第四章 秘密を抱いて(2)
カーテン越しの淡い日差しに包まれた部屋でリキは一人、傍らで眠るリョショウの寝顔を見つめていた。
屋敷へ運んでから二日経つが、リョショウは未だに眠り続けている。
しかし少しずつだが、顔色は良くなっているように思えた。
いつ目覚めるのか、本当に目覚めるのか、傷の具合はどうなのかと不安はあるが、目覚めた後のことを考えると息苦しくてたまらない。
特にしんとした部屋の中、リキの胸に様々な思いが浮かんでは消えていく。
ソシュクの見せた険しい表情を思い返し、リョショウを匿うことがどれほどの危険を伴うことであるかをざわめく胸に言い聞かせる。
ソシュクらは都督府へ出向いている。今頃、都督府ではカンエイが例のごとく傲慢な態度をとっているのだろう。
燻る嫌な気持ちを吐きだすように、リキは溜め息を吐いた。
リキは柔かな日差しを孕んだカーテンへと目を向けた。
その時、視界の端でリョショウの目元が僅かに動いたように映った。
慌てて視線を戻し、リョショウの顔を覗き込む。
恐る恐る呼びかけてみるが、返事はない。
息を殺して目元を凝視しているとぴくりと瞼が動き、唇の隙間から微かに息が漏れて出た。
「リョショウ殿? リョショウ殿?」
繰り返すリキの声に反応はなく、リョショウはぼんやりと空を捉えたまま動かない。僅かに開いた唇が、小刻みに震えている。
眠り続けていたのだから仕方ない。
リキは口を固く結び、リョショウを見つめていた。彼の回復を待つように。
やがて覚束ない目つきで部屋を見回していたリョショウが動きを止め、リキの姿を捉えた。
「北都……の?」
精一杯絞り出された声は、掠れて弱々しい。
リキは大きく頷いた。胸の奥から喜びと共に込み上げる気持ちに、気付かぬ振りをしながら。