第十七章 失脚への道 (11)
すぐに東都の将たちは解放された。
当初、彼らは牢に入れられていたが、シュセイらの捜索をいち早く察知した丞相の指示によって北都と西都の宿舎へと移されていた。シュセイや北都都督らは東都都督の屋敷に宿泊していたため、宿舎は利用しないと考えていたのが丞相の誤算だった。
丞相は東都の将たちを牢に入れた理由を、カンエイの造反と北伐に東都都督らが関与している恐れがあったためと弁明した。そして解放された東都の将たちと東都都督、蔡王に対しても自分自身の早まった行動であったと深く詫びた。
東都都督の夫人は、王族の部屋で丁重な扱いを受けていた。体調を崩していたというのは真実であったらしい。夫人は東都都督に伴われて、屋敷へ戻って行った。
しかし、リョショウだけは発見されなかった。
納得いかない思いと溢れ出す憤りに任せて、すぐにでも蔡王の元へ謁見に行くと言うハクランをシュセイらが懸命に宥める。
「今、陛下に問い質したとしても無駄でしょう、すべての責任を丞相に押し付けるはずです。責任を押し付けられた丞相を追い詰めたとしても、最悪の状況を生むだけです」
「しかし、こうしている間にもリョショウの身に危険が迫っているのかもしれないのですよ。どこかに別の場所に監禁されているかもしれないのに、まだ待てというのですか?」
ハクランは、血相を変えてシュセイに迫る。
リョショウの行方がわからなくなって、既に二晩過ぎている。どのような扱いを受けているのかと考えると、ハクランは焦りばかりが込み上げた。それはハクランだけではなく、皆が同じ思いだった。
「丞相殿はリョショウ殿が控室を抜け出したように演出しています。まだ何か企んでいるのかもしれません。もしかすると丞相はリョショウに責任を擦り付けて、自分の責任を逃れようとしているのかもしれません」
「そんなこと……」
「落ち着いてください、私の部下に捜索させます。一刻も早く発見できるように」
悔しげに唇を噛んで拳を震わせるハクランに、シュセイは穏やかな声で言い聞かせる。脳裏を過る最悪の結果を振り切るように、ハクランは空を仰いだ。
北都で待つリキのことを思いながら。