概念がないってことかしらね。日本てとにかくフリーでゴールを狙う事に固持しちゃうじゃない。でも上位はそうじゃない。たとえ人がいたとしても、それが見かけ倒しならゴールを打つし、そもそもフリーになることが目標になってないもの。日本ってのは人数が足りてるのにゴールを割られることが多々あるけど、それは密集を相手の脅威にしきれていないってこと。ちょっと揺さぶると簡単にスキができるしね」

「だから、今こうして苦しんでいるってことですか?」

「あとは協会の見栄よね。親善試合で雑魚ばっか相手にさせて白星だけ積んで『史上最強』なんてお笑い草よね。100戦100勝でも相手が小学生だったら意味ないでしょ?」

「それは・・・極端でしょ。ってか、打開策はないんですか?押されっぱなしですけど・・・」

 すっかり横道にそれた叶宮監督の話に、黒松コーチが慌てて現実に引き戻すように会話を変えたが、叶宮監督は実にのんきなものだった。

「誰かが点を取るでしょ。特に今日の2トップならどっちにも可能性あるし。どうにかつなげば何とかなるわよ」

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