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会話


…どうしよう


金色の髪をした少女はじっとフォーを見ています。


…何か 何か言った方がいいのではないだろうか?


フォーは今での人生でこういった問題に悩んだことが無いのでひどく困りました。

コミュニケーションが苦手というよりも知らなすぎたのです。


それどもフォーは必死で考えました。


…自分はこの子に初めて会ったので知り合いとして尋ねてきたわけではないだろう。

…かといって自分に用があったとは思えない


フォーは自分がいかに無知で役にたたない人間であるか、それが客観を持ってしてもその通りだと揺るぎなく理解っていました。


…では 何故この少女は自分のところに?

…サーカスの人間だから?


しかしサーカスへの憧れや物見を目的として来たのならばこんな裏の古ぼけたテントを覗く事はないでしょう。


フォーは膝を抱え、少女を見上げたまま微動だにせず考えていましたがやはり少女の目的がわかりませんでした。


…やはり自分は何か人として欠落している部分があるのかもしれない、

…だから彼女の思う事も理解する事ができないのかもしれない。


そう やりきれない気持ちで考えていると先刻からまったく動いていない自分に気が付きました。


…せめて立った方がいいだろうか?ずっと見上げているのも失礼かも。


そう思い 今一度少女を見遣ると少女も先刻からまったく微動だにしていないように感じられました。


…あれ?



…もしかしてこの子、困っているのだろうか?

…私はこの子に会ってどうするつもりだったのだろう?


…自分が何か言った方がいいのかもしれない


…あの声に惹かれてここまで来てしまったけれど

 その事をそのまま言えばいいのだろうか?


…同じ年位の子となんてまともに話した事がないから

 何をどう話せばいいのかわからない


…「感動しました」「この村は初めて来たの?」

 「あの歌なんていう曲?」

 「素敵な声ね」「すごく良かったです」

 「…ところであなたは女の子?」

  

 なんて言えばいいのだろう、どの言葉も陳腐な気がする




…ああ

…ううん でも



      …少しでいいから話をしてみたい…  







無言の空間


思考だけが積み重なります。


言葉にしてしまえばどれほど容易いか。


幼いことが無邪気と同意ではないのです。


他人との関わりに恐れを抱いてしまった時から子供は小さな孤独を一生必死に支え続けるのだから



大人になってからも


闇に呑込まれて泣かないように




チリン



チリン チリン チリン


  チリン…



思い出したかのように鈴の音が二人の耳に届きました。

その音があまりに澄んでいてリノは、いいえ その音が呼吸のようになっているフォーすら驚きを隠せず小さく声をもらしました。


「綺麗な音ね、…前そういう飾りを踊り子さんが付けていたのを見たの。あなたも踊りを?」


先刻までの緊張が嘘のように、滑らかに喋る事ができたことをリノ自身ひどく驚いていました。


「ううん、いや  自分は歌だけ」


言葉があるだけでこんなにも空気が柔らかくなることにフォーは初めて気が付きました。

そして初めて、両手足首の鈴の音が少しだけ好きになりました。



「あの…きみはどうしてココに来たの?サーカスの人達は表にいるよ?」


「それは、ええ  私は…昨日広場で、その…」


リノはまた軽く言葉につまりましたがフォーの視線に咎めや責めがまったくない事を感じ

焦りを静めまとまらない考えを飾る事無くけれど誠実に言葉にしました。


「昨日広場であなたの歌を聞いて とても気になったの。すごく苦しくて、怖かった。なんて言えば…いいんだろう、恐ろしかったけれど 胸が潰れるかと思ったけれど 耳を塞ぐことはできなかったの。…のみこまれるかと思った。 


 あなたが神だというのなら 私はきっと信じてしまうわ」

 

 




最初はとても慎重に言葉を選びとぎれがちだった声

けれどその最後のセリフだけはあらかじめ決まっていたかのように


既に確信しているかのように


同じ人間が発したとは思えないほど

はっきり

疑いようもなく本心から言葉にされました。



「神」


呆然とその言葉の意味をフォーは考えます。


「自分が?」


神  神


 神


       …神様


どうしてだかいつだってついてまわる


そしてどうしてその事を会って間もない少女の前で口にしたのか



「自分は神への捧げモノなんだ」



何度も何度も

胸の中で呟いていたセリフ


深い水底のような心の奥で意識している事

諦めを含む吐息にまぜて吐き出していた感情

嗚咽を堪え歯を食いしばった時に押し殺していた悲鳴


…それを言葉にすると


「自分は『神』のモノなんだ」


…自分は恐らく、ひどく情けない様子をしている事だろう


この村の人間は神への忠誠心があついと聞いたから

この子…リノは『神の贄』という事をどういう風にとらえるのかわからないけれど。




リノははじめその子が言った事がわかりませんでした。

ただ その子…フォーの表情が、恐らくリノとそう歳がかわらないであろうフォーの


あまりに… 


「あきらめ」になれてしまっているその表情が。


リノはテントの入口布から手を放し少しだけフォーに近づくとそっと屈みました。


互いの視線が水平に合わさる高さ


フォーは少しびくりと身をひきました。


リノは普段自分から人に近寄る事をあまりしない少女です、


なぜなら 拒絶が怖いから。


けれどフォーが身をひいたのは『拒絶』では無い とリノは一生懸命自分を奮い立たせ



もう一度


今度は先刻よりも小さな声で

物心付いた時には確信していた事を

知らなくても理解っている事を

この村の人間として言葉にするのは禁忌である事を。



「あなたが神の為に在るのではないわ『神』が『あなた』の為に在るのよ」



なんだかこのへんはまどろっこしいあたりです。

一応最後までできてはいます。中間ちょっと変更したいけど。

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