傲 慢 第五話
俺の名は桐生潤之助。
自分で言うのもなんだがかなり名の通った浮世絵師だ。
風刺画や美人画を得意としている。
遊郭に通うのも勉強の為だ・・・ということにしておこう。
実際、遊郭にいる位の高い遊女ほど妖艶で美しい。
花魁は俺の前で、妖しく舞い自分を魅せる。
まるで、見られていることに悦びを感じているかのように。
そんな遊女の様子を俺は冷静に見つめ、絵に起こしている。
細部まで描く俺の絵は武士や奉行人など金を持ってる地位の奴らに評判が良く、
大枚はたいて買ってくれる。
清花の言うとおり、遊郭では引く手あまたで遊女たちが売り込んでくる。
それは、俺に描かれることを狙っているからだ。
俺に描かれるということはたくさんの金持ちの男の目に触れるということ。
金払いの良い客がつけば遊女として位が上がる。
最高級の花魁はそれだけで優遇される。
上物の客にありつけば身請けののち、正妻や側室の座にのし上がる機会もあるのだ。
清花は、俺と知り合った時はアキ、という名前の遊女だった。
笑顔がまだあどけない、かわいらしい女だったが、その外見からは想像もできないほど野望に満ち、
積極的に俺と関係を持つことを望んでいた。
出会ってすぐにアキは「私を女にして、絵を描いておくれ」と言った。
たぶん初めてだったのだろう。
苦痛に顔を歪め、必死でしがみついてきたのを覚えている。
俺は約束通り絵を描いた。
少女が女になる瞬間を描いたのだ。
その絵はたちまち上物として売れた。
アキの名は広く吉原遊郭に知れ渡りあっという間に清花という花魁に育っていった。
同時に、俺も清花の春画によって絵師として確固たる地位を築き上げたのだ。