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余興・あの試合のマッチレポート

エルゴラッソやサッカーダイジェストをイメージして読んでみてください。

『歴史的初勝利と充実の敗戦のコントラスト』


 リーグ戦4試合目にして、尾道がクラブ史上初のJ1初勝利を収めた。監督解任という劇薬投入後間もない和歌山に対して、完成度の差を見せつけた。

 拮抗した試合が動いたのは前半30分。結木の突破から得たコーナーキックを亀井が押し込んで先制。そこから野口が立て続けにゴールを決め、わずか5分で3点のリードを奪った。

 ところが、前半アディショナルタイムに矢神のゴールが生まれたあたりから、試合の流れががらりと変わる。後半開始から今石監督がソン、バゼルビッチ、小宮を矢継ぎ早に投入してギアチェンジ。土石流のような勢いで攻め込む和歌山に「完全に呑み込まれてパニックになった(亀井)」尾道は剣崎のゴールで1点差に詰め寄られる。

 それでもベテラン荒川がピッチに入ると落ち着きを取り戻し、さらに荒川のゴールで再びリードを広げると「もう一試合やってるくらいに感じた(宇佐野)」終盤を耐え抜き、歴史的な凱歌をあげた。


採点・寸評

和歌山

GK1友成哲也 5・5

 荒川のシュートは一度防いだだけに無念。リスタートのキックは安定

DF4江川樹 5

 二木に仕事を許すなど期待外れに終わる。戦略上前半で退く

DF2猪口太一 6

 試合には負けたが、桂城とのタイマンは完勝。期待に応えた

DF34米良琢磨 5・5

 懸命に野口に対応も、身長差は補えず。糧としたい

DF32三上宗一 6

 積極的に攻め上がり良質なクロスを供給。成長している

MF8栗栖将人 5・5

 ポジションを前にしてから光始めた。ゴールには絡めず

MF24根島雄介 5

 スタメン起用に応えようとする気概はあったが、存在感なし

MF16竹内俊也 5・5

 マルコス井手とサイドで激しく戦う。優位には立った

MF13須藤京一 6

 果敢なバックヘッドでアシスト。次はゴールを期待したい

FW36矢神真也 6・5

 みそぎのゴールで後半のチームに勢いを呼ぶ。試合後は勝てずに涙

FW9剣崎龍一 6・5

 前半の沈黙は作戦。後半の2得点でエースの貫禄


DF15ソン・テジョン 6

 二木を潰して右サイド掌握。馬力で反撃の呼び水に

DF26バゼルビッチ 6

 投入早々から野口を抑えて、攻勢に出る味方を下支え

MF10小宮榮秦 6

 ファーストタッチでスーパーアシスト。格の違い見せつける


C 今石博明 6

 ぶっつけ本番ながら、今後の方向性はハッキリさせた




尾道

GK20宇佐野竜 5

 失点はノーチャンスも、キックの拙さばかりが目立った

DF17結木千裕 6

 彼にとっても古巣戦。好クロスで何度も驚異に

DF3橋本俊二 6

 DFリーダーとして踏ん張り、最後までリードを保った

DF5岩本正 5

 劣勢時に露骨にプレスを受ける。高さもこの日は活きず

DF2マルコス井手 5・5

 竹内を相手にしながら二木をフォロー。バランス維持で手一杯

MF10亀井智広 6・5

 見事な先制弾叩き込む。「10番らしさ」が身に付きつつある

MF6山田哲三 5・5

 剣崎封じの任務を懸命にこなすが、若いチームを落ち着けられず

MF16竹田大和 5・5

 スピードが活きず、よくも悪くも目立たなかった

MF7桂城矢太郎 5

 アシストで面目保つも、猪口に潰されて埋没した

MF22二木太一 6・5

 桂城に代わって前半は攻撃を司る。この日の収穫

FW18野口拓斗 6・5

 古巣相手にらしさ光る2得点。劣勢時にどうボールを引き出すか


MF15川崎圭二 5

 流れに呑み込まれ、却って劣勢に拍車を掛けた

FW9荒川秀吉 6・5

 追加点以上に、浮き足立ったチームを我に返した功績大

DF4布施健吾 −

 時間短く、評価なし


C 正岡忠満 6

 一度は裏目に出たが、冷静に耐え抜いて初勝利を引き寄せた


COLUMN ONOMICHI

~実感した手応えと痛感した課題~

「疲れましたね」

 会見場に現れた正岡監督は、試合の感想を求められると、開口一番そう漏らして苦笑した。

「結果というこれ以上ない成果を得た(野口)」ことで、選手たちは自分たちのサッカーに手応えを感じたはず。「今後は自信を持って戦えると思う」と、指揮官は歴史的初勝利のもたらす効果を期待した。

 同時にこう苦言を呈している。「ヒデ(荒川)を入れるまで自分たちがリードしていることを忘れてしまっていた。サッカーは点差を競うスポーツ。流れに呑まれて本質を見失うようでは(J1に)生き残れない。いい意味でもっと図太くなってほしい」とも。

 勝利という何よりも欲しかったものを手に入れた尾道だが、特に後半はどちらがリードしているのかが分からなくなるほど浮き足立ち「自分で自分の首を絞めている状態(橋本)」だった。勝ち点の重みが大きくなるシーズン終盤では、リードした状況でのメンタルコントロールが不可欠。痛感した課題をどこまで克服できるか。尾道のJ1残留への戦いはまだまだ始まったばかりだ。


FOCUS WAKAYAMA

~大胆さの裏にある今石サッカーの「もう一つの顔」~

 3年ぶりの、そしてJ1では初めての采配は、序盤の失点が響いて勝利を逃した。しかし、初陣にして今石監督はその采配で自身のカラーを全面的に押し出してきた。

 今石監督の采配は、この試合のスタメンを全員ユース組で固めるなど、『大胆さ』が代名詞となっている。しかし、その裏には『脆さ』も潜んでいる。

 尾道戦に向けて「このメンバーでは空中戦は自殺行為」と、本来講じるべき尾道のストロングポイントであるサイド攻撃対策を「強みといっても100%成功するわけじゃないし、そればかりになると単調になる」と放置し、猪口に徹底させた桂城潰しで「尾道の攻撃の選択肢を潰したかった」と意図を話す。今回の場合、和歌山が攻勢に出た後半、尾道は単調化したサイド攻撃から変化できず、「ヤタロー(桂城)さんが潰されて中央からの崩しがほとんどできなかった(亀井)」という声からある程度成果はあったと言える。

 考える策はとにかく非常識で、それを実行に移す大胆さはJ1でも唯一無二で、ハマれば十分に勝算はある。だが、今回のようにハマる前に大量失点を喫するなどリスクも大きい。この大胆さをどこまで押し通すのか。「命懸け」で目指すJ1残留。今石監督の采配にも注目である。





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