第四章 秘密を抱いて (3)
ほの暗い灯りの揺らめく小さな部屋は重苦しい空気に包まれていた。
リキとソシュクは、ベッドに横たわるリョショウを見つめている。
二人から目を逸したリョショウは、溜め息を吐き唇を噛んだ。
「聴こえているのか、絶対にこの部屋からは出るな」
ソシュクの低い言葉が、小さな部屋に重く響いた。その険しい表情から僅かな苛立ちを感じ取ったリキは、不安げにリョショウを見つめた。
しかしリョショウの返事はない。
目を覚ましたリョショウは、リキが宴の時に見た姿とは一変していた。全身に刺々しさを帯び、リキにもリョショウに対しても警戒心を剥き出しにしている。
用意した水や食事にも手を付けず、リキに対しても一切口を利かない。
「分かっているのか、お前のために言っているんだ」
苛立ちを露わにするソシュクに、リョショウはゆるりと目を向けた。
ソシュクを見据える彼の目には、カンエイを送った時と同じ冷ややかさを湛えている。
その視線はソシュクの隣りにいるリキにも向けられた。突き放すような彼の視線に温かさなど全く感じられず、宴席で見せた笑顔の欠片もない。
「俺の剣はどこだ、返してもらおう」
「私が預かっている。その傷ではまだ剣は握れない。今はその傷を治すことだけを考えていればいい」
諭すようなソシュクの言葉さえも、リョショウには届かない。
「アイツはどこにいる」
「都督府だ。都督府と屋敷を占拠している。だから北都の都督と家族は私の屋敷にいる。この部屋には誰も来ることはない。部屋を出なければ安全だ」
リョショウは明らかに敵意を抱いている。
彼が激昂して部屋を飛び出さないように気を遣い、ソシュクは努めて穏やかに答えた。
「お前たちも寝返ったのか」
「寝返ったのなら手当などしないで、とっくにアイツに引き渡しているだろう」
と、ソシュクは微笑んで見せた。
それはリョショウの不安を拭い去ろうとした、精一杯の笑みだった。