親善試合での一コマ
日程の都合上、さらりと行きました。ACLぐらいには間に合いたい・・・。
「でぇやぁっ!!」
ゴール前の空中戦。競り勝ったFWがゴールネットを揺らした。日本代表の青いユニフォームに身を包んだ背番号25を、小宮は珍しく笑みを浮かべて出迎えた。
「ふん。成長してるじゃねえか。木偶の坊は返上してやるよ、野口」
「はは。そりゃ嬉しいや」
ここはシンガポール。小宮たちリオ五輪代表メンバーが、同国のU22代表との親善試合に臨んでいた。日本代表は圧倒的な実力差を見せつけ、今の野口のゴールで6点目。野口は初招集で2得点と結果を残して見せたのである。
今回はJリーグ中心に編成されており、アジアカップに飛び級出場した剣崎ら5選手と海外組が不在とあって初招集の選手も何人かいた。だが、その明暗はハッキリと分かれた。
「明」の筆頭は野口だ。和歌山での武者修行でストライカーらしさを増した尾道の生え抜きエースは、高さと強さに加えて判断の早さが加わって、小宮や近森のパスを引きだし、前線でタメを作りながら自らもゴールを決めるという満点解答を披露。他にも負傷した右サイドのレギュラーである菊瀬(新潟)に代わって招集された、名古屋のMF平内圭介がサイド攻撃から2つのゴールに絡み、大勝劇の裏で小野寺、大森の鹿島コンビを中心とした守備陣も集中した守りを見せた。無論、この日ゴールマウスを守った友成の存在も寄与していた。
一方で「暗」の筆頭となってしまったのは、不調が続いている亀井(尾道)と10カ月ぶりの招集となった浦和のFW九鬼。亀井はピッチから宙に浮いてしまう内容で、前半限りで懲罰交代。九鬼も先制ゴールを奪った後は完全に消えてしまい、同じく尾道から初召集となった結木はセンタリングでミスが見られ、清水から招集されたDF寺園はバックパスをミスるなど「落第点以上及第点以下」という苦い結果に終わった選手もちらほらいた。
「小宮は和歌山でどうも浮いちゃってるようだけど、憂さ晴らしによく司令塔として機能してくれたわ。それに野口・・・マジで頼もしいわね。海外組はこの年代はくすぶってるのが多いけど、性根入れないと入る余地がなくなっちゃいそうね」
試合後の囲み取材では、叶宮監督が饒舌にインタビューに答えていた。
「今回は剣崎とか内海とか声を出せるメンバーは呼んでないわけだけど、こういう試合展開で集中し続けた守備陣には頭なでなでしてあげたわね。五輪予選は格下から勝ち点だけじゃなく得失点差も稼がなきゃならないわけだし、ましてや本予選にそう言うのはいないわけだから、たかが親善試合と考えていない選手ばかりだったことが一番の収穫ね」
叶宮監督は良くも悪くも選手を名指しで評価する。べた褒めがある一方で容赦もない。
「亀井はいつまでひっくり返っているつもりかしらね。仮にもクラブで10番を背負う人間が年またぎで不振続きなんて呆れた話よね。今の日本代表にはボランチは腐るほどいるんだし、同じタイプの猪口が出てからは明らかに中盤の雰囲気が変わってゴールも奪っちゃった訳だし、いい加減立ち直らないのならゴミ箱ポイポイのポイよ。九鬼も久々に呼ばれたんなら2点は取ってほしかったし、不満も上げればきりがないわ。何を得たのかはアタシの知ったこっちゃないけど、代わりはいくらでもいるという事をもう一度全員肝に銘じてほしいわね」
五輪代表の戦いもまた真っ最中なのである。