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成績と相反する「妥当な」終焉

新聞記事の囲みコラムと思って読んでいただければ。

 リーグ戦3試合目にして、早くもJ1で解任劇が起こった。

 不名誉な2015年の解任第一号となったのは、アガーラ和歌山のラファエロ・ヘルナンデス監督(当時)。近年何度もJクラブの新監督候補にリストアップされ、ACLでの実績もあり、和歌山にとって三願の礼で招聘した目玉であったはずだった。しかし、開幕から調子が上がらない中、選手に対する意見の相違から亀裂が生じ、直近の公式戦で連勝したにもかかわらず、新政権はわずか1ヶ月強で終焉を迎えた。ACL、リーグ戦の初勝利で「さあこれから」というムードに、少なくともサポーターはなっていた。故にタイミング的に首を傾げる見方も多く、その際にはクラブへ問い合わせがあったという。だが、長らく番記者としてクラブを取材している者として言うなれば、この解任はむしろ妥当な判断だった。タイミングにしても、立て直しの猶予期間を考慮すれば、「英断」と言ってもいいくらいだ。少なくとも現時点では。それほどまでにチームは瓦解し、ヘルナンデス前監督は士気を失っていたのだ。

 事の発端はリーグ開幕戦での出来事だった。FW矢神真也が、味方のFWアンデルソンに対し、「ゴールへの執念が無さすぎる」と激昂。反スポーツ的行為に懲罰交代の措置がとられ、翌々日には謹慎処分を受けた。だが、この処分内容にヘルナンデス前監督は最後まで反発していた。

「規律を乱し、味方に暴力を働くような選手はいても士気を下げる。解雇すべきだ」

 チームの規律を正すにはやむを得ないというヘルナンデス前監督の意見も理解できる。しかし、クラブ側は契約解除により生じるデメリットや本人の反省ぶりを考慮。ヘルナンデス前監督を今石博明GM(当時、現監督)と竹下智樹社長が説得して謹慎処分に落ち着かせた。

 だが、ヘルナンデス前監督はこの出来事をきっかけに、人が変わったかのように無気力な態度をとるようになる。元々多くない練習中の指示は皆無に近いくらいに減り、練習場の滞在時間も極端に短くなった。練習が始まってしばらくするまで現れず、来たと思ったらいつの間にか帰っていたなんてこともザラで、代わりに囲み取材を受けるコーチもトップダウン一辺倒で練習の意図がつかめない状態だった。取材陣以上に選手たちは戸惑い「なんか時間だけ使ったって感じ」と漏らす選手もいた。そして第3節試合後、完封勝利を逃したことに対して露骨な選手批判を展開し「大事な選手たちをこれ以上任せておけない」と、今石GMは解任を即断。「選手に甘いクラブの体質を変えなければならない」と退任会見でヘルナンデス前監督は発言したが、要求が通らない途端、欲しいオモチャを買ってもらえなかった子供のような態度をとるような人間に言われたくはない。

 しかし、ここで問われるべきは、ヘルナンデス前監督を就任させたフロントの責任である。早い話、同氏がこのクラブの特異性に適合していたかの精査が不十分だったと言わざるをえないからだ。

 今の和歌山がJ1まで登り詰め、天翔杯制覇の栄冠をつかむ土台を築いた要因は、今石GMやバドマン元監督があらゆる選手、プレースタイルを受け入れる懐の深さを持っていたことだ。それがシュート以外は素人同然だったFW剣崎龍一を日本代表に名を連ねるほどのストライカーに覚醒させ、「小柄すぎる」と揶揄されたDF猪口太一を対人戦とインターセプトのスペシャリストに昇華させた。GK友成哲也、MF小宮榮秦といったいわゆる「扱いにくい」部類に入る選手も、信頼と責任を与えるなどの操作術にも長けていたからこその躍進であった。確かに「守備の改善」と「初めてのACL」という不安要素を取り除く上で前監督の実績は十分で、逆にバドマン、今石両氏のような人材はそう多くないことを考えると、最良の選択だったかもしれない。しかし、少なくとも選手とのコミュニケーションを欠かさない姿勢や能力の有無を最優先に考えるべきではなかったか。前監督はその点は和歌山に不適合だったといわざるを得ないだろう。

 「残りのシーズン。人生かけてクラブを立て直す」と今石GMは尻拭いを決意。チームは今、その作業に腐心している。故に、今は監督人事についての責任の所在は問うまい。だが、どのような結末になろうとも、シーズン終了後には再検討する必要がある。「選手に甘い」のではなく「選手を大切にする」クラブであることを立証するためにも、責任を明確化しなければならないだろう(浜田友美)

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