表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/204

第六章 雨に流されて (4)

「あの二人が生きている可能性はあると思うか? もし生きていたら、どうするべきだと思う?」


 カンエイは顔を近づけて、挑発的に微笑んだ。そんな態度にも決して臆することなく、リキはカンエイを睨みつけている。


「カンエイ殿、どうぞこちらで飲みませんか」


 見兼ねたシュウイが歩み寄り、カンエイを促す。しかしシュウイの言葉など届かぬ様子で、カンエイはリキを見据えたまま動かない。

 カクヒと母は心配そうに顔を見合わせた。


「もし生きていたら、一番困るのはあなたでしょう。討たれる可能性があるんだから」


 リキは凛として言い放った。

 カンエイの口元がぴくりと震える。周りで見守っていた皆が息を呑み、カンエイの顔色を窺っているのが分かる。

 シュウイがさらに険しい顔をして、リキを睨みつける。


「私が討たれると? なかなか面白いことを言うじゃないか、リキ殿」


 酔って重くなった瞼を引き攣らせて、カンエイは苦笑する。その表情から明らかな焦りを感じ取ったリキは、得意げに微笑んだ。


「面白い? 気を付けないといけないんだから、本当は怖いんじゃないの?」

「リキ、口を慎めっ!」


 声を張り上げて駆け寄るシュウイに、カンエイは手を翳して制止した。懸命に穏やかな笑顔を作ろうとするカンエイの心が、決して穏やかではないことは誰の目にも分かる。

 広間の張り詰めた空気の重苦しさに皆が動きを封じられ、二人をただ見守っている。

 カンエイの肩越しで、シュウイは唇を噛んだ。


「リキ殿、私が東都殿など恐れると思うか? 恐れているのなら、こうして私が北都を治めることもなかったであろう?」

「そうでしょうね、あなたは恐れを知らない人でしょうね」


 差し伸べられるカンエイの手が頬に触れそうになる。

 それを寸前で避け、リキは淡々と言い返して背を向けた。広間を出て行くつもりだった。


「リキ殿」


 引き留める声にリキが振り返ると、


「後でゆっくりと話がしたいのだが、私の部屋まで来てはくれないか。無理にとは言わないが……なぁ、カクヒ殿もよろしいかな?」


 と言って、カンエイは嫌悪感に満ちた目で微笑んだ。

 リキは動じることなく、カンエイを見据えている。その向こうで、カクヒは愕然と唇を震わせていた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ