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傲 慢 第一話
ここは天下の歓楽街、吉原遊郭。
夜な夜な、男と女の物語があちこちで繰り広げられている。
俺は、この町が好きだった。
食うか食われるかのこの世界は、刺激的で、飽きない。
煌びやかな衣装を身にまとい、蝶のように舞う遊女たち。
その甘い香りと派手な色に誘われ男どもは今宵の場所を決める。
そこには、騙し合い、愛し合い、いろんな「合い」が渦巻いている。
清花はこの遊郭では一番と名高い花魁だ。
彼女の姿、立ち居振る舞いは、見るものすべてを虜にしてしまう。
妖艶で美しく、頭もキレる。
高い志を持ち、けして人には媚びない。
そんじょそこらの男に落とせるはずもない。
だからこそ、清花には価値がある。
俺は毎夜、会いに来る。
俺に心を許している清花は、誰にも見せない顔をする。
その絵は、毎度高値で売れる。
絵が売れ、俺の名前が売れると、仕事が舞い込んで来る。
清花も、名前が一層売れわたる。
二人にとって、好都合な事ばかりなのだ。