傲 慢 第四話
「あなたの美人画は見るものすべてにため息をつかせるほど、妖艶で可憐よ。
お偉方がこぞって買いあさるのも魅力があるからよ。
お偉方がごひいきにしてる絵師に愛される私は幸せ者だわ」
「愛される・・・?俺に?」
「ええ、そうよ。好きだって言ったじゃない」
「言ったけど・・・そんな深い意味はないっつーか・・・」
清花は俺の言葉を途中でふさいで、せっかく正した襟元に俺の手持って行って忍ばせた。
「愛してるわ。潤之助・・・。
そのやわらかい髪、整ったきれいな顔、無駄のない身体。
・・・自信たっぷりのすべてがたまらない」
唇を重ね合わせ、くすっと小さく笑った。
「ねえ・・・今日は朝までいてくれる・・・?」
「・・・なんだよ。この間もそう言って離さなかったじゃねえか。
俺、この後も約束が入ってるんだよな・・・」
「いいから。一緒に居て。潤之助・・・」
そういいながら清花は、挑発するように俺にもたれる。
いつもの笑顔がかわいいんだけどな・・・。
そう思いながらも、俺は流れに身を任せる。
清花は、帰る素振りをあきらめた俺を見て、嬉しそうに酒をつぎ足した。
清花と夜を共にする事はよくあることだ。
これから先は、客と花魁の一線を越えた付き合いになる。
・・・そこに、愛しさなんてものはなくて。
俺は・・・愛というものを感じたことがない。知らない。