表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

それぞれの思い


たった一人

親も兄弟もない子供を殺す


誰が悲しむわけではない


生贄にしなければこの世界が崩れてしまうかもしれない


これは占いだから 馬鹿げていると言う者もいるかもしれない

けれども私達はこの占いを信じてきた

災いが起きると言われれば それを防ぐ為に言われたようにしてきた


では嘘かもしれないから生贄なんぞださなくともよいと思われるか?

では嘘ではなかったら?



私達はいつだって信じて実行してきた

だから占いが外れたという結果を見ていない

実際私達の村は大きな災いに見舞われたことはない


嘘か真実か


わからないのなら最善をつくそうと考えるのはそんなに奇妙しなことだろうか?


たった一人の子供を世界とくらべられるか?

生贄に差し出さず災いが起こってしまったら?

世界が終わってしまったら?




子供ではなく自己犠牲に溢れる老人を生贄にしたらだと?

それでは駄目なんだ占いでは子供を指定している

あの少年ではなくてはいけない

あの少年を殺さなければ

生贄に


さぁ 生贄を探さなくては





                    ◆




「フォー、歌を…歌を聞かせてくれる?」


「え」


「あの…あのね、初めて会った時に広場でフォーが歌っていたのを聞いていたの。でも…それから一回も私聞いてなくて…よかったらもう一度聞かせてほしくて…。あ 嫌ならいいの!お仕事で歌ってたのにお願いしちゃ駄目だったかなただすごく上手かったから…」


 

もう一度聞きたいなぁ と最後は小さく消えるような声で、おろおろと赤面して俯いてしまう。


素足で踏む草は柔らかく 声さえ溶けるように静かな草原


逃げられぬ場所から逃げている まるで小さな空白の時間


神が見落としているかのような瞬間



ただ仲良く手を繋いで歩いている二人を咎め

永遠に別つ事をしようとする沢山の人間


泣きじゃくって「どうして?」と叫んでも大きな力には歯が立たないこと

小さな声があまりにも無力なこと


二人はちゃんと理解っている



だから今泣くことはしない

歩いているのは逃げ切れると思ってではなく

立ち止まらない為




少年は今では自然になった微笑みを浮かべ小さく息を吸い込み


そして旋律を紡ぐ





短いので連続投稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ