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第十九章 小さな奇跡 (2)

 それから数日後、北都都督ら一団が帰ってきた。

 しかし、その中にリョショウの姿は無い。リキは落胆したが、きっと東都都督の息子として成すべき仕事があるのだろうと言い聞かせる。

 丞相の業務はすべて、東都都督が引き継ぐことになったという。重要な業務を任せることのできる適切な人材が居なかったことと、それらを任せたことによって丞相のように余計な力をつけることを避けるためにシュセイの判断によるものだ。蔡王と東都都督との二人で、権力の均衡を取ろうとする意図があった。


 東都での仕事が落ち着いたら、リョショウは必ず迎えに来てくれるはずだとリキは信じて疑わなかった。


「ハクラン、おかえりなさい」


 一回り大きく逞しくなったハクランに飛びついて、リキは再会を心から喜んだ。

 ハクランがカンエイ討伐に失敗して北都を脱出してから、既に半年以上が過ぎている。見違えるほど逞しくなったハクランの腕の中で、リキは溢れる涙を抑えることが出来なかった。


「リキ、会いたかった」


 と言って、ハクランはぎゅっとリキを抱き締める。

 目を閉じて固く唇を噛んだハクランの顔に滲むのは、リキに会えたことに対する喜びだけでない。ぐっと歯を食いしばるハクランは、何かを堪えるようにも見えた。

 やがて涙を拭いたリキは、彼の異変に気付いて不思議そうに見つめる。リキの視線を避けるように空を仰ぐハクランは、明らかに何かを隠そうとしている。


「ハクラン? どうしたの? 何かあったの?」


 リキが問い掛けると、ハクランは空を見上げた。心の準備をするように、ゆっくりと大きく息を吐く。


「ごめんな、一緒に連れて行けなくて、置き去りにしてごめん」

「いいよ、そんなこと全然気にしないで。ハクランが無事でいてくれただけで、私は十分なんだから。今まで本当に大変だったんでしょう」


 ハクランは申し訳なさげに目を閉じて、リキを残して北都を出奔したことを謝る。

 しかしリキには気付いていた。ハクランが本当に言いたいことは、そんなことではないと。嫌な予感を覚えながらも聞かなければならない、避けては通れないのだとリキは決意する。


「ハクラン、何も隠さないで話して。東都で何かあったの?」


 真っ直ぐに見上げるリキの目を見て、ハクランは覚悟を決めた。



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